バーデン

Baden

バーデンは、ドイツ最南端の有名観光地にもなっている、ドイツ最長のワイン街道です。その長さは全長500kmにもおよび、スイスの国境近くまで続いており、ワイン産地としてはドイツ第三規模の生産地域です。

この辺り一帯には、温泉・ゴルフ場・ハイキングコースもあり、その温泉の効果・効能は、古代ローマ人も認めたほどの歴史があります。またバーデンはドイツの有名グルメスポットとしても知られており、ドイツの代表的グルメの1つでもある「アスパラガス」が名物のバーデンアスパラガス街道があることでも知られています。

バーデンの土地柄と気候

膨大な面積を誇るバーデンは、ヴォージュ山脈、ジュラ山脈に挟まれ、北部はタウバー川、南部にボーデン湖を抱き、全部で9つの「ベライヒ」に分かれています。その規模は、南西部にわたり400~500kmあり、この辺り一帯に沿って流れているライン川は、西にフランス、南にスイスの国境まで続いています。

これほど大規模の広大な面積に至るため、生産地の端から端の地域の気候はかなりの差があります。その気候差ゆえに、あらゆるタイプのワインが造られています。バーデンの平均的な気候は、年間日照時間1700時間以上、年間平均気温11℃以上あり、ドイツ国内では最も温暖な地域です。

ヴォージュ山脈と黒い森に挟まれたエリアは、冷たい風や強い雨から守られ、別名「ブルゴーニュの門」と呼ばれており、地中海性の暖かい空気がライン川に沿って平地に流れ込みます。

バーデン土壌とぶどう畑の特徴

バーデンの土壌は、この絶大な規模面接の大きさから、タウバー川流域では石灰質で、陶土、マールの堆積、火山岩の破砕、モレーン（堆石）の砕石など多岐にわたっています。

その溶岩は鉄分などのミネラルを豊富に含み、温暖な気候の影響もあり、ぶどうを芳醇な味わいに育てています。もちろん収穫できるぶどうの品種も様々で、しっかりとした強度の高いブルグンダー種、酸の量が少なめのオルテナウのリースリングや、シュペートブルグンダーとグラウブルグンダー、マイルドな酸味のマルクグレーフラーラントのグートエーデルなどが代表的です。また、この地域では、バーディッシェ・ロートゴルトというロゼワイン向きの名品種も栽培されています。

バーデンの代表的ベライヒの一つ、「カイザーシュトゥール」

バーデンの代表的なベライヒの1つである、カイザーシュトゥールでは、中でもシュペートブルグンダーのぶどう品種を使った赤ワインが有名です。木樽のニュアンスがワインを惹きたたせ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、イチゴ、チェリー、バニラなどのアロマで、酸味とタンニンがまろやかなバランスの良い赤ワインとなっています。

一方の白ワインは、火山性土壌の影響でミネラル分が豊富に含まれたアロマで、酸味が少なめなのが特徴的です。

またこのカイザーシュトゥールは、バーデン地方の地酒でもあるロゼワインを造っており、ロゼ用に、グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーをブレンドして造られる「バーディッシュ・ロートゴールド」と呼ばれるワインが有名です。

ちなみにカイザーシュトゥールは、ドイツ語で「皇帝の椅子」という意味合いです。まさにその名のごとくドイツワインの「皇帝」とも言えるべきベライヒなのでしょう。

バーデン独自のロゼワイン製法

一般的にロゼワインの造り方は、黒ぶどうを使って白ワインを造るように圧搾する方法か、または黒ぶどうを使って赤ワインと同じように醸造し、着色した時点で皮や種子を取り除く方式のどちらかになりますが、ここバーデンでは、「ロートリング」といって、発酵前の赤ワインと白ワインをブレンドする独自の手法で造られています。

バーデンの評価と代表的な生産者

バーデン地方のワイナリーは、バーデン独自の「協同組合」が1881年に発足しており、全体の75％に相当するワイン生産はこの協同組合に属する生産者によりリリースされています。家族経営によるぶどう栽培農家のほとんどがこのバーデン生産者協同組合に所属しています。

この地方の生産者として代表格に挙げられるのが、「ベルンハルト・フーバー」。フーバーは、前述の協同組合に現在は属しておらず、1987年に脱退し、組合の枠内に縛られない独自性をもたせたシュペートブルグンダー種を使ったワインの作り手で知られています。昨今は広く知られる醸造法ですが、新樽の小樽にて長期の熟成をさせる手法をどこよりも早く導入した生産者です。ドイツで最も権威のあるワイン評価誌「ゴー・ミヨ」にて、最高評価を得て、2008年には同誌の「最優秀醸造家」にも輝きました。

また、カイザーシュトゥールでは、「ベルヒャー醸造所」も忘れてはなりません。ベルヒャーは、同じくゴーミヨにおいて、バーデンのベライヒ上最高評価である4房として評価されています。