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グラッパ

grappa


グラッパ (grappa)はイタリア特産の蒸留酒でブランデーの一種になります。ブランデーはワインを蒸留して造りますが、このグラッパの最大の特徴は「ポマース」、ワインを造る際に出るブドウの搾りかすを蒸留して造ることです。

EUの法律で、グラッパと呼べるものはイタリア産である事と定められています。似た造りの、所謂「粕取りブランデー」であるものの、フランスで造られるものは「マール」と呼ばれています。

イタリアでは非常にポピュラーな酒であり、多くの場合、食後酒として楽しまれています。アルコール度数は30〜60%と高めのため、カクテルベースとして使われる事も多いようです。グラッパ (grappa)の歴史は古く10世紀にまで遡ります。近年は日本でも知名度が増しており、ファミリーレストランでもメニューに加えている店もあります。

元々はワインを飲みたくても飲めない、貧しい農民の味方


グラッパがイタリアで流行りだしたのは10世紀ごろと言われており、当時のヨーロッパではブドウを醸造して飲むワインは非常に高級品であり、上流階級の人々が嗜むものでした。その、高級品であるワインの原料のブドウを栽培していたのは他でもない貧しい農民。彼らは自分たちの栽培したブドウで造ったワインを自分たちで楽しむことが出来なかったのです。

そこで思い付いたのが、ワインを造る際に出る「搾りかす」。その「搾りかす」を蒸留させることによって「グラッパ」が生まれたのでした。そう、現在ではグラッパは高級品のイメージなのですが、当時は貧しい大衆の味方だったのです。

大衆の安酒のイメージを払拭


元は大衆向けのグラッパ。イタリア北部の伝統酒でもあります。当時は寒いときに体を温める、風邪をひいたときにミルクに混ぜて飲むと、まさに素朴な安酒といったところでした。原料の「ブドウの搾りかす」も搾ってから時間の経ったものが使われていたり、農家が各々造ったいたので品質と味も安定せず完成度の低いものが多かったようです。

近年は原料にこだわり、一流の蒸留機を使用した高品質なグラッパが増え、凝ったボトルに入った物、長期熟成した物、単一品種で造った物、有名産地の物など高級酒として扱われる物が増えています。また、前述の通りイタリア北部中心だった産地もイタリア全土(トスカーナなど)に広がり多彩な味わいを楽しめるようになりました。

ブドウの搾りかすを蒸留して造られるお酒


グラッパの原料は、ワイン醸造の際に出る「ブドウの搾りかす」です。面白いことに、赤ワインの場合は醸造過程で、果皮ともに発酵させるためそのままの状態で蒸留できるのですが、白ワインの場合は搾りかすにアルコール分が含まれていないため、残った糖分をアルコール発酵させてから蒸留します。

蒸留とは、原料に熱を加えてアルコール分と香りを蒸発させ、冷却し液体として取り出すことです。これは、同じブドウを原料としているブランデーや麦などを原料としているウィスキー、ウォッカなどのスピリッツ類、また日本の焼酎や琉球泡盛などとと同じ製法です。

伝統的には「非連続式」と呼ばれる蒸留法で造られていました。これは近年主流の「連続式」と比べると大量生産には向いていませんが、原料の香りや風味が生きるので、この「非連続式」で造られているグラッパを選ぶと製造元の個性を楽しむことが出来ます。

無色透明なのに感じられるブドウのアロマ


同じブドウを原料としている蒸留酒であるブランデーは色が着いていますが、グラッパは「無色透明」です。これは蒸留された後に樽熟成をしないためです(近年は樽熟成したグラッパもリリースされています)。

ちなみにフランスの似たような「搾りかす」を原料とする蒸留酒である「マール」は樽熟成をするために色が着いています。樽熟成をすると円熟味が増し、円やかな味わいになりますが、グラッパのようなブドウのフレッシュなアロマを感じることは出来ないようです。ちなみに、加水、加糖、再発酵行わないものをグラッパと呼び、加水などを行ったものは「アクアヴィーテ」、「ヴィニカ」と呼ばれ厳しく分けられているのも特徴です。

バローロから造ったものや、サッシカイアやルーチェ等、高級ワインのグラッパも


最近では、イタリアのイタリアワインの王様と言われるバローロの醸造過程で出た搾りかすを使った超高級グラッパまで登場しています。イタリアにおける最高峰のクリュ(ブドウ)を使用し、蒸留後に木樽熟成させた逸品です。そのほかにも生産過程でのスピードを上げてフレッシュさを最大限に活かすなど様々な工夫により著しく品質が向上しています。

また、サッシカイアやルーチェ、オルネライアといった超高級ワインの搾りかすからもグラッパが造られています。

洗練されたフランスのブランデー、コニャックやアルマニャックに対し、イタリアのグラッパはそのブドウの個性を感じさせる力強く独特なクセのある味わいが、多くの人を虜にしています。