フランスきっての銘醸地、ボルドー。
ワイン好きならば。誰しも一度はボルドーワインを飲んだことがあるのではないでしょうか。
誰もが知っているワイン産地あるあるが…、種類も値段も幅が広すぎて何を選べばいいのわからない!!という問題。
格付けシャトーは有名だし美味しいと思うけど、高いしなぁ…。1000円以下で売っているボルドーもあるけど、もうちょっと良いやつないかなぁ…。
そんな迷っているあなたに是非おすすめしたい、クリュ・ブルジョワ級のワイン!え、そんな呼称初めて聞いた!という方にぜひおすすめしたいワイン8選を交えて、徹底的にご紹介しちゃいます!
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クリュ・ブルジョワって何?
フランスワインが他の国のワイン制度と大きく違う点の一つに、「格付け制度」があります。
フランス人はとにかく格付けが大好き。ミシュランの三ツ星など、まさにそうですよね!
ボルドーの中でもメドックやサンテミリオン、ポムロール、ソーテルヌなど、地区によって様々な格付けが存在しています。
その中でも、近年ますます注目を集めている、シャトーの格付けの一つに「クリュ・ブルジョワ」と呼ばれるものがあります。
そもそも格付けシャトーって?
クリュ・ブルジョワの話をする前に、格付けシャトーに関して少し触れておきたいと思います。
皆様、有名なメドックの格付けはご存じでしょうか?1~5級まで存在し、1級には例えば「シャトー・マルゴー」や、「シャトー・ムートン・ロートシルト」などがいわゆる5大シャトーとして君臨しています。
この格付けは、1855年にパリ万博が開かれた際に制定されました。時の王ナポレオン三世の名を受け、当時のワインの取引価格に応じてボルドーの商工会議所が作成したものです。
実はこの格付け、制定直後にシャトー・カントメルルが加わったことと、1973年にムートンが1級に昇格したこと以外、なんと約170年前から変わっていないんです!
今では世界のワインを評価する一つの大きな基準ともなり、ゆるぎない確固たる地位を築いています。
そしてその下にランク付けされている位置づけの格が、クリュ・ブルジョワ級シャトーのワインと言えます。
波乱万丈!?クリュ・ブルジョワの歴史!
始まりは1930年代
もはや絶対的地位を誇るメドックの格付け。しかしながら、格付けに選ばれなかったシャトーも、指をくわえてそれを見ているわけにはいきません。
メドックの格付けに対抗する形で、ボルドー商工会議所とジロンド農業会議所が1932年に444シャトーを選んで発表したのが、「クリュ・ブルジョワ」という格付けです。
対象となるアペラシオンは、メドック、オー・メドック、リストラック、ムーリス、マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤック、サン・テステフの8アペラシオン。
出来る限りメドックのなかを広ーく募ったわけです。メドック格付けがグランクリュならば、自分たちはその次の位置づけとなる格付けワインとして親しまれました。
しかし実はこの格付けは、省庁の認可を受けた公式のものではありませんでした。さらに、その後の戦争でシャトーの数は激減してしまったのです。
このままではクリュ・ブルジョワそのものが無くなってしまうことを危惧したクリュ・ブルジョワ組合は、公式な格付けとして認めてもらえるように運動を開始。
その結果、2003年にフランス農務省から正式な格付けとして発表されたのです!
正式な格付けとして認定!と思いきや…
農務省の法令で定められた規定では、クリュ・ブルジョウは3カテゴリー。「クリュ・ブルジョワ」、「クリュ・ブルジョワ・シュペリュール」、「クリュ・ブルジョワ・エクセプショネル」の3つです。順に上位格付けです。
3つのカテゴリーで合わせて247の生産者が認定されました。
しかし喜びもつかの間でした。この2003年の選定の際に審査の公正性に疑問が呈されたのです。
一説には、247の中に選ばれなかったシャトーからの、反発もあったと言われています。
そしてなんと、2007年にボルドーの行政控訴院は、2003年に決定されたクリュ・ブルジョワとそれを承認した省令を無効とする判決を下したのです。
その後クリュ・ブルジョワ連盟は、3つのカテゴリーを廃止。これまでのような格付けではない「認証制度」として、新しくスタートをすることを決意したのです。そして一方で、クリュ・ブルジョワ格付けの復活を模索し、活動していました。
そして2018年、その成果が実を結びます!フランス・ボルドー・メドックのワイン生産者団体は、加盟するシャトーを、2018年ヴィンテージから3つのカテゴリーに格付けすると発表。2020年2月に、具体的なクリュ・ブルジョワ格付けシャトーが発表されました!
格付けは5年ごとに見直され、格付けされたシャトーは2018年ヴィンテージのワインから5年間、格付けをラベル表記できるようになったのです。
安くてしかも旨い!クリュ・ブルジョワワイン!
メドックの格付が、170年近くほぼ変わっていないのとは対照的に、クリュ・ブルジョワ級シャトーは、今後5年ごとに見直される規定です。
つまり、生産者がしっかりと努力をしてワインの質を保っていかないと、容赦なくその格付けから落とされてしまうわけです。
審査されるのはワインの品質だけではありません。シャトーの経営方針や、最近注目のサスティナビリティなども審査基準となっています。
そうした厳しい審査を通るために切磋琢磨して造るワインは、格付けシャトーに引けを取らない掘り出し物も多く、日本ではあまり知られていないシャトーでも本当に美味しいワインが数多くあるんです。
また、ほとんどが手頃な値段で手に入るのは、クリュ・ブルジョワ級ワインがまだあまり知られていないということ。そしてバイヤーが転売することを目的としての価格設定になっていないことが大きな理由です。
つまり、純粋にワインが好きな方に、適正な価格で質の良いワインを飲んでもらいたい生産者の思いが保たれているんですね。
おすすめクリュ・ブルジョワ級ワイン8選!
さあここからは、2020年の最新格付けにランクインしたシャトーのおすすめワインを8つご紹介!掘り出し物もあるかもしれませんよ!!
シャトー・オー・ベイザック / Chateau Haut Beyzac
ワイン大国フランスで最も歴史のあるワインガイド、ギドアシェット2020で1つ星を獲得!さらには、世界的ワイン評論家ジェームス・サックリングの評価サイト、サックリング.comで、92点を獲得したこのワイン。美味しいボルドーワインとしてのお墨付きを数々もらっているワインです。
熟したカシスやブラックベリー、ダークチェリーとフレッシュなプルーンなど、黒系果実の豊かな香り。 樽由来のヴァニラの香りと共に、ほのかにスパイスのニュアンスもあります。
柔らかな口当たりで、上質なタンニンは滑らかにこなれていて、きれいな酸味と果実味のバランスがとても良く取れています。アロマの広がりが長い余韻を際立たせる、オー・メドックらしい骨格のしっかりした、スケールの大きなワインです。
シャトー・シャルマイユ / Chateau Charmail
パーカー氏曰く、最近の質の高い努力が続けば、希少なシャトー・ソシアンド・マレと肩を並べるだろう、と評価されたオー・メドックの注目生産者。ボルドー左岸のワインにしては珍しくメルローが主体となっています。
2007年ヴィンテージでは制度自体の問題でクリュ・ブルジョワ表記はされていませんが、現在ではクリュ・ブルジョワに格付けされており、その評価も明確になりつつあります。隠れた名生産者の飲み頃バックヴィンテージです。
シャトー・トゥール・デュ・オー・ムーラン / Chateau Tour du Haut Moulin
所有していた畑の3分の2ほどを格付け3級シャトー・ラ・ラギューンに売り払った後でも、ワンランク上のクリュ・ブルジョワ「シュペリュール」に格付された。クリュ・ブルジョワで最も凝縮感があり、力強いワインを作り出す造り手です。
ヴィンテージによっては、メドック格付シャトーに食い込むほどの実力派として名を馳せ、バランスが良くしっかりとした、メドックらしいワインを造る。その凝縮感と筋肉質な性質から、開けてすぐはポテンシャルを発揮しないため、デカンタージュか抜栓してから時間を置くのをお勧めします。
時には格付シャトーに匹敵する実力派クリュ・ブルジョワ!本格派メドックワインが好きな方におすすめです。
シャトー・マレスカス / Chateau Malescasse
オー・メドック地区において1824年からワインを造る由緒あるシャトー・マレスカス。クリュ・ブルジョワの中でもトップクラスの実力を持つとされ、ワイン評論家からも称賛を送られる優良シャトーです。
1970年代の初めに植え替えられたブドウ畑は、マルゴーとサン・ジュリアンに挟まれるおー・メドック屈指の立地。このヴィンテージは、ワンランク上のクリュ・ブルジョワ・シュペリュールに昇格する前の2001年ですが、20年近くの熟成を経て柔らかく、複雑味のあるエレガントなワインに仕上がっています。
クリュ・ブルジョワ、トップクラスの実力を持つ優良シャトーの熟成バックヴィンテージです。
シャトー・ラ・コマンドリー / Chateau la Commanderie
シャトー・モンローズと、シャトー・コス・デストゥルネルのスーパーセカンドの2大巨頭を擁するサン・テステフ。クリュ・ブルジョワも多く軒を連ねることから、全体的にワインの完成度が高くハズレの少ないボルドー・メドック銘醸地として有名です。
そんなモンローズとコス・デストゥルネルと同様に、砂利の多い土壌条件の区画を持つ造り手が造るのが、シャトー・ラ・コマンドリー。黒い果実やスパイスの力強い香り、まろやかで豊かな味わいを持つサン・テステフらしいワインを造っています。
スーパーセカンドと同じ土壌条件のクリュ・ブルジョワ!サン・テステフらしさが格付シャトーより、気軽に味わえます。
シャトー・ラローズ・ペルガンソン / Chateau Larose Perganson
ロバート・パーカーも絶賛するラローズ・トラントドン。メドック屈指の銘醸地ポイヤックやサン・ジュリアンに隣接した恵まれた立地で、シャトー・ラトゥールに隣接してることも有名です。その上級キュヴェがラローズ・ペルガンソンです。
クリュ・ブルジョワの中でも格別の評価を受け続け、2020年3月にはクリュ・ブルジョワ・シュペリュールに格上げ。しかもこの2014ヴィンテージは、五つ星格付シンガポール航空のビジネスクラスで採用された実績があります。
良い土壌、良いブドウ、良い醸造家の三拍子そろっていながら、5000円以下で買えちゃう極上メドック・クリュ・ブルジョワです。
かつて第二次世界大戦で荒廃し、長い間放棄されていたシャトー・ロワラック。1987年に再建がはじまり、設備の改善や技術が復活。バランスがとれ、丸みを帯びた個性の際立つワインを造っています。
2015年は、ボルドー奇跡の年と呼ばれた、大当たり年!ダークチェリーのような色合い、丸みがありしっかりとした構造を感じ、タニックでありながらバランスにも優れています。特徴的な赤い果実やバニラ、トーストの香りがアクセントになった、リッチで深みのある味わいを楽しめる1本です。
シャトー・ラローズ・トラントドン / Chateau Larose Trintaudon
保険会社AGFが経営にあたり、メドック格付け第5級シャトーカマンサックのオーナー「エリゼ・フォルネ」氏がディレクターを務めるシャトー。
広さ172haというメドック最大級の畑はサンジュリアン、ポイヤックに面し、シャトーラトゥールに隣接しています。ロバートパーカー氏も「1990年代後半に豊かさが増し、より興味深いものとなった。」と注目。90年代は80点前後であったパーカーポイントも2009年には91点を獲得し、デキャンターでも4つ星を獲得するなど、近年はさらに評価を上げています
結びに
いかがでしたでしょうか。
広く親しまれるようになってから、格付け認証、廃止、そして近年の復活という紆余曲折を経て一段と注目が集まるクリュ・ブルジョワ級シャトー。
あまり人気が出すぎると値段がどんどん上がってしまうので、私としてはお気に入りの無名バンドを純粋に応援するファンの気持ちです。
このコラムを読んで頂いた方と一緒に、純粋にワインのクオリティを共有できればと思っております。
安くて旨いボルドーワインを探すことがあれば、是非一度、クリュ・ブルジョワ格付のワインを候補に入れてみてはいかがでしょうか?
あなたにピッタリの掘り出し物お宝ワインが、きっと見つかるはずです。