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シャトー・ド・ムルソー
Chateau de Meursault
2012年を境に大胆な発想で生まれ変わり、最近ではブルゴーニュのダークホースと評されるようになったのがムルソー村を代表するワイナリー「シャトー・ド・ムルソー」ですが、その歴史は古く14世紀まで遡ることができます。また敷地の広大さや建物の美しさに定評があり、日常的に観光客の足が絶えない人気スポットになっています。
ブルゴーニュで最も美しいシャトーの歴史は14世紀から
「シャトー・ド・ムルソー」の象徴ともいえるワインカーブ。その貯蔵庫が建造されたのが14世紀から16世紀の頃です。現在は樽で2000本以上、ボトルで65万本以上され、ヴィンテージものも数多く所有しています。
外観は、当時の建築様式を駆使して建てられたであろうと思える美しさを持ち、一般にも開放されています。そのため、その姿を一目見ようと訪れる人は海外からも多く、ひと頃はワインの味よりも建物の存在が価値を生んでいるのでは?という声もあったほどです。
ムシュロン伯爵家からの変遷はオリヴィエ・アレイで花開く
「シャトー・ド・ムルソー」は1973年までムシュロン伯爵家が所有してきました。しかし子孫が絶えたことにより、大手卸売業者であるパトリアシュ社の手に渡りました。その後40年近くを経て、2012年に大資産家であるアレイ家の直系オリヴィエ・アレイが新しい所有者となり現在に至ります。
「シャトー・ド・ムルソー」は、オリヴィエ・アレイの代になり改めて注目を浴びるようになっていますが、その背景には、あらゆる手を尽くして進められた大改革があったからこそといえるでしょう。
資産家の情熱が成し遂げたもの
オリヴィエ・アレイは、三つの思い切った投資を行いました。
一つ目は、ぶどうの栽培と醸造のディレクターにステファン・フォランを迎え入れたことです。ステファン・フォランはブルゴーニュワインの生産者として豊富な経験と知識を持っている人物です。彼はそのスキルを生かし畑で改植プログラムを行いました。
二つ目は、醸造樽の一新です。世界の一流メーカーであるタランソー、フランソワ・フレール、セガン・モローのみを使用することに決めたのです。さらに、3年以上経過した樽の使用をやめました。それは高品質なワインを追求するために必要な条件の一つだからです。超プレミアム・ワインでは常に新品の樽を使用するというシャトーもあるほどですから、オリヴィエ・アレイにとっては当然の判断だったのかもしれません。
三つ目は、光センサーによるぶどうの選果を開始したことです。この最新技術の導入はブルゴーニュでは先駆者といえます。早速2012年から使い始めたことにより、2013年ヴィンテージは多くの人々からの絶賛を浴びました。2012年から14年は雹の被害が多かった年だっただけに、新生「シャトー・ド・ムルソー」は強運に恵まれスタートだったのです。
赤ワインの品質向上にも傾注
「シャトー・ド・ムルソー」の大胆な改革では、赤ワインにも力を入れました。ピノ・ノワールのテクスチャーのために、ステンレスタンクとトップ・キュヴェ用のオーク樽を新しく整えたのです。また、ぶどうの収穫時は手摘みし、タンクに運ぶ際はコンベヤーを使用することにしました。そして清澄・濾過を行うのみという、優しく丁寧な作業を徹底することにより、繊細なテスクチャーの実現を目指しました。その甲斐があり、2012年以降は専門誌などのメディアからも賞賛されるようになったのです。
畑の素晴らしさがあってこそ
「シャトー・ド・ムルソー」の変貌ぶりは、ブルゴーニュワインにとってはまさに大ニュースといえますが、これが実現したのは、長い歴史のなかで手に入れてきた優れた畑を所有していたことも大きな理由です。
南北に広がる畑の面性は60haあり、代表する白ワイン(シャルドネ)のブランドであるムルソーは約10haの区画でつくられています。そのほか、ピュリニー・モンラッシェ、ヴォルネイ、ポマール、ボーヌ、サヴィニーなども網羅し、プルミエクリュとグランプリュが3分の1以上の23haもあります。また、ムルソー村を代表するプルミエクリュとして名高いシャルムは4.7haを持ち最大の所有者となっています。そして、これらの畑の優位性を安定的に生かすべく、白ワインは複数区画をブレンドしていますが、赤ワイン(ピノ・ノワール)のブランド「レ・グレーブ」は、ブレンドせずに瓶詰めしています。
シャトー・ド・ムルソー、醸造法のアウトライン
白は、空気圧で圧搾し、12時間寝かせます。その後区画ごとにアルコール発酵させます。その際、ぶどうの種類により、樽とステンレスタンクを使い分けます。
赤は、区画ごとに選果後全ての枝を取り除きます。その後は、数日間発酵前低温浸漬を行なってから、機械と人の手の両方を使い分けてタンク内を循環させ、20から30日ほど発酵させます。そして、圧搾→樽熟成の行程に進みます。
ワイン祭り「栄光の3日間」のフィナーレ会場として
「シャトー・ド・ムルソー」の敷地面積は約10haもあり、敷地内には池や川もあるほどのスケールです。
大勢を受け入れることができる貴重なシャトーだけに、毎年11月に開催されるブルゴーニュ最大のワイン祭り「栄光の3日間」では、最終日の会場として使われています。ワインの収穫を祝うため、昼から大晩餐会が行なわれ、農家やワイン関係者が集います。その華やかな催しでは、「シャトー・ド・ムルソー」ならではの魅力を存分に感じることができるでしょう。