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シャトー・ラフォン・ロシェ

Chateau Lafon Rochet

シャトー・ラフォン・ロシェの歴史


17世紀からの歴史をもつ「ロシェ」という地名。これはこの地域一帯のぶどう畑の名前でした。1650年この地のオーナーとして相続していたアントワネット・ド・ギユモットがボルドー議会の重鎮エティエンヌ・ラフォン氏と結婚しました。その際にこのロシェの土地を婚姻の証としてラフォン氏に譲ることでこの地が「ラフォン・ロシェ」という名前になりました。

その後、フランス革命という激動の時代にも生き抜き、200年以上にも渡りこのラフォン家によってこのシャトーは守られてゆきます。その間には1855年のメドック格付け制定の際に第4級に選出されます。しかし1880年、当時のオーナー、ラフォン・ド・カマルサック婦人が亡くなると、このシャトーはラフォン家の手を離れることになるのです。

以降、様々なオーナーが現れるのですが、1900年代に入ると財政難になり次ぎのオーナーへ売却されるまで、そのクオリティは格付け第4級には決してふさわしくない不遇の時代を迎えたのでした。

テスロン氏による大規模改修


1959年、娘婿でコニャックにて財を築いていた、ギー・テスロン氏がこのシャトーのポテンシャルに魅了され次のオーナーとなりました。オーナーとなったときこのシャトーはかつての名声を物語るような風景は全くなく、ぶどう畑、セラーともに荒廃しきっていました。

当初は元々の施設を改修することで復権を図ったのですが、その工程があまりにも困難であると判明すると、なんと、全ての施設を取り壊してしまったのです。そうして一旦フラットな状態にして後に、10年もの歳月をかけ新しい醸造施設と18世紀の館をモデルにした現在のシャトーを建てたのでした。

館だけでなくぶどう畑でも大規模なぶどうの樹の植え替えを実施、畑のいたるところで人がすっぽり隠れてしまう2〜3mほどの深さを掘り返し、地下に何があるか地層を調べなおした上で、カベルネ・ソーヴィニヨンは粘土質、メルロは砂利質、と土壌の質に応じた品種を植えてゆきました。

このような努力があり1980年代からのワインは格付け4級レベルまで復活したのでした。そして現在はギー・テスロン氏の息子のミシェル・テスロン氏が当主、孫に当たるバジル・テスロン氏がシャトー全体を取りまとめています。

シャトー・ラフォン・ロシェの評価


世界的なワイン評論家ヒュー・ジョンソン氏は「コス・デストゥネルの隣にある第4級格付1998年からこのサン・テステフのワインは、一層、豊麗さを増しているが、それは設備投資、ブドウの木の選定とメルロの含有率アップがもたらした」と三ツ星評価。

また、フランス最高峰の専門誌ル・クラスマン誌は、シングルスター付で、シャトー・ラフォン・ロシェを「シャトー・ラフォン・ロシェの畑はシャトー・ラフィット・ロスチャイルドにとても近い場所に位置している。このシャトーは、1970年代初めに畑を再興したギー・テスロンによって設立された。 1982年からは、真っすぐ高貴、スパイシーな高レベルのワインを安定して造っており、ここ数年は飛躍する一方である。」と評価。

パーカー氏は四ツ星生産者に挙げ、「4級の格付にふさわしい、時にはそれ以上のワインをつくり出している。」と評価しています。

ラフィットとコス・デストゥルネルに挟まれた最高の立地と、ペトリュスと同じ種類の粘土質を持つ最高のテロワール


テスロン家がオーナーとなってからも試行錯誤はありましたが、近年では「収穫時期を少しだけ遅らせる」「新樽の比率を増やす」「畑においてもブレンドにおいてもメルロの比率を増やす」「出来の悪い発酵槽のものはセカンド・ワインにする」という方針のもとさらに品質が向上しています。

また、格付け第1級シャトー・ラフィット・ロートシルトと格付け第2級のシャトー・コス・デストゥルネルの畑に接している最高のロケーションに畑があるだけでなく、ラフォン・ロシェが所有する畑の粘土質土壌はただの粘土質ではなく、世界最高峰のメルローワインと称されるポムロールのシャトー・ペトリュス、このペトリュスの畑と同じ種類の粘土が多く含まれているというから、そのポテンシャルは元々1級品でした。

同オーナーのポンテ・カネをモデルに、ビオディナミに移行


また2016年にはほぼ100%有機栽培に移行しており、ビオディナミ栽培も段階的に行っています。農薬を使わないので、ぶどうに害虫がこないよう畑にフェロモンを撒くことでコントロールしており、さらに花粉を媒介するミツバチの数を数えて、畑が生物多様性の状態になっているかをモニタリングするなど、ボルドーにおいては同じテスロン家がオーナーのシャトー・ポンテ・カネ同様、この自然環境に配慮したぶどう栽培を行っています。

また、ボルドーでは水や電力などのエネルギー消費、農薬使用の削減などに集団で取り組む「環境管理システム」(SME)グループがあり、2020年までに、20%の温室効果ガスの排出量削減、20%のエネルギー使用量の節約、20%の再生可能エネルギーの創出、20%の水の節約を目標に掲げ、ぶどう畑のなかの生物多様性を維持するために、化学農薬の使用を控える努力を行っています。

現在はドローンを使って畑を空撮し、ぶどうの樹勢や生命力を調べて、「ぶどうが病気にかかりやすい」という場所を事前に把握し、適切に対処することで、農薬使用の抑制に繋げているというのです。もちろんラフォン・ロシェもこのグループのメンバーです。

このぶどう栽培責任者にはまだ30代前半のアナイス・マイエ女史が就いています。昨今、フランスでも女性栽培醸造家は増加傾向にありますが、特にボルドーにおいてはまだ少数派といえる存在です。