右岸?左岸?いまさら聞けないボルドーの産地あれこれ、教えます!~左岸編~

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世界的銘醸地ボルドー。
ウン万円もする格付シャトーから1000円そこそこで買えるデイリーボルドーまで、多種多様なワインを作る産地です。

飲んだことない!という人を見つけるほうが難しいほど、日本で最もポピュラーなワインと言っても過言ではないでしょう。

しかしボルドーという産地をしっかりとみると、意外と知らない発見があることも!
右岸?左岸?広域?村名?格付?上流?下流?

今回はボルドーの産地に関するあれこれに迫っていきます!今回は左岸とその他産地を解説!

はじめに

まず歴史はとても長くなるので、今回は割愛します。ワイン産地としての歴史は大体900年くらい。と覚えていただければ大丈夫です。

そしてよくボルドーの特徴を説明するときに用いられる、右岸と左岸。これは大西洋に流れ込むジロンド河と、そこから二つに分かれるガロンヌ河とドルドーニュ河のどちらの岸に産地が存在するか、ということです。

詳しくは各項目で説明しますが、一部を除いて下流の方から先に説明していきます。例えば、メドックから説明してグラーヴで終わる、といった感じです。

また広域AOCのボルドーとボルドー・シュペリュール、スパークリングワインのクレマン・ド・ボルドーなどは、ほぼ全地域で生産できるため、説明を省略します。

ここではクラス的にそれよりも上位の産地を説明します。今回は左岸とその他産地の解説です。

左岸

主に上流のメドック地区と、下流のグラーヴ地区に分けられます。

全体的な特徴を軽く捕まえると、土壌の関係でメドック地区でも下流はメルローが多く、上流はカベルネ・ソーヴィニヨンが多く植わっています。
グラーヴ地区ではメルローが多く使われます。この違いがワインのスタイルに表れます。

白ワインはメドック地区の各AOCでは名乗ることを許されていないため、AOCボルドーとなります。
逆にグラーヴ地区では許されていて、旧来からボルドー・ブランの銘醸地として有名です。
いずれもソーヴィニヨン・ブランとセミヨン、ミュスカデルがよく使われます。最近ではソーヴィニヨン・グリも人気が出始めています。

メドック

河口、つまり大西洋に近い下流域に広がるAOCメドック。
昔はバ・メドックと呼ばれていましたが、「バ」というのはフランス語で「下、低い」という意味があるため、侮辱的な地名と反感を買い、現在では単にメドックと呼びます。

オー・メドックに比べると、一段下がる評価を受けていますが、それは品質によるところ、というよりもボルドーの商業的な側面が強く、コストパフォーマンスの高いシャトーが多く存在します。

若いうちから楽しむことのできるシャトーが多いですが、それでも数年程度は置きたいところ。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・ポタンサック

オー・メドック

AOCメドックから上流に上がったところが、オー・メドックで「オー」とは「上の」という意味を持っています。

メドック格付シャトーを有するスター産地であるオー・メドック。
そして格付シャトーのみならず、新進気鋭の実力派シャトーも軒を連ねる、まさにボルドーの中心地。

ここにあるシャトーは個々の力量が高いので、土地の個性をも上回る作り手の個性が強く現れることがあります。
なのでしっかりと下調べをして、好みに合うシャトーのワインを購入することをおすすめします。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・カントメルル(格付五級) シャトー・ソシアンド・マレ シャトー・シトラン シャトー・ボーモン

サン・テステフ

オー・メドック筆頭4村の中で、最も下流にあるサン・テステフ。

下流の土壌はほかの3村が砂利質であることに対して、より粘土質の比率が高くなります。
水はけが悪いため暑い年に真価を発揮する、といわれています。近年では2003年や2010年がそれに該当します。

基本的には堅牢でフルボディなタイプで、豊かな味わいとストラクチャーのしっかりとしたワインが出来上がります。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・コス・デストゥルネル(格付二級) シャトー・モンローズ(格付二級)

ポイヤック

五つある格付一級シャトーの中でも、実に三つが軒を連ねるポイヤック。

ブルゴーニュでいうヴォーヌ・ロマネ村のように、頂点に君臨する村。一級シャトー以外にも計18もの格付シャトーがひしめき合い、格付外のシャトーもクオリティが高い、まさしくスーパースター軍団。

それぞれのシャトーに特徴があるものの、基本的にはしっかりとしたタンニンがあり、濃密で長期熟成能力を持ったワインが生まれます。
ボルドー愛好家にとって、聖地ともいえる産地です。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・ムートン・ロートシルト(格付一級)、シャトー・ラフィット・ロートシルト(格付一級)、シャトー・ラトゥール(格付一級)

サン・ジュリアン

筆頭4村の中で生産量が最も少ないサン・ジュリアン。

しかし正統派の作りをするシャトーが多く、極めて高い評価を受けています。全畑の9割以上が格付シャトーによって所有されている、といわれています。

サン・ジュリアンのワインは滑らかなタンニンと豊満さ、長期熟成能力も持ちます。力強いポイヤックと香り高いマルゴーの特徴を併せ持つ、いいとこどりの産地とも評されています。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・レオヴィル・ラスカーズ(第二級) シャトー・グリュオ・ラローズ(第二級) シャトー・ラグランジュ(第三級)

マルゴー

村の名を冠する格付一級シャトーがあるマルゴー。

筆頭4村の中で最大面積、最も上流にあり、ひとつだけ地理的に離れた位置にあるため、ヴィンテージの評価も個別に与えられることが多く、唯一無二の存在感を放っています。

格付シャトーの数も最大のマルゴーの特徴は、なんといってもエレガンス。力強さを身上とする他の村からは異彩を放ち、繊細でふくよかなワインが出来上がります。格付外のシャトーも多く日本に入ってきており、目にすることも多いでしょう。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・マルゴー(格付一級) シャトー・パルメ(格付三級)

ムーリ、リストラック

メドックで村名を名乗れる6つのうちに入る、ムーリとリストラック。

筆頭4村に比べ、ジロンド河からやや離れた位置にあり、格付シャトーも有していないことから、やや地味な存在ととらえられがちですが、ボルドー好きにとっては安息の地。
コストパフォーマンスに優れたワインが多くある、掘り出し物の産地です。

やや高めの価格設定をされることも多いですが、格付シャトーをしのぐともいわれる実力派シャトーもあり、有名シャトーのグレートヴィンテージなどは垂涎モノ。それでいて価格は抑えられるのだから、より涎が垂れるというものです。

認定タイプ:赤のみ
有名シャトー:シャトー・シャス・スプリーン(ムーリ) シャトー・プジョー(ムーリ) シャトー・フォンレオー(リストラック)

グラーヴ

ボルドーの街から見て北部(上流)がメドック、南部(下流)がグラーヴ地区となります。

フランス語で「砂利」を意味するグラーヴは、もともとボルドーのワイン生産の中心地。今ではその座をメドックに譲った、とみるのが一般的ですが、メドックとは違う柔らかくエレガントな赤ワインと、名実ともにボルドートップの白ワインは健在です。

AOCメドックやオー・メドックに比べれば、目にする機会はそう多くないものの、日本人が好むのはおそらくグラーヴのワインではないかな、と思っています。赤も白も柔らかく豊かな果実味を持ち、若くから楽しめるワインが多くあり、日本の家庭料理に寄り添える懐の深さを持っています。

認定タイプ:赤白
有名シャトー:シャトー・ド・シャントグリーヴ シャトー・ラウール

ぺサック・レオニャン

その卓越した品質から、1987年にAOCグラーヴから独立したぺサック・レオニャン。

メドックの格付でありながら、この地から格付に割って入った一級シャトー・オー・ブリオンを筆頭に、独自の格付も制定し、赤白合わせて16シャトーが認定されています。

少しわかりづらいのが「赤だけ」「白だけ」「赤白両方」の3つの認定があることと、グラーヴ格付とは言いつつも、すべてAOCぺサック・レオニャンにある、ということ。
ただしどのシャトーも威厳と風格を備えた、まさにグラン・ヴァンであることに疑いはありません。

認定タイプ:赤白
有名シャトー:シャトー・オー・ブリオン(格付一級) ドメーヌ・ド・シュヴァリエ(グラーヴ格付) シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオン(グラーヴ格付)

その他産地

実はボルドーには、右岸にも左岸にも分類されていない(河に隣接してるので岸はありますが)それ以外の地域が存在します。

基本的には広域AOCの生産地域になるのですが、一部秀逸なテロワールを持つとして、単独AOCを名乗るものもあります。

アントル・ドゥ・メール

ガロンヌ河とドルドーニュ河に挟まれたアントル・ドゥ・メール。
フランス語で「二つの海の間」という意味を持ちます。

ボルドーでは珍しい、白のみが認定された産地で、この地で赤を作るとAOCボルドーやシュペリュールになります。
ソーヴィニヨン・ブランを主体にセミヨンやミュスカデル、ソーヴィニヨン・グリを使った爽やかな白ワインを生み出します。
良くも悪くも品質のブレが少なく、低価格で良質なボルドー・ブランが見つかる産地です。

隣接するオー・ブノージュは、ほとんど日本では見かけませんが、こちらもボルドー・ブランの産地。辛口を作るとAOCアントル・ドゥ・メール・オー・ブノージュ、甘口だとAOCボルドー・オー・ブノージュになります。

認定タイプ:白のみ

グラーヴ・ド・ヴェイル

アントル・ドゥ・メールのサン・テミリオン側に位置する小さな産地、グラーヴ・ド・ヴェイル。

ドルドーニュ河の左岸にあり、ここだけが砂利質の土壌のため、アントル・ドゥ・メールの中では特異なテロワールを持ちます。
赤ワインは香り高く滑らかで、長期熟成には向きませんが、華やかなスタイル。明確に特徴が出ているワインです。
白も同様に香り高くフレッシュで、アントル・ドゥ・メール産のものよりも品質が高い印象です。

日本にはほとんど入ってきていませんが、手に入れられる機会があるなら、赤も白もぜひ試してほしい産地です。
ちなみにAOCグラーヴとは同じ語源ですが、産地としてのつながりはありません。

認定タイプ:赤白

サント・フォア・ボルドー

広大なボルドーでもっとも東にあるAOCサント・フォア・ボルドー。

400ヘクタールほどの小さな産地ですが、ワイン産地としての歴史は古いようです。
赤ワインは主にメルローが使われ、骨格のしっかりとした力強さが売り。若いうちでもパワフルさを楽しめますが、タンニンも豊かなため長期熟成も可能です。
白は辛口タイプも生産可能ですが、現在では作られておらず、甘口のタイプが主流です。

マイナーで日本ではあまり見かけませんが、逆に日本に入ってくるレベルのものは、それなりの品質である、とも言えます。時々良い熟成をした古酒が入ってくきます。

認定タイプ:赤白

右岸編に続く

今回は、ボルドーの左岸とその他の産地について解説してきました。

次は、より複雑でこまごまとした産地の多い右岸を解説していきます!

■右岸編はこちら!(公開され次第リンクを繋げます)

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