ボルドー・ブランの魅力に迫る!ソムリエのおすすめワインもご紹介!

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皆様はボルドーのワインといえば、何を思い浮かべますか?
荘厳で貫録のある高級ワイン?ちょっといいお酒を飲みたいときの候補?安くて気軽に開けられる日常酒?

いずれにしても赤ワインをイメージされる方が多いのでは。
しかし私はその状況に一石を投じたい!そうボルドー・ブラン!

爽やかですっきりとしたデイリーワインから、こだわりのあるワンランク上の逸品、はたまた格付シャトーの手掛ける高級ワインまで!今回は辛口ボルドー・ブランの魅力をたっぷりお伝えします!

ボルドーの白ワインとは?

まずはおおまかな話から。ボルドーなんだからボルドーで作られてるんでしょ?と思った方。正解です。ただ一筋縄ではいかないのがワインの常。

ではボルドー・ブランとは一体なにか?
そこから紐解いていきましょう。

歴史

なんとなくで想像できると思いますが、ボルドーってやっぱり赤ワインが多い産地なんですね。ボルドーにおける白ワインの生産量は全体の10%未満。悲しい限りです。

これは赤ワインのほうが儲かるから、白ワイン用のブドウが抜かれてしまった、というホントかウソかわからない逸話や、霜の影響で大打撃を受けて抜かざるを得なかったという史実などがあり、この数字にとどまっています。

しかしボルドーというのは地理的に海や川に近いので、もともと良質な白ワイン用ブドウが育ちやすい土壌にあります。主要品種ソーヴィニヨン・ブランの栽培の歴史も、赤ワインより古い1600年代からといわれる、実は伝統産地なんです。

1980年から1990年代にはその爽やかさや酸味から人気を博し、フレッシュ&フルーティなワインの第一線として活躍。今日でもさまざまな改良を加え、意欲的な生産者も現れています。

アペラシオン

では一筋縄ではいかない、とはいったいどういうことか?

それはフランスのAOC規定が原因です。乱暴に説明してしまえば、AOCボルドーなら白ワインを生産できるけど、AOCメドックは白ワインを生産できないというもの。厳密にいうと、名乗れないということになります。

また先ほど生産量が少ないという話をしましたが、ボルドーの白ワインが許されているAOCも少なく、しかもよく目にするものとなると数えるほどになってしまいます。代表的なものを紹介しておきます。

ボルドー
グラーヴ
ぺサック・レオニャン
ブライ・コート・ド・ボルドー
アントル・ドゥ・メール

このあたりはよく見かけるAOCでしょうか。ちなみにこの中で白だけ生産できるAOCはアントル・ドゥ・メールだけです。あとのAOCは赤ワインも生産できます。

この規定に沿うと、例えばメドック格付1級のシャトー・マルゴーが作る「パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー」は数万円するのに、一番格の低いAOCボルドーになります。AOCマルゴーは白ワインの生産が許されていませんから。

こういうことが良く起こるので、一筋縄ではいかない産地となってしまうのです。AOCボルドーだけど、畑はメドックにあったり、サン・テミリオンにあったり。味わいも全く異なってしまうので、ちょっとわかりづらいですね。

作り方

続いて作り方の話に入ります。ベースとなる作り方はほかのワインと同じです。そのうえで単一品種ではなくブレンドを行い、ステンレスタンクを用いて醸造熟成、あまり熟成させない、というところが典型的なボルドー・ブランです。

この一般的な作り方を施せばフレッシュでフルーティ、爽やかで酸味の効いたボルドー・ブランになります。
それを踏まえたうえで、特殊な製法を紹介していきます。

マセラシオン・ペリキュレール

フランス語だとマセラシオン・ペリキュレールですが、英語だとスキン・コンタクト。こちらのほうが聞き覚えのある方も多いと思います。

最近流行りのオレンジワインで使われていますね。皮や種をブドウの果汁と一緒に接触させておくことで、様々な成分を引き出す製法です。オレンジワインほど長時間接触させることはないようです。

現代的な技術としては、「白ワインの法王」と呼ばれたボルド大学教授、故ドゥニ・デュブルデュー氏が1980年代に確立し、今となっては広く使われています。

ざっくりと説明すると酸味をやわらげ、果実味を強くするための製法。色合いも濃くなり香りも豊かになる、というボルドーの白ワインにとってはかなり有用な製法です。

筆者自身がこのボルドー・ブランすっごい美味しいなあ、と感じるワインにはこのマセラシオン・ペリキュレールが使われていることが多いです。(あくまで好みです)

シュール・リー

ロワール地方のミュスカデによく使われている製法で、日本でも甲州を使ったワインによく採用されています。

「Sur(上に) Lie(澱)」とフランス語で書く通り、一般的には発酵後の澱は取り除くのですが、それをせずに澱と一緒に一定期間熟成させる方法です。

ワインと接触させておくことで、澱が自己分解しアミノ酸や多糖類に変わり、ワインに旨味やコク、複雑なテクスチャーを持たせることができます。

単調な白ワインに複雑味を持たせる、という意味ではマセラシオン・ペリキュレールと同じですが、シュール・リーの場合、うまみやコクなどクリーミーでリッチなワインを目指す場合に多く使われます。

ボルドー・ブランだとミュスカデと違って、あまりラベルに書いてあることはなく、資料にちょこっと書いてあるだけ、ということが多いのであまり目にする機会は多くないかもしれません。

木樽熟成

赤ワインやブルゴーニュでは当たり前のように木樽での熟成が行われていますが、ボルドーの白ワインにおいてはそこまで広く使われる技術ではありません。

一部の高級ボルドー・ブランやグラーヴ、ぺサック・レオニャンの白ワインには多く見られます。
木樽で熟成することで、アーモンドのような香ばしい香りや柔らかい口当たり、バターのような余韻や旨味を加えることができます。

オークのニュアンスをしっかりと付けたボルドー・ブランは、ブルゴーニュの高級白ワインに勝るとも劣らない風格を備え、いくつもの名作を生み出しています。

逆説的に考えれば、樽のニュアンスを感じられるボルドー・ブランは価格の高いものが多い、ということも言えるでしょう。

ボルドー・ブランのブドウ品種って?

あえて説明しなくても、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンだけ知っていれば、おおかた大丈夫なんですが、実は結構面白い品種も隠れています。

ここに書いてある品種でもブレンドのパーセントが決まってたり、そのほか細かい規定はあるのですが、割と面倒なのでそのあたりは割愛します。

あと根っこはボルドーなので、ブドウ品種がエチケットに書いてあることはほとんどないのでご注意ください!

ソーヴィニヨン・ブラン

辛口のボルドー・ブランの主要品種といえば、このソーヴィニヨン・ブラン。世界中で育てられ、ニュージーランドやサンセールがとくに有名です。

ボルドーを含むフランスではハーブや柑橘系の香り、青りんごのような爽やかな果実味が特徴です。瑞々しく清々しいワインが出来上がります。

ボルドーの白ワインではあまり単一品種でワインに仕立てられることはないですが、ソーヴィニヨン・ブランが入っていないボルドーの白ワインはあまり見かけませんね。

ただ最近ではその風潮もちょっとずつ変化してきていて、ソーヴィニヨン・ブラン単体のワインも見かけるようになってきました。

セミヨン

ボルドーの白ワインにおいて、ソーヴィニヨン・ブランの重要なパートナーがこのセミヨン。もともとは貴腐ワインの聖地ソーテルヌでのみ栽培されていた品種ですが、今ではボルドー全域で栽培されています。

爽やかでハツラツとしたソーヴィニヨン・ブランに対して、厚みのある果実味とまろやかさやコクを身上とするセミヨン。お互いを補完する存在として、まさに良き相棒といったところですね!

若干影の薄い品種ではありますが、縁の下の力持ち的にボルドーを支え続けている重要な品種です。

ミュスカデル

ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ときたら次はミュスカデルですね。語感的に誤解しやすいですが、遺伝的にはマスカット(ミュスカ)とは関係ありません。

ブレンドしてあっても、10%かそこらというあまり見かけない品種ですね。華やかな香りや果実味を補助する、という役割を担っているようです。

ソーヴィニヨン・グリ

ソーヴィニヨン・ブランの変異種であるソーヴィニヨン・グリ。いわゆるグリ系品種で灰色がかった果皮を持ち、ブランよりもやや重心が低く、豊かな香りや濃縮された果実味が特徴です。

一昔前の日本ではほとんど見かけない超レア品種でしたが(実は日本でも栽培されているらしい)最近は補助品種的に使われることも多く見かけます。それどころか単一品種のワインも!

実際いろんな文献を読み漁ると流行の兆しを見せているようで、将来的にはピノ・グリのように世界的にもてはやされる品種になるかもしれません。

単一品種のワインを飲んだ筆者個人の感覚では、ニューワールドっぽいニュアンスを感じるかなと思います。果実味がしっかりとしつつ、酸味も失われていない、よりニュージーランドに近いボルドー・ブランという印象でした。

その他品種

ここにはAOCの規定には載っているけれど、全く見たことのないブドウ品種や、ボルドー・ブランには使われていない品種を載せておきます。

メルロー・ブラン
ほんとに見たことのない品種です。おそらくメルローの変異種だとは思うのですが、ほとんど情報が出てきませんでした。

コロンバール
フランス南西部やガスコーニュ地方でよく使われるブドウ品種。
柑橘系の香りや果実味はボルドーの白ワイン用品種に似通っていますが、ブレンドされているワインは見たことありません。

ユニ・ブラン
イタリアではトレッビアーノと呼ばれるブドウ品種。こちらの名前のほうが有名かもしれません。
ブランデー用として栽培されるため、世界第二位の生産量を誇ります。

が、ボルドー・ブランに入っているのは見たことがありません。

モーザック
南西地方やラングドッグでよく見かけるブドウ品種。
特にリムーでは重要品種で、あの「世界最古のスパークリングワイン」といわれるブランケット・ド・リムーの主要品種です。

が、ボルドー・ブランに入っているのは見たことがありません。

新品種

さて次は今後見られるかもしれないブドウ品種です。
2021年から栽培が認められた白ブドウ品種があります。

リリオリラ
全く聞いたことありません。
調べたところシャルドネを親に持つ交配品種とのことですが、それ以上の確かな情報は出てきませんでした。

アルバリーニョ
まさかアルバリーニョがボルドーで育てられるとは!

確かに海沿いという立地条件は、スペインにおけるアルバリーニョの代表産地リアス・バイシャスに似ているところはあります。
これは楽しみですね。

おすすめのボルドー・ブラン

さてここまでボルドーの白ワインの魅力について、滔々と説明を続けてきましたが、百聞は一見(一飲?)に如かず、ということで、おススメのボルドー・ブランを紹介していきたいと思います!

産地や味わいをできるだけばらけさせて、いろいろな特徴を味わえるように紹介していきますので、飲み比べなんかもおすすめです。

正統派アントル・ドゥ・メール!

シャトー・ド・カタローニュ

ボルドー・ブランの聖地、といっても過言ではないAOCアントル・ドゥ・メール。ボルドーではほとんど見かけない、白ワインだけ生産できる産地です。ボルドーを代表する河川ガロンヌ河とドルドーニュ河に挟まれた、三角州のような地形にある生産地です。

安定感のあるアントル・ドゥ・メールは、低価格ながら質の良いボルドー・ブランを世に送り出しており、このシャトー・カタローニュもその一つ。

フレッシュでフルーティ。グレープフルーツのような爽やかな酸味と果実味、程よいボディも持ち合わせる、まさにボルドー・ブランの模範的な1本です。低価格なのも魅力的で、コストパフォーマンスが非常に高いボルドー・ブランです。

実力派シャトーのお買い得ボルドー・ブラン!

ル・ベ・パー・モーカイユ・ブラン

オー・メドック内の6つある村名AOCのうちのひとつ、ムーリス。そのなかでも「ムーリス三大シャトー」としてシャス・スプリーン、プジョーにならぶモーカイユは、格付シャトーに匹敵する実力派シャトーです。

もしかしたらファースト・ラベルよりも見かけることの多い(?)、このお買い得キュヴェは、実力派シャトーの片りんを感じさせる、さすがとしか言いようのない出来。こんな価格で飲めちゃっていいんですか?という言葉も漏れてしまう1本です。

柑橘系や青りんごの香り高いアロマに、ミネラルやハーブのニュアンス。柔らかい口当たりと酸味、フルーティな果実味はまさに王道。バランスがよくどんな料理にも合わせられます。

10年の時を経た良質熟成ボルドー・ブラン!

シャトー・マラガール ブラン 2011

メドック格付2級のシャトー・グリュオー・ラローズと同じオーナーを持つ、シャトー・マラガール。いわゆる兄弟シャトーの間柄ですが、こちらのマラガールは、古くから熟成に定評のあるシャトーとして、人気を博しています。

正直に言ってしまえば、ボルドー・ブランは10年熟成させるとピークを過ぎ、枯れてしまっていることが多いのですが、このマラガールは飲み頃を迎え、好きな人はとことんハマってしまう味わいに変化しています。

セミヨン主体で、よく熟したメロンの香りやハチミツのような甘やかな香り。穏やかな酸味に洋ナシを感じさせる果実味とクリーミーさを感じます。深みやコクを味わえる複雑味のあるボルドー・ブランです。この価格で手に入る機会は、なかなかありませんね。

珍産地&珍品種!

シャトー・オー・モンジャ

先ほど説明したアントル・ドゥ・メールの北側に位置する、わずか700ヘクタールほどの産地グラーヴ・ド・ヴェイル。ほとんど流通していないため、筆者もこのシャトー・オー・モンジャに出会うまで忘れていました。

アントル・ドゥ・メールの粘土石灰質とは違い、砂利質の土地でアントル・ドゥ・メールの中でも、異彩を放つ産地として独立したAOCを持っています。さらにこのシャトー・オー・モンジャのブランはなんと、ソーヴィニヨン・グリ主体&マセラシオン・ペリキュレール(スキン・コンタクト)を採用!

まず香りからして重心の高い、ふわっと華やかな果実香が特徴。そのあとにグリ系ブドウ&スキン・コンタクトの鮮烈でジューシーな果実味が訪れ、厚みやコクも程よい逸品です。年間生産量2400本の希少性も含めて、一度は味わってほしいボルドー・ブランです。

オーガニック認証済みの王道グラーヴ!

シャトー・ド・ロスピタル

高級ボルドー・ブランとして名を馳せるグラーヴ地区でも、さらなる銘醸地ぺサック・レオニャンにほど近い、北部の好立地に位置するシャトー・ド・ロスピタル。日本ではあまり見かけませんが、現地評価の高いシャトーです。

グラーヴでは珍しく、オーガニック認証のひとつAB認証を取得済。そのためかほかのグラーヴ・ブランよりも柔らかい印象。

ソーヴィニヨン・ブラン主体の爽やかさとキレイな酸味、複層的なミネラル感と樽熟成のニュアンスが混じりあい、ボリューム感を作り出しています。フレッシュ&フルーティとは一線を画した、ワンランク上のボルドー・ブランです。

格付シャトーが手掛ける珠玉の逸品!

アルト・ド・カントナック・ブラウン

メドック格付3級のシャトー・カントナック・ブラウンが手掛けるボルドー・ブラン。2011年が初ヴィンテージとなる比較的新しいワインで、畑の面積は僅か1.8ヘクタール。そのため、年間生産数9000本から10000本と希少なワインです。

ソーヴィニヨン・ブランのブレンド比率が高く、冷涼な区画のブドウを使っているため、「サンセールを思わせる」という表記も見られるほど、練されたスタイリッシュなワインが出来上がっています。

メロンやグレープフルーツを感じさせる香りに、ハーブやミネラルのニュアンス。酸味は穏やかでリンゴのような果実味と、ほのかな苦みに象徴されるミネラルが溶け込んだ、調和のとれたボルドー・ブランです。

由緒あるグラーヴ格付シャトー!

シャトー・カルボーニュ

古くからあるぺサック・レオニャンのシャトーで、グラーヴ格付のなかでも珍しく赤白ともに格付に選出されているシャトー・カルボニュー。カルボニューは日本でも知名度が高く、有名なシャトーです。

白ワインは長期熟成に耐える、凝縮感のある味わいが魅力で、一時期、故ドゥニ・デュブルデュー氏が醸造を担当したことから、より磨きのかかったボルドー・ブランを作り続けています。

若いうちでも爽やかでフルーティな味わいを楽しめますが、熟成すると濃密な果実味を楽しめるワインへと変貌します。日本の気候だとワインセラーがあるか否かが重要ですが、お持ちの方は熟成もおすすめします。

最後に

ボルドー・ブランの魅力、伝わりましたでしょうか?

ここまで説明してきておいてなんですが、やはり飲まないことにはワインの本当の魅力ってわからないかな、とも思うんです。
なので僭越ながら、最後におすすめのボルドー・ブランを紹介させていただきました。

このコラムを読んで、次ボルドー・ブランを飲むときに、こんなこと言ってたなとか思ってくれれば幸いです。
では皆様がよいボルドー・ブランと出会うことを願っています!

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