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マストロベラルディーノ

Mastroberardino

2世紀以上にわたって南イタリア・カンパーニャ州のワインを生産してきた一族


マストロベラルディーノ家がワイン醸造業者として歴史に登場するのは、なんとナポリがまだブルボン家に支配されていた1700年代半ばのことです。カンパーニャ州アヴェッリーノのアトリパルダにワイナリーを構えたマストロベラルディーノ家は、その後10世代にわたってこの地でワインを製造し続けています。カンパーニャ州随一のワイナリーとして、その名を世界で知られています。

古代ギリシア・ローマ時代から続くブドウの品種を守り続ける


古代から南イタリアは「マーニャ・グレチア」と呼ばれるギリシア人の植民地でした。イタリア半島の穀倉地帯として知られていた南イタリアは、その肥沃な土壌でも有名です。

古代ギリシア人たちもワインを愛飲していたことはよく知られています。彼らが栽培していたブドウの子孫たちを守るために、カンパーニャ州土着のワイナリー「マストロベラルディーノ」は奮闘してきました。

その起源が紀元前7世紀にまで遡るといわれる「アリアニコ」、古代ギリシア人によってイタリア半島にもたらされ神聖ローマ皇帝フリードリヒ二世にも愛されたといわれる「フィアーノ」、古代ローマ人にことのほか愛された白いブドウ「グレコ」、フレグレイ平野で栽培が盛んであった「ファランギーナ」、古代ローマ時代に博物学者プリニウスも言及している「ピエーディロッソ」、ヴェスビオ火山南麓で栽培が盛んであった「コーダ・ディ・ヴォルペ」などなど。これらはすべて、古代から連綿と続くブドウの品種なのです。

こうした由緒あるブドウの最良面を保持し未来につなげていくために、「マストロベラルディーノ」では、実験や研究を怠りませんでした。

騎士団の一員であった祖先が普及させたカンパーニャのワイン


1878年、ワイナリー「マストロベラルディーノ」は正式にアヴェッリーノの商工会議所にその名を登録しています。当時の当主アンジェロ・マストロベラルディーノは「イタリア王国王冠騎士団」の騎士でありながら商才に長け、まずは欧州各国に「マストロベラルディーノ」のワインの輸出を開始します。アンジェロ・マストロベラルディーノの息子ミケーレはパイオニア精神の持ち主で、さらに自社のワインの北米、中南米への輸出に成功するのです。ちなみに、アンジェロ・マストロベラルディーノは現在の社長ピエロの曾祖父にあたります。

1900年代の半ば、ワイナリーは危機的状況に陥りました。19世紀にヨーロッパに持ち込まれたブドウネアブラムシの大きな被害を受け、さらに戦後の困難な時代に突入したからです。当時の当主は、ピエロ・マストロベラルディーノの父アントニオでした。祖父と同じく「メリト・デル・ラヴォーロ騎士団」の一員であったアントニオは、カンパーニャ州のワイナリーがより安価で栽培が簡単なブドウへと方向転換したのを尻目に、孤軍奮闘を続け古代からのブドウの品種を死守したのです。アントニオがこの時期に研究を重ねた成果が、現在のワイナリーを支えていることはいうまでもありません。

1990年代以降、カンパーニャ州において古代の遺産であるブドウの品種をすべて保持しているのは、ワイナリー「マストロベラルディーノ」のみです。

ポンペイの遺跡によみがえる古代ローマのブドウ園


1996年、ポンペイ考古学監督局はポンペイの地に古代のブドウ園を復活させるプロジェクトを発動、その全権を「マストロベラルディーノ」にゆだねました。アントニオ・マストロベラルディーノは、古代ローマ時代のブドウの栽培技術やワイン醸造法を丹念に調査し、実験的にこれらを復興させることからプロジェクトに着手したのです。

ヴェスビオ火山周辺地域は、古代ローマ人たちがとくにワインを愛好していたことで知られています。アントニオは、考古学、植物学の分野から当時のブドウを研究します。そして、当時のポンペイでいわゆる街の中心や富裕層の屋敷内、円形劇場周辺にもブドウをはじめとするさまざまな木々が植えられていたことが判明しました。これらの調査研究をもとに、「ヴィッラ・デイ・ミステーリ」に古代のブドウ園がよみがえったのです。

毎年、250万人以上の観光客が訪れるポンペイの遺跡から収穫されたブドウを原料にしたワイン「ヴィッラ・デイ・ミステーリ」は、ポンペイから発見された美しいフレスコ画をラベルにして「マストロベラルディーノ」から販売されています。

マストロベラルディーノの主なワイン


フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ

イタリアで生産される白ワインの中でも最も高名で重要なワインとして位置づけられている「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」。繊細さと若々しさが特徴の「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」は、その美味だけにとどまらず歴史的意義、また長期保存という点においてもメリットがあるワインです。

淡黄色のワインは、洋なし、トーストしたヘーゼルナッツ、柑橘類などの香りを楽しむことができます。繊細でありながらバランス感がよく、花々とヘーゼルナッツの香りを長く楽しめるワインです。アペルティフとしてもおいしくいただける「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」は、スープ、シンプルな魚介類や鶏肉料理と相性がよいことで知られています。

タウラージ・ラディーチ

古代から存在する「アリアニコ」を原料とする「タウラージ・ラディーチ」は、イルピーナに連綿と続くブドウ栽培の全歴史の象徴と言われています。皮ごとの浸軟を経て、オーク製のバリックで24ヶ月熟成、瓶詰め後も2年寝かされる赤ワインの古典といえる一点。

ルビー色を目で楽しんだ後には、サクランボ、スミレ、ベリー類のあときれのあるスパイスの香りが続きます。味わいは非常に優雅。プラムとサクランボの香りを含む味わいを長く堪能できます。肉料理全般と相性がよい上、トリュフ、スパイスの利いた料理、熟成チーズともおいしくいただけます。

ラクリマ・クリスティ・ビアンコ

すでに伝説といってもよい知名度を誇る「ラクリマ・クリスティ」。「キリストの涙」という美しい名は、南イタリアのワインの中では突出して有名です。中世においては、キリスト教会の修道僧によって丹念にコーラ・ディ・ヴォルペの栽培が行われワインに醸造されていたという歴史をもちます。ヴェスビオ火山の噴火を受けて、ミネラル豊かな土壌で栽培されるブドウは独特の風味があることでも知られています。

完熟フルーツ、パイナップル、桃、甘草の香りが優しい「ラクリマ・クリスティ・ビアンコ」は、ミネラルの影響を感じながらも非常に軽やかな味わいが特徴です。アペリティフとしても最高で、前菜、魚介のパスタ、魚のグリルとおいしくいただけます。

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