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シャトー・ベイシュヴェル

Chateau Beychevelle

シャトー・ベイシュヴェルの由来と歴史


サン・ジュリアンにあるシャトー・ベイシュヴェルは、メドック格付け4級のシャトーです。

3世紀にわたって築かれた独自の個性を有するこのシャトーは、いつの時代にも権力を持った人物によって所有されてきました。これらの人物は、ボルドーおよびその周辺地域の経済、政治、文化のあらゆる側面において名を馳せ、それは国境のはるか彼方にまで及んだといわれます。

シャトーは1565年にフランソワ・ド・フォア・カンダル司教によって建設され、その後アンリ三世の時代には、フランスの海軍提督のエペルノン公爵に統治されます。

ところで、シャトー・ベイシュヴェルのラベルをよく見ると「帆を半分下げた船」が描かれています。これはエペルノン公爵が統治していた頃、ジロンド川を通る船乗りたちが城の前を通るときに「ベッセ・ヴワール(帆を下げよ)」と叫び、提督への敬意と忠誠を表したことに由来しています。シャトーの名前は、この言葉が訛ったものと言われているのです。

また、船首にした帆船のエンブレムに配されたグリフォン(ギリシャ神話に出てくる鷲の上半身とライオンの下半身をもつ伝説上の生き物)は、ワインの神ディオニュソスを守るとされています。

シャトーはその後、ド・ブラシエ公爵によって1757年に再び建築されました。17世紀中頃にはすでにワイン作りが始められていたシャトーですが、ド・ブラシエ公爵が所有していた時代に大きく名を上げます。しかし、2代目がフランス革命の影響を受けたことで追放されてからは、その名声は芳しくありませんでした。

その後は、パリで銀行家を務めていたアルマン・アイン氏の手に渡り、品質は以前にも増して高い評価を得るまでに回復しました。その品質は、サン・ジュリアンのトップと並び「格付け2級にふさわしい」とも言われています。

1989年からは、GMFと日本のサントリーの共同出資会社グラン・ミレジム・ド・フランス社が経営を行っており、日本人の間でも親しみやすいシャトーになりました。

シャトーが築き上げた美しさ


シャトー・ベイシュヴェルは、 「メドックの小さなヴェルサイユ」と詠われるほど美しいシャトーとして知られています。そのクラシックでエレガントな建物は、その美しさゆえに、多くの有力な政治家や文化人を魅了してきたことで有名です。

シャトー・ベイシュヴェルにある城は、中世に立てられた古城をド・ブラシエ公爵が1757年に取り壊し、その資材を使用して建て直したものです。19世紀の終わりに増築された後、近年になってその華麗な佇まいが新たに修復されてきました。

また新しく造られたベイシュヴェルの醸造庫は、シャトーおよびエペルノン公爵にまつわる伝説をもとに誕生しました。設計を担当したアルノー・ブーラン氏は、船体や船のマスト、さらには旅そのものから多大なるインスピレーションを受けたと言われています。 レベルの高い設備性能はもちろん、大型ガラスを使用したキューブ状のデザインなど、多くのイノベーションが施されています。

シャトーがこれまで長年の歴史とともに築き上げてきた「美しさ」は、多くのファンに支えられながら、今後も失われることなく保たれていくことでしょう。

醸造工程と土壌管理の取り組み


シャトー・ベイシュヴェルはメドックの中心地に位置し、れき層に深く覆われた土壌がベイシュヴェルから北側に伸び、ラトゥールの畑まで続いています。樹齢はおおむね30年で、カベルネ種の栽培に向いている土地です。

植栽密度が約9,000本/haのブドウ畑からは、約55hl/haのブドウが収穫されます。手摘みで収穫されたブドウは除梗・破砕された後、約2週間ほどマセレーションが行われ、アルコール発酵は28度から30度で8日〜10日間行われます。樽での熟成期間は通常16か月から18か月とり、濾過はせずコラージュで対応します。

シャトー・ベイシュヴェルでは、2002年からHACCP(食品の製造において安全を管理する手法)を導入し、自然環境や安全に配慮しながらトラディショナルな製法でワイン作りが行われています。減農薬農法を行うことで、自然環境に配慮した栽培と醸造を目指している団体「Terra Vitis」の適合証明を2005年に得ています。

このようにシャトー・ベイシュヴェルは、有機的な栽培方法に人一倍こだわり、人にも環境にも優しいワインを製造しています。

年間平均生産量は25万本〜26万本。作付け割合は、カベルネ・ソーヴィ二ヨン62%、メルロー31%、カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド2%。

ワインの味わいと評価


サン・ジュリアンのグラン・クリュ・クラッセであるベイシュヴェルは、エレガンスと力強さがあり、バランスがよく洗練されています。カベルネ比率が高く、長期間での熟成によるどっしりとしたワインが多いメドックにおいて、ベイシュヴェルはやや特殊なのかもしれません。なぜなら、ベイシュヴェルはメルロの比率を高く設定し、早くから飲める親しみやすいスタイルを目指しているからです。

1960年代、ベイシュヴェルは「他のシャトーより収穫を早く行う」という評判がたっていました。それにより、ワインにボディーが足りないという悪評を受けていたのです。しかしベイシュヴェルは、あくまでも目指すスタイルを貫きました。

そしてその信念は、1964年ビンテージで証明されることになります。その年、早熟なブドウを収穫したあとに雨が降り続きました。近郊の収穫されていないブドウは壊滅的な結果となってしまったのです。1964年シャトー・ベイシュベルは、メドックの偉大なシャトーの中で特に成功したワインの一つと言われています。

ベイシュヴェルの信念に基づいた、飲みどきを選ばずとも美味しくエレガントなスタイル、そして美しいルビー色と奥深い熟成香は、多くのファンに支持されています。