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アヴィニョネージ

Avignonesi

モンテプルチャーノの名門貴族の名を冠したワイナリー


ワイナリー「アヴィニョネージ」が所有するブドウ畑は、非常に古い歴史を持つといわれています。しかし、古文書の調査からは正確な年数などは知ることができません。とはいえ、アヴィニョネージのブドウ畑がイタリアで最も古い歴史があることだけは間違いないようです。

というのも、16世紀初頭、当時の高名な建築家であったヤコポ・バロッツィ・ダ・ヴィニョーラがモンテプルチャーノにアヴィニョネージ宮殿を設計したときには、すでにブドウ畑の存在が確認されているためです。

アヴィニョネージがトスカーナのワイナリーとして世界的に高名となるのは、1974年に醸造業を開業したエットーレとアルベルトのファルヴォ兄弟の功績によります。ファルヴォ兄弟は、アヴィニョネージのクリュ「ラ・セルヴァ」を蘇らせたことでも有名。 兄弟の、ワインの品質への目標は非常に明確でした。

品質の良いワインとは、醸造より以前のブドウの質にかかっている。この信念に忠実に、ファルヴォ兄弟は質の良いブドウを産する土地に思い切った投資をしたといいます。

栽培している品種は、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ネロなどのフランスのブドウや、モンテプルチャーノ原産のものなど。

現在、アヴィニョネージのオーナーとなっているのはベルギー人のヴィルジニー・サヴェリス。ベルギーのヘント出身のヴィルジニーは、1983年にパリ大学法律学科を卒業し、2007年にトスカーナに移住。アヴィニョネージのワイナリーに投資を始めます。2009年、アヴィニョネージのさらなる飛躍を目指してオーナーに就任しました。

ヴィルジニーは、有機栽培とホメオパシーの信奉者でした。そのため、アヴィニョネージが有機栽培を選択したことは、ごく自然の成り行きであったようです。

ヴィルジニーとワイナリーの目標は、モンテプルチャーノ特有のテロワールをアイデンティティとしてワインに反映するだけではなく、顧客にとっても地球環境にも健康的であり、ワイナリーの文化が健全に次世代に引き継がれていることにあるからです。

ワイナリーの技術力


現在、ヴィルジニーの手足となって働く醸造専門家は二人。

一人は、世界でも有数の最新醸造技術を学べる学府として名高いオーストラリアのアデレード大学を卒業したアシュレー・シーモア。2010年からワインの醸造に携わる彼女は、ヨーロッパの伝統とオーストラリアの新しい技術の融合でアヴィニョネージに新風を吹き込んでいます。

もう一人は、天性のテロワールへの感受性を持つマッテーオ・ジュスティニアーニ。フィレンツェ出身の彼は、フィレンツェ大学で醸造学を学んだ後、ボルドー大学で博士課程を修めました。テロワールに関しては万人が認める感性を持つ彼は、欧州のさまざまなワイナリーから引っ張りだこなのだとか。

また、アヴィニョネージの農園の有機栽培を推進するために、3人のイタリア人農学者もワイナリーで仕事をしています。彼らの特徴は、イタリア国内にとどまらず、ニュージーランドやフランスなどで経験を積んできたキャリアを持つことで、ヴィルジニーのオープンな経営方針がこの辺りからもうかがえます。 国際的な競争力を持つ若い力とともに、アヴィニョネージは常に評価を高めているのです。

有機農業への執念


2011年から、アヴィニョネージが所有するコルトーナとモンテプルチャーノの200ヘクタールあまりのすべての農園において実施されている有機栽培。オーナー、ヴィルジニーの強い執念によって実現したプロジェクトです。ヴィルジニーは、次のように語ります。

およそ農作物を生産する人にとって、自分が生産した作物がどれだけ健全であるかはもっとも重要な課題だと言えます。有機栽培やバイオダイナミック農法は、まさにこの課題に答えを与えてくれるのです。

ブドウの木に肥料や殺虫剤を与える人間が、自分を防御するためにマスクや防御服を着て作業をしている。それでは、ブドウやワインは?と素朴な疑念が私の中に浮かんだのがはじまりでした。

アヴィニョネージのブドウ畑では、ブドウの並木の合間にルッコラ、カラスノエンドウ、インゲンマメ、カラシ、キャベツ、香草などが植えられています。これらが、ブドウを育てる緑肥となるのです。

バイオダイナミック農法を実践することで、従来のブドウ栽培よりも手作業が大幅に増えたことはまちがいありません。しかし、ワイナリーのスタッフはワインの味にその報いがすべて反映されていることに幸福を感じています。

醸造法もアヴィニョネージ独自の信念を貫く


ワイナリーで使用する酵母も、アヴィニョネージが考案した独自のものを使用しています。外部からの介入は極力抑えて、ブドウと自然の力を最大限に引き出すことが目的です。

また、それぞれのワインのブレンドは各品種の熟成後に行われるのもアヴィニョネージの特徴。

2013年からは、これまで使用していたスロヴァニア産の樽だけではなく、クリュ「ロードラ」のブドウには、フランス製のバリックを実験的に使用し始めました。

ただし、世界的な評価を得ているヴィンサントについては従来と変わらず、「カラテッリ」と呼ばれる50リットルのオーク樽の熟成を守っています。

アヴィニョネージのワイン


50&50

1988年から生産が始まった「50&50(チンクアンタ・エ・チンクアンタ)」。 2013年に25周年を迎えています。

このワインの興味深いところは、モンテプルチャーノの「アヴィニョネージ」とキャンティ・クラッシコの「カンパネッレ」というトスカーナを代表するふたつのワイナリーから、選別された最良のブドウを持ち寄って生産されたということです。

キャンティ・クラッシコの「サンジョヴェーゼ」とモンテプルチャーノの「メルロー」が、それぞれ50%ずつ使用されています。二種のブドウは別々に24ヶ月熟成され、後にブレンドされます。

「カンパネッレ」の運営者ラファエレ・ロッセッティと、「アヴィニョネージ」の功労者ファルヴォ兄弟によって生み出された「50&50」。ふたつのワイナリーの友情を表現した香り高きワインです。

栓を抜くと、サクランボ、クロスグリなどの強力な芳香に続き、モカ、タール、ダークチョコレート、丁字の香りが絡み合います。ビロードのような厚みのある成熟した味わいと力強さが特徴。 牛肉の料理との相性が非常によいワインです。

ヴィンサント・ディ・モンテプルチャーノ オッキオ・ディ・ペルニチェ

「デジデーリオ」「グリフィ」「50&50」と並んで、アヴィニョネージの看板となっているのがヴィンサント。アヴィニョネージが生産するワインの中でも神話の域に達しているといわれています。

サンジョヴェーゼを6ヶ月乾燥した後、カラテッリと呼ばれる小型の樽で10年の長きにわたって寝かされます。ゆっくりと自然の流れに任せた熟成により、アヴィニョネージのヴィンサントは「芸術作品」と呼ばれているのです。

黄金に輝く琥珀色が特徴。乾燥イチジクやスパイス、ベリー類、プラム、カラメル、パンペパート(コショウと乾燥果物が入ったお菓子)、甘草、ナツメヤシなど、多彩な芳香が魅力的です。力強い味わいと多彩な芳香を舌でも実感できます。

合せる料理は、干しぶどうとの組合せが有名ですが、ヴィンサントだけでも単独で楽しめます。瞑想に浸りたい時間や、特別な記念日に栓を開けるのが相応しいワインです。