ドメーヌ・ジョセフ・ロティ

Joseph Roty

ドメーヌ・ジョセフ・ロティは、ブルゴーニュのコート・ド・ニュイ地区に1817年創業した300年の歴史を誇るワイナリーです。マルサネやジュブレ・シャンベルタンに、最も古いと言われる畑を所有しています。

2008年に23代目の当主ジョセフ・ロティが亡くなり、現在は父親から24代目を受け継いだフィリップが、弟ピエール・ジャンとともに運営に当たっています。

偉大なる先代、ジョセフ・ロティ氏

先代のジョセフ・ロティは、80年代から90年代にかけての現代ワイン醸造の前駆者として才能を発揮した偉大な人物です。特にピノ・ノワールは、クロ・ドュ・フォントニ―、シャルム・シャンベルタンなどの素晴らしいジブレイのテロワールを見事に表現した奇跡的とも言える最高のワインを造り出し、ワインジャーナリストや批評家をはじめとする関係者から絶賛されました。

その一方で、極端なジャーナリスト嫌いとして知られていたジョセフ・ロティ。レミングトン・ノーマンが「The Great Domaines of Burgundy」というブルゴーニュの偉大なドメーヌについて書いた記事の中で、ジョセフ・ロティが彼の所有している畑の面積などについてのインタヴィーをすべて拒否した、というエピソードを記しています。彼曰く、誰にも私の妻の年齢や、私の畑の面積を教えたりはしたくない。ワインの輸入業者は、私が億万長者だと思うだろうし、ワインがない理由は何か、と考えたりするに違いないから。」

そのためジョセフ・ロティのドメーヌについて、畑の面積、年間生産本数など、ほとんど知られていませんでした。彼のワインについて知りたければ、そのワインを飲むのが一番、というわけです。代が変わった今でも、自社のホームページもなく、多くを語ろうとはしないという特徴が受け継がれています。

残念ながら体調の悪化により亡くなったジョセフが、彼の独特なワイン造りをフィリップ、ピエール・ジャンの2人の子供たちに、きちんと受け継がれているか疑問視されていましたが、基本的な方法はそのままに高い品質のワインを造り続けています。

ジョセフ・ロティのブドウ畑

頑なに情報の公開を拒んだジョセフ・ロティですが、現在は少し秘密が明かされています。畑の面積は9.5ヘクタールで、そのうち、赤ワイン用のブドウが8.35ヘクタール、白ワイン用のブドウが1.15ヘクタール植えられています。赤ワイン用のブドウの品種はすべてピノ・ロワール、白ワイン用は、ピノ・ブランとクレヴネールです。

フィリップ・ロティの畑は、グラン・クリュのシャルム・シャンベルタン、マジ・シャンベルタン、ジュブレイ・シャンベルタン・トレ・ヴィエイユ・ヴィグネ、プルミエ・クリュのジュブレイ・シャンベルタン・レ・フォントニーなどの素晴らしい畑を所有しています。

その他、シャルム・シャンベルタンの隣に位置するジュブレイ・シャンベルタン・シャン・シェニーや、ジュブレ・シャンベルタン・ラ・ブリュネル、マルサネ・クロ・ド・ジュ―、法律が変わるまでジュブレ・シャンベルタンであったブルゴーニュ・ルージュなど、最高のワインを生み出すコート・ド・ニュイの一流の畑が入り組んだ場所にも、多数所有しています。

ブドウは、なるべく自然な状態で極力人工的な肥料などを使用しない自然農法であるリュット・レゾネ農法で栽培しています。畑では、25年から100年以上という樹齢年齢のブドウの樹が栽培されています。特に、パーカー・ポイントで高得点を獲得しているグラン・クリュのシャルム・シャンベルタン・トレ・ヴィエイユ・ヴィグネの畑には、1881年ごろに植えられたというピノ・ノワールの樹があります。300年の歴史を誇るジョセフ・ロティならではです。

これらの樹齢の長い樹は、地中深くまで根を張り巡らせているので、グラン・クリュである素晴らしい畑のテロワールをしっかりと吸収し、いろいろな要素を複雑に含んだ最良のブドウを実らせることができます。そして、この唯一無比のブドウから造り出されるワインが独特のアロマや味わいを含んでいるのは、当然のことなのです。

ジョセフ・ロティのワイン醸造

ワインの醸造に関しては、基本的に先代ジョセフの方法を踏襲する古典的な方法で、年間約50,000本製造しています。ブドウの栽培と同様、無清澄、無ろ過というなるべく自然に近い方法で、ワインを醸造します。

最近では、有名な一流ドメーヌ、ロマネ・コンティと同じブドウを選別する機械や、圧搾する機械を導入することによって、さらにこのドメーヌが持つ独特のテロワールをより表現できるようになったと評判です。

ワインの熟成に用いる樽には、フランス最古の国有林であるアリエ県のトロンセの森のオークの木を100％使用しています。ピノ・ノワールのブドウは、ボルドーのカベルネソ―ヴィニオンなどに比べてタンニンが少ないので、樽を形成する際に強くトーストしたものを用いることによって、約1年間の熟成期間にスパイスのような香りをもたらしています。

ジョセフ・ワインが生み出す革新的なワインは、現在でも、ロバート・パーカー氏やスティーブン・タンザー氏などの有名なワイン批評家たちに高い評価を受けています。今後のさらなる兄弟の活躍が期待されるジョセフ・ロティです。