ポイヤック Pauillac

メドックの中ではもちろん、ボルドー全体を見渡しても、これほど豪華なシャトーのラインナップを誇る村は他にありません。ジロンド川の左岸、北にサン・テステフ、南にサン・ジュリアンを擁する、ボルドーワイン好きにとっての憧れの地、ポイヤックです。

メドック格付けの最上位となる第1級シャトー。5大シャトーと呼ばれる5つのシャトーのうち、実に3つがこのポイヤック村にあります。他にも、第2級が2つ、第4級が1つ、第5級が12と、合計18の格付けシャトーがここにあります。

ボルドーのエリートと呼ばれるポイヤック

150年以上前に制定された格付けですから、シャトーによっては当時の評価に比べて現在の実力が劣っている事も大いにありそうなものですが、ポイヤックに関しては、ラフィット、ラトゥール、ムートンの3大シャトーは常にトップを走り続けていますし、第2級のシャトー・ピション・ロングヴィル・バロン、第5級のシャトー・ランシュ・バージュは、今や第1級シャトーを脅かす存在になっています。

近年ではシャトー・ポンテ・カネがビオディナミを大々的に導入し、ライジングサンと呼ばれるほどに評価を急激に高めています。その他のシャトーも、評価の浮き沈みはあったものの、ほぼ軒並み格付けに見合った実力を発揮し続けており、ポイヤックが「ボルドーのエリート」と呼ばれる所以になっています。

カベルネ・ソーヴィニヨンに適した土壌

ポイヤックの土壌は、まさにボルドー左岸、オー・メドックを代表する砂利質の土壌。ポイヤックの北側には、平坦なメドックの中では最も高い30m弱の砂利の丘があり、ここにラフィット、ムートンの畑があります。

晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンは、水捌けが悪く保湿性が高い粘土質だと地中の温度が下がってしまい、完熟するのが難しいのですが、ポイヤックの特徴である、水捌けが良く温度を逃がさない深い砂利により、カベルネ・ソーヴィニヨンがよく熟します。メドックの中でも特にポイヤックはカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培比率が高く、7割近くの畑でカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されています。

ポイヤックの3大シャトー　ラフィット、ラトゥール、ムートン

数多くの格付けシャトーが軒を連ねるポイヤックでも、頂点に位置するのが、このラフィット、ラトゥール、ムートンの3つの第1級シャトー。

ポイヤックの北の端、サン・テステフ側に位置するシャトー・ラフィット。格付けシャトーの中でも最大規模の110haという広大な面積を所有し、年間の生産量はファーストラベルが20万本。セカンドのカリュアド・ド・ラフィットは30万本に迫る勢いです。他の第1級シャトーも同様ですが、セカンドと言っても格付け第2級並の品質を基準としており、もはやセカンドというレベルを超越しています（価格的にも…）。

ラフィットとは反対に、ポイヤックの南端、サン・ジュリアン側に位置するのがシャトー・ラトゥール。「メドックの良いシャトーは、全てジロンド川から見渡せる」と言われるように、ジロンド川の近くに位置しており、ジロンド川の持つ自然の温度調節機能の恩恵を受け、素晴らしいワインを造り続けています。ラフィットはセカンド・ワインのレ・フォール・ド・ラトゥール用の畑を、ファーストとは別の所に所有しており、その畑はポイヤック内の各地に点在しています。

1855年当時は第2級だったものの、唯一その格付を覆し昇格した、シャトー・ムートン・ロートシルト。毎年変わるアートラベルも有名で、ヴィンテージ毎のコレクターの多いワインです。セカンド・ワインはル・プティ・ムートン。白ワインのエール・ダルジャンもリリースしていますが、AOCポイヤックでは白ワインは認められていないため、AOCボルドーとしてリリースされています。

世界中から富が集まる村ポイヤック

カベルネ・ソーヴィニヨンは、長期熟成に耐えられる品種ですので、保管することによって価値が上がりやすいぶどう品種です。10年、20年の熟成に耐え、ワインとしての価値も上昇する事がほぼ確実なポイヤックのワインは、資産価値も莫大なものになります。

そうなると当然、世界有数の富豪が集まってきます。世界的な保険会社であるAXA（アクサ）がシャトー・ピション・ロングヴィル・バロンを1987年に買収し、大規模な改修を行い、その素晴らしい外観はポイヤックの見どころの一つになっています。向いに位置するシャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドも、2007年にシャンパーニュのルイ・ロデレールが買収し、負けじと大規模改修を行っています。

ポイヤックの主なシャトー

シャトー・ラフィット・ロートシルト（第1級）
シャトー・ラトゥール（第1級）
シャトー・ムートン・ロートシルト（第1級）
シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン（第2級）
シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド（第2級）
シャトー・デュアール・ミロン（第4級）
シャトー・ポンテ・カネ（第5級）
シャトー・バタイィ（第5級）
シャトー・オー・バタイィ（第5級）
シャトー・グラン・ピュイ・ラコスト（第5級）
シャトー・グラン・ピュイ・デュカス（第5級）
シャトー・ランシュ・バージュ（第5級）
シャトー・ランシュ・ムーサ（第5級）
シャトー・オー・バージュ・リベラル（第5級）
シャトー・ペデスクロー（第5級）
シャトー・クレール・ミロン（第5級）
シャトー・クロワゼ・バージュ（第5級）