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シャトー・グリエ

Chateau-Grillet


ローヌ北部地方の8つのアペラシオンの中で、生産者の名がそのままAOCとなっている、ただひとつのAOCがシャトーグリエです。1936年にフランス初のAOCのひとつとして認定されました。

ローヌ川沿い、コンドリューの区域内にあり、サンミッシェル・シュール・ローヌ村とヴェリン村に拡がる栽培面積は約4haで、ローヌ地方では唯一のモノポール(単一所有畑)となっています。

シャトー・グリエの歴史


シャトー・グリエとは「焼け焦げた城」という意味で、急斜面にある畑が非常に陽当たりが良く、強い陽射しが降り注ぐことから名づけられました。

この地でのブドウ栽培の歴史は古く、3世紀からとも言われています。17世紀に入って水上運送が盛んになり、ローヌ渓谷周辺で生産されているワインがパリで販売され始めると、シャトー・グリエの名は愛飲家の間で広く知られていきました。

1780年代後半には、ワイン愛好家として知られ、のちのアメリカ大統領となるトーマス・ジェファーソンがフランス滞在中にシャトー・グリエを訪れているほか、ナポレオンの最初の妻・ジョセフィーヌの邸宅にあったワインセラーの在庫帳にも「シャトー・グリエ296本」との記載が残っています。

1827年からネイレ・ガシェの一族が代々シャトーの所有権を引き継いできましたが、2011年からはシャトー・ラトゥールやドメーヌ・ドゥジェニーのオーナでもある、フランソワ・ピノ―の所有となりました。

現在シャトー・グリエは、ラトゥールとドゥジェニーの支配人でもあるフレデリック・アンジュレが統括管理をしています。

ヴィオニエ100%の白ワイン


シャトー・グリエは、モンラッシェ、シャトー・デイケム、シャトー・シャロン、サヴィニエール・クーレ・ド・セランと並ぶフランス5大白ワインのひとつで、栽培品種はヴィオニエのみです。

シャトーでは、テロワールの純粋さを高め、その特徴を最大限に表現することを目指して、2011年にドメーヌを購入してから畑全体のビオディナミ農法への転換を進めています。

生態系のバランスを高めることを目的にしているこの農法では、標高や方角、水場からの距離などがブドウの成長に与える影響を考慮しながら、土壌やブドウの樹に対する細かな管理が必要になりますが、非常に急な斜面なため大きな機械を入れることができず、耕作をはじめ手入れや収穫はすべて手作業により行われています。

区画ごとに収穫・搾汁したブドウは、2012年に導入された温度調節機能付きの小型ステンレスタンクで、セレクションごとに醸造作業が行われていて、この手間暇をかけた生産工程と栽培面積の小ささから、年間生産量は1万本ほどと少ないため稀少価値も高く、ソムリエでもなかなか口にできないという高価なワインとして知られています。

ローマ時代からの段畑


シャトー・グリエの畑は標高150m〜250mの斜面に南向きに拡がり、テラス状に拓かれた段畑はシャイエと呼ばれます。

ローマ時代から何世紀もの間、手入れされ保たれてきた石積みの壁で支えられ、円形劇場のような形になった76ものシャイエは、シャトーグリエを象徴する景観となっていて、1976年には文化自然遺跡としてフランスの国家遺産に登録されました。

シャトー・グリエの土壌は、バイオタイトを含む花崗岩・石英などの岩盤からなる古生層が風化して形成された粘土を含む砂質土壌と、主にくぼ地にみられる黄土が堆積してできた土壌、ふたつの地質層で構成されています。

水はけが良く砕けやすい土質なので、根は深いところまで延びて水分やミネラルを十分に取り入れ、健康なブドウの樹の成長を支えています。

シャトー・グリエのワイン


シャトー・グリエ

シャトーのワイン作りでは、農学エンジニアであり醸造学者のぺネロプ・ゴドフロワが総監督をつとめ、醸造学者・アレッサンドロ・ノリが指揮をとってスタッフとともに作業に当たっています。

シャトー・グリエのアッサンブラージュに使用されるワインの基準は、2011年よりこの技術チームによって引き上げられ、区画ごとの分析や試飲により厳しく選別された結果、シャトーグリエは以前にもまして秀逸なバランスのワインとなりました。

上質な酸やミネラルとともに、長期熟成にたえる厚みや力強さをもち、バラやスミレなどを思わせる花の香り、パイナップルや洋ナシ、アプリコットの甘い果実の香りに、白トリュフやナッツ、バニラ、はちみつなど何層にも重なる様々なアロマを備えています。

長く続く余韻と完成度の高さはまさに「極意を極めた愛好家向けのワイン」(シャトー・グリエのHPより)といえるでしょう。

ポンサン

2011年に誕生したポンサンは「シャトー・グリエ」の基準には届かなかったものの、同じ畑で育った上質なヴィオニエをベースに作られた、みずみずしく果実味溢れるワインです。

ポンサンとは、シャトーの土地台帳に記載されている集落の名称に由来する名前で、このワインのAOCはコート・デュ・ローヌとなっています。