メルローは、フランスのボルドー地方を発祥地とする赤ワイン用ブドウ品種。赤ワイン品種としてはカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールと並ぶ知名度を誇ります。フランス全土において最も栽培されている赤ワイン品種です。
メルローの起源と歴史
フランスのボルドー地方原産。近年のDNA解析によってカベルネ・フランが父、この地方の地場品種「マドレーヌ・ノワール・デ・シャラント」が母である事が判明しています。父を通してカベルネ・ソーヴィニヨンやカルメネールと兄弟。母親の「マドレーヌ・ノワール・デ・シャラント」はマルベックの親でもあり、メルローは母を通してマルベックとも兄弟という事がわかっています。
中程度の大きさの粒と大きめの房を持ちます。早熟で糖度が上がりやすく、このブドウから造られたワインは果実味たっぷりでふくよかな味わいのワインに仕上がります。病気にも比較的強く、多産、さらに産地をあまり選ばないため、世界中のワイン生産地で栽培されています。
メルローの栽培適地
メルローは気候や土壌に比較的寛容な品種ですが、水分が充分に供給されることを必要とし、夏の水分不足は避けなければならない品種です。このため粘土が混ざった石灰質で充分に深さがあり、夏場に水分を供給することのできる保水性の高い土壌が向いています。やせていて乾燥した土壌では果実の成長は制約を受けてしまいます。
早熟のため、同じボルドー品種のカベルネ・ソーヴィニヨンよりも寒いエリアでの栽培が可能です。
メルローの味わいの特徴
メルローはしっかりとした色を持ち、丸みがあり、力強く、アルコール度が高く、酸味が少なめのワインを造り出します。タンニンはかなり滑らかで、高い熟成能力も持っています。
カベルネ・ソーヴィニョンの濃い色に比べるとやや朱色を帯び、プルーンのような熟した黒い果物の香りがします。カベルネ・ソーヴィニヨンほどタンニンや酸は主張が強くなく、芳醇でまろやかな味わいでです。
アロマは果実が中心で、特にレッドチェリー・イチゴ・スグリのような赤い果実を多く感じます。収穫年の天候によってはジャムのような甘いニュアンスも現れます。 生産地やヴィンテージ次第でプルーンやスミレ・甘いスパイス・皮革・毛皮のような複雑なニュアンスのアロマも感じられます。
メルローのワインには赤ワインに求められる構成要素がバランス良く、かつしっかりと存在しています。だからこそフランスで最も栽培され、世界中に普及したのです。
肉厚な果肉を持つ濃い色の果実の香りや、甘いスパイス。強すぎない酸と豊かな果実味、包容力のあるやわらかなタンニン。同族のカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランの中では最も植物系のフレーバーが少なく、果実味中心の親しみやすい味わいです。
個性が特出した赤ワインやタンニンの強い渋い赤ワインに苦手意識を持たれる方にもおいしく飲んでいただけるブドウ品種です。
メルローの生産地ごとの特徴
フランス
ボルドーにおいてジロンド川左岸地区のメドック地区・グラーヴ地区などではカベルネ・ソーヴィニョンが主要品種ですが、ドルドーニュ川右岸のサンテミリオン、ポムロールなどではメルローが主体です。メルローーが比較的重い石灰質の土壌を好むためで、ジロンド川左岸地区でも土が比較的重いところではメルローを多くブレンドするシャトーもあります。
A.O.C.サン・テミリオンやA.O.C.ポムロールといった地区のワインでは、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも多く配合されます。ポムロールの最高級ワインであるシャトー・ペトリュスはメルローのみを使用して醸造され、ブレンドが基本のボルドー地方では異色の存在です。
南部のラングドック=ルシヨンでは、1980年前後からヴァン・ド・ペイクラスのワインでメルローを使ったセパージュワインが多く造られるようになり、現在ではボルドーのシャトーものに負けない優れたワインが現われています。
イタリア
ほぼ全域にわたり栽培されています。ヴェネト州ではIGT規格(地理的表示保護ワイン)のワインが多く作られています。
日本
日本は基本的に高温多湿な気候条件のため、カベルネ・ソーヴィニョンやピノ・ノワールの栽培には適していません。多くの水分供給が必要なメルローは日本の気候に合っており、山梨県や長野県などでメルローの栽培は成功を収め、優れたワインが造られています。
長野県では塩尻市桔梗ヶ原地区シャトー・メルシャンが特に有名で、このシャトーでは1976年からメルローの植栽をスタートし、1985年の初ヴィンテージのリリース以来「桔梗ヶ原メルロー」は日本を代表する赤ワインの一つとして評価されてきました。近年では国際的コンクールでのメダル獲得、ブラインド・テイスティングの高得点など大きな成果を獲得しています。
その他の地域
アメリカ合衆国、オーストラリア、ニュージーランドでも広く栽培されています。
メルローのマリアージュ
ふくよかで包容力のある品種ですから、煮込み料理などふっくらとした質感の料理がワインの美味しさを活かします。他の赤ワイン品種と比較してワインを構成する要素が大変ニュートラルなので、幅広いタイプの料理に合わせられ、赤ワインの選択肢が限られているシーンでは非常に心強い存在です。
また、料理はもちろん、飲み手を選ばない寛容さは、出席者の多い会食などでその包容力を発揮してくれます。