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南アフリカのスパークリングワイン

アフリカ大陸の銘醸地として知られる南アフリカ共和国。ブドウが植えられたのは今から350年以上前にさかのぼり、実はワイン生産における古い歴史のある国です。ブドウの栽培に適した気候に恵まれ、複雑なテロワールを備えた南アフリカのポテンシャルは高く、いつしかヨーロッパ顔負けの高い品質を備えたワインが造られるようになりました。

そんな中でも、ひときわ高い評価を得ているジャンルがスパークリングワイン。南アフリカを代表するシュナン・ブランを使ったものが多いですが、こちらも名産のピノタージュを使った赤いスパークリングや、良質で知られるソーヴィニヨン・ブランを使った爽快なタイプなど、その種類もいろいろ造られています。

1000円前後で入手できる安価な価格帯もありますが、この国のスパークリングワインを飲む上で、ぜひとも抑えておきたいのがもう少しハイクラスな銘柄。なにしろ南アフリカ産で、本格的な造りのスパークリングワインは非常にハイクオリティ。中にはシャンパーニュを追随するとまで言われるような、愛好家を唸らせる銘柄も存在しているのです。

キャップ・クラシックと呼ばれる瓶内二次発酵製法


本場シャンパーニュで用いられている、スパークリングワインの製法・瓶内二次発酵方式。やはりレベルの高いスパークリングワインを思い出してみれば、シャンパーニュ以外の地域でもだいたいこの製法で造られている事が多いです。

世界中に広まっている瓶内二次発酵製法ですが、南アフリカではこの造り方をキャップ・クラシックと呼んでおり、アルファベット表記した「Method Cap Classique」の、頭文字をとってMCCと略称されることも。またキャップ・クラシックのための生産者団体が1992年に発足しており、昔から高品質なスパークリングワインの生産に意欲的な姿勢が見られていました。

キャップ・クラシックで使用されるブドウで、中心となるのがピノ・ノワールとシャルドネ。さらに最低瓶内熟成期間は9か月以上と、キャップ・クラシックの規定はまさしくシャンパーニュを意識した内容となっています。南アフリカのワイン用ブドウは、基本的に温暖な地中海性気候のエリアで生産されていますが、南極からの海流の影響でかなり冷涼な地域もあります。こうしたエリアでは寒冷なシャンパーニュ同様に、良質なスパークリングワインを造る上で欠かせない、豊富な酸をブドウに得る事ができるのです。

ところで日本で入手できる南アフリカ産スパークリングワインの種類は、シャンパーニュやカヴァと比べてしまえば非常に少ないのが現状。実力は確かな南アフリカだけに、これからもっと多くの銘柄が輸入されるのを期待したいところです。お値段もそこそこ張ってくるので、世界の上質な銘柄がライバルとなりますが、そういった高品質スパークリングにも劣らないレベルのはずなので、機会があればぜひ飲み比べて頂きたいです。

キャップ・クラシックの代表的な銘柄


日本の市場にも出回っているキャップ・クラシックの銘柄で、根強い人気があるのがシモンシッヒ・エステート。中でも代表的な「カーヴス・ヴォンケル」は、ピノ・ノワールにシャルドネ、さらにピノ・ムニエまで使った、シャンパーニュを強く意識した造りとなっています。

実はこのカーヴス・ヴォンケルこそ、南アフリカにおいて瓶内二次発酵方式で造られた最初の1本なのだそうで、元祖キャップ・クラシックと呼ぶべきワインです。オランダで開催された大規模なワインコンクールでは、世界中の銘柄の中からベスト・スパークリングワイン賞を受賞。さらには30人ほどのプロの審査員のうち、ほとんどが本物のシャンパーニュと間違えたという逸話もあります。

スパークリングワイン以外でも評価の高いシモンシッヒですが、ワイナリーが位置するのはケープタウンの近郊・ステレンボッシュ。ワイン造りに歴史と伝統ある場所というだけでなく、山がちな地形が多様なテロワールを産み出し、これだけ良質なスパークリングワインができるのも十分に納得の、南アフリカ屈指の銘醸地として知られる地域なのです。

一方で近年大きな話題をさらったのが、グラハム・ベック・ワインズの造るスタンダード・キュヴェ。アメリカの第44代大統領となったバラク・オバマ氏が、就任演説前の勝利の美酒として開けたのは、数多ある高級シャンパーニュではなく、このグラハム・ベック・ブリュットだったのです。

実はオバマ氏はそれより前に、大統領選への立候補を決めた夜にレストランでこのワインを飲んでいました。そしてその味わいを大変に気に入り、自身が当選した暁に開けようと決めていたのだそうです。さらには南アフリカの初代大統領であるネルソン・マンデラ氏もまた、グラハム・ベックを就任の祝杯としてセレクトしていました。偉大な2人の大統領が、勝利の美酒として飲んだ1本という触れ込みはインパクトがあり、日本でも大きな人気を獲得するに至りました。

シモンシッヒのカーヴス・ヴォンケル、グラハム・ベックのスタンダード・キュヴェどちらも、市場での相場は2000円台という価格で入手可能。安価なシャンパーニュとほぼ同じ価格帯なら、一度はこちらを選んでみても損はないと思います。