【ソムリエ対策】エクセレンス取得者が語る、合格必勝法とは? ~筆記試験編~

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J.S.Aソムリエ/ワインエキスパートの上位資格となる「ソムリエ・エクセレンス/ワインエキスパート・エクセレンス」。旧名「シニアソムリエ/シニアワインエキスパート」の方が聞き馴染みがあるかもしれません。

2015年あたりから急激に難しくなり、昨年2019年のソムリエ・エクセレンスの合格率は、10%を切った8.2%という驚愕の数字に!

今や超難関試験となったエクセレンスですが、実は筆者もこの試験に挑戦した一人です。

筆者は、2017年に受験し一次試験は突破したものの、二次は不合格。2018年に二次試験からの受験で、二次三次を突破し、2年がかりでなんとかソムリエ・エクセレンス(当時はシニアソムリエ)に合格することが出来ました。

2018年と言えば、一次試験の筆記が全問記述式になり、二次試験のテイスティングも全問フルコメントになるなど、試験形式がガラリと変わった年で、受験者のみならず各方面で物議を醸しました。

そんな変革期の中で受験した筆者が、最も苦労した事は「情報収集」でした。

何せ毎年数十名しか合格しないので、成功体験を聞くこともできず、ネットで検索しても有力な必勝法や対策が公開されていませんでした。まるで暗闇の中を手探りで走り続けているような、そんな受験生活だったように思います。

そんな経験をしたからこそ、自分の成功事例や失敗談を公開することで、これからソムリエ・エクセレンス受験される方のお力になればと思い、記事にすることにしました。

今回は、一次試験(筆記試験)編です。

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ソムリエ・エクセレンス試験の「対策」「必勝法」とは?

ソムリエ・エクセレンス試験の対策や必勝法はなんですか?と聞かれることがあります。この質問、すごく困るのですが、正直ないんです。

特に一次試験に関しては。

「ただひたすら教本を隅から隅まで覚える」のみです。

決して意地悪をしたい訳でも、出し惜しみしている訳でもなく、合格するための「コツ」や「近道」などはなかったということです。

こんな事を言ったら、せっかくやる気になったのに盛り下がってしまうかもしれませんが、一つだけ希望がもてることがあるとすれば、「私でも受かった」ということでしょうか。

というのも、筆者は勉強があまり得意ではありません。要領が悪く、人一倍覚えるのに時間がかかる方だと思います。

受験してみようと思い立ったのが2017年1月。

手はじめにソムリエ協会が発行している機関誌の「合格者の声」を読んだのですが、その体験談を読めば読むほど、自分はどれだけ難しい山を登ろうとしているのかと恐れおののきました。

試しに過去問を説いてみようと挑戦した時は、1、2問しか答えられない有様でした。

またある時は、受験対策講座に参加してみたら、受験のプロなる猛者ばかりが揃っていて、こんな人たちと戦っていけるわけがないと挫けました。

もはや自分がこの試験に挑もうとしていること自体恥ずかしいのでは・・・と思ってしまくらいに何度も挫折しかけました。

スタート時点ではそのくらい、「ソムリエ・エクセレンス合格」は遠い存在だった様に思います。

そんな筆者でも、なんとか「合格」まで辿り着くことができたのです。

なので皆さんも大丈夫。諦めずに、挑戦しようと思った気持ちを大事にしてほしいです。

ソムリエ・エクセレンス対策その① とことん調査する

それでは、筆者が実際に受験合格のために取り組んできたことを紹介したいと思います。

まずは敵を知ることが大事。どんな試験なのかを出来る限り調べることにしました。

ソムリエ協会HPを見る

開催日時、試験内容、受験資格、合格率などは、ソムリエ協会のHPに掲載されている内容を事細かくチェックしました。

[2020年度 J.S.A.ソムリエ・エクセレンス/J.S.A.ワインエキスパート・エクセレンス呼称資格認定試験要項]

募集要項の中に「※筆記試験には一部英語の設問もございます。」という、かなり気になる一文があります。でもこれは気にする必要はありません。英文自体は中学生レベルなので冷静になれば理解できますし、今更英語の勉強なんてしている暇もありません。

~例:英語の設問~

試験免除制度について。筆者の様に一次試験だけしか通過しなかった場合でも、翌3年間は一次免除で二次から受験できます。

エクセレンスの鬼門は、やはり一次の「筆記試験」です。一次→二次が最も合格率が低いため、ここが突破できなければ、どんなに二次の勉強をしたとしても全く意味がありません。逆に一次さえ突破してしまえば、チャンスは4度あります。

ワインスクールでは一次対策講座の後、テイスティングを実施するところが多いですが、筆者は一次突破に焦点を当てていたので、テイスティングの時間が惜しくて堪りませんでした。おまけにテイスティングすると、眠くなって後に勉強が捗りません。

二次に落ちた筆者が言うのもなんですが、ちゃんと情報収集ができていれば二次対策は一次が終わった後でも間に合います。

筆者の二次の失敗は、テイスティング能力の良し悪しよりも、情報収集の甘さにより有効な対策を講じず、ただ闇雲に色々な種類のワインをテイスティングをしていた事にあると思っています。詳しくは第二回で説明しますが、テイスティング対策は沢山の種類飲めばいい訳ではありません。そして飲まずにする勉強も大事になってきます。

また、二次のテイスティングでは品種名や国名、原産地名は、全て原語で書く必要があります。これは一次試験でも覚えなければならない事なので、一次の勉強の時に完璧に書けるようにしておきましょう。

そして最大のポイントは、「基本技術フォローアップセミナー」です。

このセミナーはかなり重要で、試験問題のうちフォローアップセミナーで説明した内容が4割、教本3割、その他1割と言われている程。

合格ラインがだいたい6割(もしかしたらそれ以下)なので、フォローアップセミナーだけで合格ラインの3分の2を占めることになります。

つまり絶対参加した方がいいです!

過去問をやってみる

最新の過去問を説くことは傾向を知る上でも、そして自分の実力を知る上でも重要なことだと思います。

ただ数年前までは毎年、協会から試験に出題された内容が公開されていましたが、2018年、2019年は公開されていません。

そんなお困りの方のために、なんと善意で(?)試験問題をブログにアップしている方がいらっしゃいます!リンクを貼ることはできないのですが、「シニアソムリエ 対策」で検索してみてください。

説いて分かると思いますが、超難問ばかりです。でもそう思っていいんです。「超難関の山にこれから登るんだ!」という決意をそこで固めて下さい。

本当に全て記述式です。おまけに設問の半分は「原語で答えなさい」となっています。もちろんスペルミスも許されません。

例えば、アルバリーニョの「Albariño」は、「~」も漏れなく書かなければなりません。

出題者の意図を読み解く

出題者(つまりソムリエ協会)は、どうやらエクセレンスを世界大会や日本大会のコンクール水準の試験にしていきたいと考えてるそうです。

そのため、教本の知識だけでなく、世界の動きやトレンドを押さえておく必要があります。そういった最新情報を入手できるのがフォローアップセミナーです。

こういった出題者の意図を読み解くと、一次試験の問題で新しく新設されたワイン産地や法律など、最新情報についての問題が多く出題されている事が理解できます。

また、物議を醸した試験形式の大幅変更の一件も、何があっても動じない対応力が問われているのではないか、と筆者は前向きに捉えるようにしていました。

ソムリエ・エクセレンス対策その② スケジュールを立てる

試験開催日等をチェックしたら、次にいつまでに何をするのかを計画しました。

正直覚える量が多すぎて、教本を一周したくらいでは全く頭に入っていませんでした。早い段階で教本を一通り暗記して、何周もして記憶を定着させるという作業をしました。

テーマごとに「教本を読み込む」→「要点をまとめる」→「暗記する」→「問題を説く」を1セットとし、全ページ達成を少なくとも7月のフォローアップセミナーまでに完了させるよう進めていきました。

なぜフォローアップセミナーまでに一通り終わらせておきたいかというと、セミナーの情報量が膨大でセミナー資料だけで100ページにもなるからです。

おまけに4割もセミナーから出題されるのですから、セミナーの内容を覚える時間をしっかりと確保した方がいいのです。

勉強をし始めると分かるのですが、本当に時間が足りません。

筆者の大体の勉強スケジュールを紹介すると・・・

平日は、いつもより1時間半早く起きて勉強し、電車の中、駅から会社までの時間、休憩時間、そして帰宅後から眠くなるまでの時間勉強していました。それでも一日平均して4~5時間くらいです。

休みの日は一日中勉強したいところですが、筆者の場合、集中力が切れるのがだいたい3時間おきだったので、午前中3時間、午後3時間、夕食後3時間と時間を区切って勉強していました。

それでも時間が足らなくなり、試験の1ヶ月前は主人に「試験までは家事は一切しません!」と宣言をした程です。

仕事をしている中でも何とか勉強時間を捻出して、効率よく勉強できるかを色々と工夫していました。

これはあまり参考にはならない例かと思いますが、筆者の場合、駅から会社までの距離が長く移動時間がもったいないと思いました。そこで、自転車通勤を歩きに変え、暗記したい単語を朝一で読み上げその声を録音し、往復の歩き時間に聞きながら暗記していました。少なくともそれで往復1時間は集中して暗記できる時間をつくる事に成功しました。

ソムリエ・エクセレンス対策その③ 勉強方法、おすすめの参考書・問題集

筆者の勉強方法はざっくり以下のとおりです。

縦軸と横軸でまとめ、暗記する

縦軸は、国やジャンル(種類飲料概論など)といった各テーマのことです。

テーマ毎の歴史、産地(原産地名・地区名)、主要品種、土壌、気候、ワイン法、そして最新情報などをノートにまとめ暗記しました。

特に「産地」と「代表品種」と「位置」はあわせてに覚えるようにしていました。教本の地図は全てコピーし、原語で産地名と代表品種を書き込み、イメージと単語をセットで暗記する、といった形です。

地図を思い浮かべた時に、場所と品種と産地名が原語で出てくるようになればOKです。この特訓は、後々の二次テイスティングでも役立ちますので是非行ってみて下さい。

横軸は、シノニムや交配品種も含めた全品種名と関連国、各国の表示規定(産地、品種、収穫年表示ができる%)、各国の残糖量の表示、各ワインの法定熟成期間などを横軸でまとめ、暗記していました。

フランスやイタリアなど馴染みのある国なら問題ないのですが、新しい教本ではブルガリアやスロヴェニア、ルーマニアなど市場には殆ど出回らない国もあり、品種やワイン法などがゴチャゴチャになってくるので、頭の中を整理するためにも横軸でまとめました。

原語で書ける対策を!

ソムリエ試験の時のように選択式ではないので、山勘は通用しません。試験中「名前は分かるのに原語で書けない!」という悔しい気持ちにならないように、覚える単語は全て原語で書く練習をしましょう。

教本全てを原語で覚える事はほぼ不可能ですが、教本を繰り返し読んでいくうちに何が重要なのかも分かってきます。そんな中でも以下の単語は繰り返し暗記していました。

・各国のワイン法の格付け名(特に新設されたばかりの格付け名は要チェック)
・教本の中で原語で書かれている人物名や団体(特に新設されたばかりの団体や世界コンクール受賞者、注目を浴びている人は要チェック)
・教本の中で原語で書かれている特徴的な栽培方法、醸造方法、地形名、土壌、気候名
・代表的な生産者名や代表的なワイン(ブルゴーニュのモノポールやシャンパーニュのシャンパーニュのプレステージ、各国の超有名ワインとワイナリー名、ボルドー格付けのセカンドワインなど)
・郷土料理名(写真・地域名もあわせて覚える)

また、日々の仕事の中で意識的に原語を使うよう心がけました。品種や産地などをメモする時や、パソコンに入力する時も試験勉強のつもりで全て原語で書くようにしていました。

超難問!?この写真の人物は誰でしょう?

過去問に必ず1問はある、顔写真問題。

「え?誰これ・・・」と一瞬手が止まってしまう、全く見覚えのない人物。

教本にさえ載っていないので、一見超難問のように思えますが、実は毎年フォローアップセミナーで紹介されている人物のうちの誰かです。

この設問に関しては、フォローアップセミナーで紹介された人物は全て写真を撮るなどして、後で対策した方がいいと思います。

おすすめ参考書・問題集

受験者数が少ないためか、エクセレンス対応の参考書の種類が極端に少ないように思います。

また、覚える量が膨大なので沢山参考書を持っていても手に負えないと思っていたので、筆者はこの一冊に絞りました。

「児島隼人CWE ワインの問題集」

基本的には、自分でまとめたノートを暗記し、復習を兼ねてこの問題集を使っていました。

基本技術フォローアップセミナーでの出来事

再三お伝えした通り、基本技術フォローアップセミナーは絶対に参加した方がいいです。ちなみに筆者は、最新情報や有益な情報が得られるので、合格した今でも毎年参加しています。

この経験から、受験者の方には絶対に用意した方がいいアイテムをお伝えします。

それは「スマホのポータブル充電器」です。

なぜ必要かというと、かなり写真を撮るからです。

申し込みをすると事前にセミナーの資料がメールで送られてくるので、それを出力して持参します。

しかし、資料はそれだけではないのです。会場のスクリーンに映し出されるスライドは、手元の資料にないスライドが何枚も映されます。そしてそれが意外と一番大事な内容だったりするのです。

なので、殆どの人がその写真を撮ることになるのですが、何時間も撮影するため午後にはスマホの充電器がなくなってしまい大ピンチになるのです。

かくゆう筆者もそんなトラブルに見舞われた一人で、お昼休憩にコンビニへ直行し、充電器を買うハメに。。。しかも会場からコンビニまでがかなり遠い。(東京の場合)

筆者だけではなかったようで、同じコンビニで充電器を購入している人が複数いて、皆考えることは一緒だな、とやけに親近感を覚えました。

という事で、ポータブル充電器も絶対に忘れないように!

最後に・・・

ソムリエ・エクセレンス試験に挑んだ2年間は意義のある2年間でしたが、犠牲にしてきたことも多くありました。資格だけ欲しいのなら、あまりにも時間とお金がかかるので、割に合わないとも思いました。

これは一個人の意見ですが、エキスパート受験ではなく、ソムリエ受験される方に限っての事ですが、ソムリエの肩書が欲しくて受験をするのなら受験しない方がいいと思います。

ソムリエの資格は取って終了ではないからです。歴代の先輩方から口酸っぱく言われてきた、

「ソムリエは、資格を取ってからがスタートだ。」

という言葉。

まさにその通りで、ソムリエバッジを付けた瞬間から、お客様の見る目が変わります。それまでは、お客様に質問された事に上手く返答できなくても許されていましたが、バッジを付けた瞬間から許されなくなります。

ソムリエ資格に合格したばかりの頃、筆者はろくなサーヴィスができず、「バッジを付けてお客様の前に立つな」と店長に怒られ、しばらくワインに触らせてもらえない時期がありました。それはとても辛い経験でしたが、今はそれが糧になっていますし、転職した今でもその店長には良くしてもらっています。

たまに、ソムリエ資格を取ってすぐにお店を辞めてしまった、という方の話を聞くととても残念な気持ちになります。それでは資格をとった意味もないですし、結局ソムリエにもなれていないのです。

ソムリエバッジの重み、責任を日々感じながら、勉強し続けること。失敗することも沢山ありますが、それでもお客様の前に立ち経験を積む以外、ソムリエにはなれないと思っています。

筆者はソムリエ試験に合格して5年たった時にエクセレンスの受験を決意しました。その理由は「この5年間の成長を試したかった」からです。

「ソムリエと言えるレベルに達しているのだろうか」という自問自答を繰り返しながら働いていました。なので、胸を張ってソムリエと言える証明のために「ソムリエ・エクセレンスの合格」を目指しました。

今はまだ「ソムリエ・エクセレンス」のスタートラインにたったばかり。この称号に恥じぬように、日々精進し、一人でも多くのお客様にワインの魅力を伝えていきたいです。

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