数千種と言われているワイン用ブドウの中でも、ブドウ栽培可能産地のほとんど全てで栽培されている珍しい白ブドウ品種がシャルドネです。
シャルドネは、ブルゴーニュ地方マコネのシャルドネ村に関与する、と言われていますが、レバノンでシャルドネの原型種が発見されており、その原産地はいまだ研究中です。
シャルドネは、順応性が高い品種として知られており、冷涼な地域、温暖な地域問わずそれ相応の仕上がりになります。この幅の広さがシャルドネが魅力的と言われる所以です。
ピノ・ノワールが祖先
世界最高峰のシャルドネの生産地はフランス・ブルゴーニュです。シャブリはもちろん、コルトン・シャルルマーニュ、モンラッシェなどで使用されているブドウ品種はシャルドネのみです。
そのため、高級品種として扱われていますが、DNA鑑定によるとピノ・ノワールを祖先に持つ種だということがわかっています。
また、グエブランと呼ばれている、今はほとんど栽培されていない劣等種がその片親であることもわかっており、その配合から生まれているという珍しい品種です。
もともと、中世の頃からは北東フランスで多く栽培されていたのですが、低質なワインを多産してしまうことから、抜根されてしまいました。しかし、当時から非常に品質が高いとされていたピノ・ノワールと自然交配を果たし、結果的にシャルドネという形になり世界全国で栽培されるまでになったのです。
シャルドネの魅力
シャルドネの魅力は、酸にあると言われます。世界で造られているシャルドネですが、どの土壌、どのテロワールでもある程度、順応できてしまうため栽培面積が広がりました。
しかし、本来はシャルドネは大変繊細なブドウであり、酸が高いことで知られています。その酸をバランスよく残すことにより、シャープで切れ味の鋭い味わいに仕上がるのですが、温暖な地域だとそれが叶いません。
ブドウは、成熟するまではブドウに含まれる酸のひとつである、リンゴ酸を増加させていきますが、成熟後には酸度が下がっていきます。
また、気温が高い場合はそのリンゴ酸の減少がひじょうに速くなることから、温暖な地域のシャルドネは甘さはあるのですが、べったりとした味わいになると言われます。
一方、冷涼なブルゴーニュのシャブリ地方などでは、酸が残ることや独特な石灰質土壌のおかげで、テクスチャーとミネラル感のあるシャルドネが仕上がります。これが、今も尚シャブリがシャルドネ王国と言われる理由のひとつです。
マロラティック醗酵が行われる
一般的に白ワインを醸造する場合、収穫後のブドウは果皮と種子は取り除かれ、ジュースだけが醸されます。そして、ステンレスタンクで低温醗酵を経た後、フレッシュ&フルーティーな状態で出荷されていきます。
世界にあるほとんどの白ブドウがこの工程を経るのですが、シャルドネだけは例外です。シャルドネの個性は、「個性が無いこと」と言われます。その理由としては、シャルドネは特に強烈な香りを持っているわけでもなく、味わいも自由自在に変化させることができるので、ある意味ではカメレオンのような白ブドウ品種と言えます。
また、前述したように酸がとても高く収穫できることもあり、マロラティック醗酵を行うことも可能です。マロラティック醗酵は、ワインに含まれているリンゴ酸を乳酸菌の力で、乳酸菌に変化させる工程です。
赤ワインの場合、タンニンが豊富なため、酸がとの相性が悪く、そのバランスを取るためにマロラティック醗酵が基本的に行われます。シャルドネに関しては、酸がとても強いためにマロラティック醗酵を行い、丸みのある味わいに仕上げるとされています。
ブルゴーニュ地方のシャルドネの多くはマロラティック醗酵を行いますが、ニューワールドの中にはその酸を残してフレッシュに仕上げるシャルドネも多くあり、マロラティック醗酵有り、無し双方のスタイルを楽しめる珍しい品種です。
樽熟成で長期熟成可能
ブルゴーニュ地方のシャルドネは、大変高価なものが多く存在しています。ブランド価値や希少性が関係しているだけではなく、長期熟成ができ、数年前のヴィンテージを楽しむことができる、ということも関係しているでしょう。
シャルドネは繊細な香り、風味を持っているので樽を入れてその風味を上手に利用することが可能です。アロマティック品種の場合、樽香とブドウの香りが喧嘩してしまいますが、シャルドネ自体に強い香りが無いため、バランスの良い風味に仕上がることで知られています。
シャルドネで高級ワインを生産する産地などでは、新樽や古樽を使い分けでシャルドネを醸し、熟成させます。
シャルドネは、ステンレスタンクで醗酵させると透明感のある微発泡性の液体となりますが、樽を経るとクリーム色、黄金色になりま、熟成を経ていくうちにコハク色へと変化しています。若い頃の香りは柑橘様の香りですが、熟成をするとナッツ、クリーム、アンズなどの若い頃には見られなかった香りを呈するようになります。