イタリア国内のブドウ畑11%を占めるサンジョヴェーゼは、バルベーラとともにイタリアでは最も広範囲において栽培されているブドウの品種です。北はロマーニャ地方から、南のカラーブリア州にいたるまで、イタリア半島にはサンジョヴェーゼのブドウ畑が広がっています。
とくに、トスカーナ州ではサンジョヴェーゼを原料とする高名なワインが数多く作られています。主なワインをあげてみると、以下のようになります。
- カルミニャーノ
- ロッソ・ピチェーノ・スーペリオーレ
- キャンティおよびキャンティ・クラッシコ
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
- ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ
- モンテファルコ・ロッソ
- サンジョヴェーゼ・ディ・ロマーニャ
- モレッリーノ・ディ・スカンサーノ
特に、キャンティやブルネッロと並んでトスカーナのワインの代名詞となった「スーパータスカン」は、サンジョヴェーゼと国際的にも有名な他種のブドウとのブレンドで知られています。このように、サンジョヴェーゼを抜きには語れない高名なワインがイタリアには多いのです。
ワイン醸造学の大家ジャコモ・タキスは、「フランスにはカベルネが、イタリアにはサンジョヴェーゼが存在する」と語り、サンジョヴェーゼがイタリアのワイン製造の歴史の根幹にあることを表現しました。
現在、イタリア国内には8万ヘクタールにおよぶサンジョヴェーゼのブドウ畑があるといわれています。最も多いトスカーナ州は全体の64%を占め、エミーリア・ロマーニャ州が15%、ウンブリア州20%、マルケ州が21%となっています。
1980年代に一度生産量が低下したものの、90年代に栽培技術の改良に伴い栽培が持ち直しました。
サンジョヴェーゼの歴史
サンジョヴェーゼは、古代ローマ時代にはラテン語で「SANGUIS IOVIS」、つまり「ユピテルの血」と呼ばれていました。言伝えによれば、ロマーニャ地方原産のサンジョヴェーゼは、古代ローマ人が帝国中に敷設したローマ街道によって南下、半島中に栽培が普及したといわれていますがこれは推測の域を出ていません。
サンジョヴェーゼについての信用するに足る詳細な著述が登場するのは、16世紀のこと。農学者のジョヴァン・ヴェットーリオ・ソデリーニが、「サンジョヴェーゼはその安定した生産性から、非常に重要なブドウである」と述べています。
その名前の由来については古代ローマ時代からの伝統であるという説のほかに、サンジョヴェーゼの起源がアレッツォ近郊のサン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノであったためという説、ロマーニャのモンテ・ジョーヴェを起源とするためという説、あるいはサンジョヴェーゼの発芽が「洗礼者ヨハネ ( イタリア語ではジョヴァンニ ) 」の祭日である6月24日前後であるから、など諸説があります。
近年の遺伝学的研究によると、ロマーニャ地方とティレニア海沿岸に古くから普及したサンジョヴェーゼは、実は南イタリアのカンパーニア州やカラーブリア州に起源を持つ「パルミーニア・ミラベッラ」と「カラブレーゼ・モンテヌオーヴォ」との強い関連性が明らかになっています。この2種の古代のブドウからは、10種の品種が生まれたといわれており、その直系うちのひとつがトスカーナに普及した「チリエジョーロ」です。チリエジョーロは栽培が激減しましたが、かつては現在のサンジョヴェーゼやほかのワインとブレンドされてワインの原料となっていました。
サンジョヴェーゼの特徴
私たちが「サンジョヴェーゼ」と呼ぶブドウは、実は何世紀にもわたって異なった地域でその特徴を育んでおり、その特有性によって生産されるワインの味も変化しています。
サンジョヴェーゼは特にトスカーナの土壌との相性が良いことで有名です。
トスカーナ州では、1906年に、農学者ジローラモ・モロンによってこの区別がされたサンジョヴェーゼ・グロッソとサンジョヴェーゼ・ピッコロという2種が存在します。サンジョヴェーゼ・グロッソは、モンタルチーノでは「ブルネッロ」、モンテプルチャーノでは「プルーニョロ・ジェンティーレ」という別名があります。
また、サンジョヴェーゼ後から強い生命力を活かして、さまざまなワイナリーで土壌や日当たりに応じたクローンも作られています。これは、ワインの質の向上と生産の安定性に大きな貢献をしており、サンジョヴェーゼはまさにワイン生産者にとっては大変頼りになるブドウの品種といえるのです。
そして、サンジョヴェーゼは比較的収穫時期が遅い品種です。また、良好な順応性と生産性で知られています。
葉の大きさは中くらい、三裂か五裂の形状で、緑はそれほど濃くありません。ブドウの粒も中くらいで卵の形をしています。ブドウの皮は、黒に近いスミレ色で蝋分が豊富です。多種の赤いブドウと同様、粘土石灰質の土壌でよく育ちます。
また、モンタルチーノなど高名なワインの長寿を生み出すともいわれています。それほど高価ではないワインの原料として使用される場合は、栽培はそれほど難しくないというのも数多くのワインの原料となっている理由です。
サンジョヴェーゼのワインの味わいとは
サンジョヴェーゼを原料に作られるワインは、濃縮感があり時間の経過とともに成熟していく深みがあります。また、温度が高い年は酸性度とタンニンの調整が難しく、熟練の技術を要します。
香りは、プラム、サクランボ、クロイチゴ、成熟した木々、バニラ、カカオ、コーヒーなどが特徴です。