クロ・デュ・ヴァル

CLOS DU VAL

パリスの審判のリターンマッチ、1986年の試飲で第1位に

1976年、アカデミー・デュ・ヴァンが主催したブラインド・テイスティング企画。当時まで国際的な評価の低かったカリフォルニアワインと、5大シャトーを筆頭とした錚々たるフランス産のワインが対決しました。その結果、赤・白共にカリフォルニアワインが1位となった事で、カリフォルニアワインの評価は著しく向上しました。

その後、同じワインのラインナップで、10年後となる1986年にリターンマッチが行われました（この回は赤のみ）。結果はフランスサイドにとっては残念ながら、またも1位はカリフォルニアワインでした。そして、その時1位に輝いたのが、クロ・デュ・ヴァルの1972年だったのです。

クロ・デュ・ヴァルの誕生

ベルナール・ポーテ氏

クロ・デュ・ヴァルはフランスのボルドー地方にゆかりのあるアメリカ人のジョン・ゴレとボルドー出身のワイン醸造家であるベルナール・ポーテによって1972年に創業されました。

ベルナール・ポーテはフランスのコニャック地方出身で6代続くワインメーカーの一家育ちのワインサラブレッドです。父親はシャトー・ラフィットにてテクニカル・ディレクターを務めていたこともあるようです。ポーテは幼いころからワインの英才教育を受け、各地のワイナリーを訪ねワインに対する熱い情熱を築き上げていきます。

ポーテは最上級のワインは最高の葡萄から造られるという信念を持っていました。この信念が後にクロ・デュ・ヴァルという傑作を世に出すこととなります。

ジョン・ゴレとベルナール・ポーテ、世界一のワインを自らの手で醸造するという共通の目標を掲げた2人は、醸造場所にも拘りを持ち最適の場所を世界中から探し出すことになります。

最終的に行きついたところはスタッグス・リープという当時は無名のカリフォルニアの畑でした。朝晩の寒暖差が大きく、そこは葡萄栽培に最適だと2人は判断しました。クロ・デュ・ヴァルという名前はフランス語で「谷の葡萄畑」を意味しています。今でこそ世界的に有名なナパ・ヴァレーですが、当時は無名だったのですね。

現在のクロ・デュ・ヴァル

ジョン・ゴレとベルナール・ポーテのワインに対する熱い情熱のおかげで、クロ・デュ・ヴァルの評判は広まり先に述べたパリ・テイスティング事件によって、世界的に有名になりました。また、ベルナール・ポーテのワインへの情熱と技術はジョン以外の若い生産者にも引き継がれカリフォルニア、ナパ・ヴァレーのワイン品質の向上と維持に繋がっています。現在のクロ・デュ・ヴァルはナパ・ヴァレーワインならではの果実味、そしてフランスの伝統手法の融合を実践しています。ベルナール・ポーテがいたからこそ、現在ナパ・ナパヴァレーがここまで有名になったと言っても過言ではありません。

2009年の終わりに、ベルナール・ポーテはクロ・デュ・ヴァルを退きました。現在はワインメーカーにテッド・ヘンリー氏を迎え、さらなる進化を求めて、クロ・デュ・ヴァルは動き出しています。2014年から醸造に最新テクノロジーを導入、生産量を年間90,000ケースから35,000ケースへと劇的に減らし、スタッグスリープ地区、ヨントヴィル、及びカーネロスのエステートブドウ園（自社畑）からのみ少量の良質なワインを造る事に専念しました。発酵は主にフレンチークで、小樽のみを使用した非常に丁寧な醸造にこだわり、さらに磨きをかけて新たな時代へと変貌を遂げようとしています。

クロ・デュ・ヴァルの生産地、スタッグス・リープ

では、なぜクロ・デュ・ヴァルの創始者ジョン・ゴレとベルナール・ポーテはカリフォルニア・ナパヴァレー・スタッグス・リープを選んだのでしょうか。ナパ・ヴァレーはカリフォルニアのサンフランシスコの北に位置する渓谷のことを指します。ナパヴァレーの「ナパ」とは先住民族のワポ族インディアンによると「豊潤の地」の意味になるのだとか。1940年代から開拓が始まり、いまや世界的に有名なワイナリーが多々存在するワインエリアになっています。

世界中の葡萄栽培畑を検討した彼らがこの地を選んだポイントとはなんだったのでしょう。ナパ・ヴァレーに流れるナパ川、そして海の影響もあり、土地は冷涼な夜間と温暖な日中の気候となりその寒暖の差が葡萄栽培には最適といわれています。その中でもスタッグス・リープでは特に素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが育つと言われています。ボルドーの技術を知り尽くしたベルナールにとってボルドーを代表する葡萄カベルネ・ソーヴィニヨン栽培は夢のようだったに違いありません。彼の信念である良い葡萄があれば良いワインが造れるということを証明する第一歩がスタッグス・リープから始まりました。現在、クロ・デュ・ヴァルはスタッグス・リープの他にシャルドネやピノ・ノワールで有名なカーネロス地区の畑も所有しております。