【ソムリエ対策】エクセレンス取得者が語る、合格必勝法とは? ~テイスティング編②~

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前回はテイスティングの勉強法についてご紹介しました。

おさらいとなりますが、テイスティングで重要なことは、

 

ポイント

・テイスティング試験は品種当てゲームではない

・感覚だけに頼らず、脳を使って分析すること

・テイスティングは量よりも質が大事

・テイスティングフォームを確立すること

 

でした。

これらのポイントを踏まえた上で、ソムリエ・エクセレンス試験に向けて、筆者はどんな対策をしたのか、テイスティング・試験対策編をご紹介していきたいと思います!

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2018年ソムリエ・エクセレンスのテイスティング試験の体験談

まずはじめに、筆者が体験したテイスティング試験でのショッキングな出来事からご紹介しましょう。

ソムリエ・エクセレンスのテイスティング試験は、2018年から出題形式が大きく変更になりました。

2017年までは、ソムリエ試験と同様で外観・香り・味わいなどはマークシートで、品種や産地のところだけ記述だったのですが、2018年は予告なしに全てが記述式となったのです。

筆者が受験したのも2018年でしたが、試験開始とともに、会場の空気が一気に凍りついたのを覚えています。

スクールや受験生の中では、「記述式のフルコメントが一部出題されるのかもしれない・・・」と噂されていたので、幸い筆者は記述の練習もしていましたが、まさか全問記述になるとは思っていませんでした。

2018年のテイスティング試験内容は以下の通りです。

試験時間:40分

ワインアイテム:3アイテム

試験用紙:各400字のマス目

 

①白:オーストラリア Semillon 2011年

【設問】
・テイスティングした後に、合う料理を提案し、その理由も記述しなさい。
・生産国、生産地域、アペラシオン、品種、ヴィンテージ

②ロゼ:フランス Pinot Noir 2016年

【設問】
・テイスティングした後に、このワインの製法について記述しなさい。
・生産国、生産地域、アペラシオン、品種、ヴィンテージ

③赤:スペイン Tempranillo 2013年

【設問】
・フルコメントを記述しなさい。
・生産国、生産地域、アペラシオン、品種、ヴィンテージ

(※2019年二次試験も品種は違えど、同じ形式だったようです。)

この問題用紙を見た筆者も、もれなく動揺しまくりました。そして、いくつものアクシデントに見舞われることになりました。

1.時間配分

この試験で求められたのは、スピードでした。

受験者の間でも「とにかく時間が足りなかった」「400文字埋められなかった」という声が多く聞かれました。

試験で筆者がまずしたことは、全体像を把握すべく全ページをめくり、設問1~3の問題を確認。そして時間配分をしました。1問あたり13分、テイスティングしたり品種で悩む事を考えると、1問10分でマス目を埋める必要があると考えました。

もともと筆者は、テイスティング試験対策のために、フルコメントを1アイテムあたり10分で書けるように練習していました。

この練習はワインを用意せず、とにかく10分間でフルコメントを早く書く、という練習です。自分でお題を出して、10分タイマーをかけ、外観、香り、味わい、提供グラス、適正温度、そしてマリアージュまでフォームに従ってコメントを書いていきます。

普段PCやスマホばかり使っているので、意外と早く文字を書くのは大変で、始めのうちは、一日に3アイテムも書けば手首が痛くなっていました。(ちなみに、試験までの1ヶ月間で、書いたテイスティングコメントはノート一冊分になりました。)

~テイスティングコメント一例~

これが、以前の記事でもお伝えした「飲まないでするテイスティング練習」です。

この練習法が功を奏し、試験中は「自分は10分でフルコメントが書ける!」と自信を持つ事ができたので、出題形式の大幅変更というビッグサプライズにも比較的冷静に対応でき、無事に全マス埋めることが出来ました。

400文字のうち、何文字書けていれば合格ラインなのかは分かりませんが、少なくとも半分以上、できれば各ワイン3分の2は書けた方がいいと思います。

2.マス目問題

マス目に文字を書くなんて、いつぶりでしょうか。恐らく小学生の読書感想文以来ではないかと思います。このマス目が非常に厄介なんです。

なぜならば、一度書き進めたら後には戻れないからです。書き損じがあった場合、マス目なので付け足すとしたらそれまで書いていた文章を全部消さなければなりません。テイスティング試験は時間との戦いなので、軌道修正する時間はないのです。

ここで重要になってくるのが、「テイスティングフォームを確立させること」です。

どんなワインでも同じ順番で、同じ項目についてテイスティングコメントを書ける様に練習する事で、書き損じを避けることができます。ソムリエ協会が問題用紙をマス目にした理由のひとつがコレではないかと思っています。

とは言え、筆者の場合は試験勉強中、文字数やマス目までは意識して練習していなかったので、試験中コメントを書きながら、果たして文字が埋まるのだろうか・・・逆に文字オーバーしないか・・・など、不安にかられながら書き進めていたの覚えています。

なので皆さんは、原稿用紙やジャ◯ニカ学習帳などマス目のある紙を用意して、フルコメントを書く練習をされて方がよいと思います。(ちなみに筆者が受験した時の試験用紙は「横書き」のマス目でした。)

3.全問フルコメントで書くべきだったのか?

これも試験後、受験仲間の間で議論になりました。

①や②の設問ではフルコメントの記述は求められていません。しかしテイスティングを行っている以上、セオリーに従ってフォーム通りにフルコメントを書いた上で、各設問のマリアージュやワインの製法について記述すべきだったのではないか、いや、フルコメントは割愛して設問の内容だけ記述すればよかったのではないか。

結果、正解は分かりません。このテイスティング試験のソムリエ協会からの正式な発表は、「産地・品種・ヴィンテージ」だけで、コメントの回答例は発表されていないのです。

合格者の中でも、簡略バージョンのフルコメントと設問について両方答えた人もいれば、設問の内容にしか答えなかった人もいたようです。

ちなみに、筆者は設問だけでは絶対に文字が埋まらないと判断したので、①②に関してはテイスティングコメントをやや短縮しつつ、設問の情報を厚めに書いて、無事合格しました。

4.テイスティング試験でも想像以上に落とされる

2017年までは、1次の筆記試験の難易度は極めて高いが、筆記さえ突破すれば2次のテイスティングは高い確率で合格できる、という認識でした。

しかし、2018年のテイスティング試験では、かなりの人数が落とされています。ある受験仲間の試算では、2次試験を受験した50名中、通過者は24名だったそうです。

2分の1、、、つまりテイスティング試験も全く油断できないということです。

ちなみに、2次試験のテイスティングは午前中に行われ、2時間近くの昼休憩を挟んでから(その間テイスティング試験の採点が行われる)、結果発表が会場前に張り出されます。そして不合格者は退場し、合格者のみ午後からの3次実技に進む、という残酷なスケジュールです。

結果を待つ昼休憩も気が気ではありません。合格しているかも分からない3次のためにノートを開いて予習するも、全く手につかないほどに緊張していました。

そんな極度の緊張を強いられる、ソムリエ・エクセレンス試験。正直もう二度と経験したくないな、と思いました。

テイスティング試験の有効な対策は?

以上の体験を踏まえた上で、筆者が思う対策をいくつかご紹介したいと思います。

1.品種・産地・国名は原語で

以前の記事でもお話しましたが、「品種」「産地」「国名」を原語で書けるようにしておきましょう。

せっかく品種や産地が分かっていたのに、スペルミスをしてしまったら悔やんでも悔やみきれません。

1次試験の合格通知から2次試験までは、それほど時間がありませんので、原語書きは筆記試験の勉強の時から繰り返し勉強するとよいでしょう。

語学を勉強する時もそうですが、原語を覚える作業は、繰り返し練習しなければ脳に定着しません。

筆者は職業柄、原語で読み書きする業務があったので、パソコンで入力する際はコピペせずにあえて原語で直入力したり、メモをとる際は原語書きするなど、日々の生活の中で意識的に原語書きの勉強をしていました。

また、原語を読み書きできることは、決して試験勉強のためだけでなく、ソムリエとして仕事をしていく上で必要なスキルです。

例えば、私たちソムリエが「ボーヌ・ロマネ」と表記したら恥ずかしいですよね。

Vosne-Romanéeは「ヴォーヌ・ロマネ」、Beauneは「ボーヌ」と日本語で表記しますが、原語を知っているからこそ、この様に表記しなければならない事が分かります。

試験のために、というよりも試験の勉強が直接実務に役立つので、原語学習はとても重要だと思っています。

ちなみに、国名は原語で書くべきか?そもそもで原語とは何か?英語じゃ駄目なのか??という疑問が受験者の中でもありましたが、2018年の試験では国名の原語指定はありませんでした。

ですが、いつ出題形式が変わるか分からないのがソムリエ協会です。一応筆者は、教本の目次に載っている「国際ソムリエ協会の表記」と「英語表記」で書けるようにしていました。

また、出題される可能性の高い産地や品種、関連する郷土料理などを、原語で書き出しておくと整理しやすいです。

~筆者がまとめたノートの一例~

[出題されそうな産地 ドラジェ取り扱いワイン]
シャンパーニュ Champagne
アルザス Alsace
ブルゴーニュ Bourgogne
ジュラ Jura
サヴォワ Savoie
ローヌ Rhône
プロヴァンス Provence
ラングドック・ルーション Languedoc-Roussillon
ボルドー Bordeaux
ロワール Loire
日本 Japan
ドイツ Germany
アルゼンチン Argentine
オーストラリア Australia
オーストリア Austria
チリ Chile
スペイン Spain
アメリカ United States
ジョージア(グルジア)Georgia
ギリシャ Greece
イタリア Italy
ニュージーランド New Zealand
ポルトガル Portugal
イギリス United Kingdom
南アフリカ Republic of South Africa

2.飲むだけでなく書く練習を

これは、再三お伝えしているので説明不要かと思いますが、今後数年はテイスティング試験も全問記述だと思われますので、時間内に書ける練習は必須だと思います。

3.ワイン産地と品種はセットに、世界地図を頭の中に思い描く

代表的なワイン産地名とそれぞれの産地を代表する品種、そのワインの特徴、産地の地形や場所をセットで覚えることが重要です。

テイスティングする際は、頭の中に世界地図を浮かべ、まずは「産地の候補」を考えます。

候補となる産地にはどんな特徴がありますか?

ブドウは主にどんな品種が植えられていますか?

どの様な醸造方法をしていますか?

熟成期間はどのくらいですか?

といったように、分析のアプローチは、産地→品種→栽培方法→醸造方法→熟成という流れで行います。

間違っても、先に品種を決めつけてコメントを書き始めてはいけません。順を追って特徴を書き出し、書きながら分析し、徐々に絞り込み、テイスティングコメントを書き終えてようやく、最終的な結論(産地・アペラシオン・品種・ヴィンテージ)を導き出す事ができるのです。

はじめの段階で候補があればあるほど、絞り込んだ結果の精度は高まります。いかに大きな風呂敷を広げられるか、こればかりは経験が必要なので、少しずつ品種の経験値を積んで引き出しを増やしていくしかありません。

しかし経験値が少なくても、限られた品種をしっかりと押さえ、しっかりと分析できていれば、品種が誤っていても合格する試験です。

4.ロゼ、オレンジ、スパークリングのどれかは必ず出題される!

ソムリエ試験の時は、赤ワインと白ワインだけ勉強すれば良かったですが、ソムリエ・エクセレンスでは、ロゼワイン、オレンジワイン、スパークリングワインのどれかが必ず出題されると考えた方がいいでしょう。

2018年、2019年とロゼが出題されていますし、フォローアップセミナーでも仕切りに、ロゼやスパークリング、オレンジワインの表現を説明していました。

これらのタイプは、テイスティング表現やコメント内容が赤・白とは若干異なりますので、何度か練習しておきましょう。

ロゼワインやオレンジワインのテイスティングコメントを書く上で重要な事は「マセラシオンの時間」です。

2018年のテイスティング試験②の設問で「ワインの製法について」記述するよう求められましたが、これは恐らくマセラシオンの時間をしっかりと書いているかを見ていると思われます。もっと言えば、ロゼならセニエ法なのか、直接圧搾法なのかなど記述すると、しっかり分析しているとアピールできるので加点されると思います。

ロゼとオレンジワインは、色調、タンニン量、そしてマセラシオンの時間を総合的に考え、産地と品種を導き出す必要があります。それを記述しなければテイスティングしたとは言えません。

また、ロゼの代表的な産地もあわせて把握しておく必要があります。普段ロゼワインを飲んでいないとなかなか特徴が掴みづらいので、一度は試飲した方がいいと思います。

スパークリングワインのテイスティングコメントを書く上で重要な事は、「外観の泡立ち」と「瓶内二次発酵か否か」です。醸造方法によって外観や香り、味わいの表現が異なるので、しっかりと分析しコメントする必要があります。

5.マリアージュは決め打ちにしておく

前述したとおり、テイスティング試験はとにかく時間がありません。なので試験中に、料理は何にしようかな?とのん気に悩んでいる時間はないので、マリアージュは予めワインのタイプ毎に、産地毎に決め打ちで暗記しておいたものをそのまま書くようにしましょう。
どのみち3次の実技試験で、マリアージュ関連の問題が出題されますので、いくつか暗記したものを、パパっと書けるようにしておきましょう。

また、奇をてらうマリアージュよりも王道のマリアージュを書いたほうが良いと思います。王道のマリアージュを書けるということは、各地域の郷土料理をしっかりと把握している、というアピールにもなります。

また、マリアージュを提案する際は、料理そのものを提案してお終いにせず、ソースや付け合せまで提案した方が良いですし、さらになぜ相性が良いのかを「五味」「同調」「中和」「風味」「テクスチャー」の要素を用いて説明すると良いでしょう。(詳しくは、次回の実技試験編でご説明します。)

例えば、①「オーストラリア Semillon 2011年」の、合う料理を提案するならば・・・

ヒラメ目のカルパッチョ ラヴィゴットソース。
シンプルでフレッシュ感を楽しむタイプの白ワインなので、メインの食材は淡白な白身魚を使用し、素材を活かした調理法にしました。ハンター・セミヨンらしいハッキリとした酸と、ラヴィゴットソースの爽やかな酸味で、酸のレベルを合わせます。トマト、玉ねぎ、セロリ、キュウリなどをみじん切りにし歯ごたえのあるソースをかけることで、ワインのシャキッとしたテクスチャーと合い、さらにはワインと料理の共通してもつ清涼感を引き立てます。

6.シャーペン(鉛筆)は使い慣れたものを

40分間ほぼ書きっぱなしの試験になりますので、使い慣れたものを持っていった方がいいです。

筆者は、シャーペンを何本か試し、最も早くかけるよりすぐりのものを使って、練習していました。このシャーペンが、試験会場では唯一の相棒になるのです。

また、間違っても鉛筆一本、消しゴム一個とかでは望まないように。落としたり折れたりしたら、、、そこで試合終了です。

最後に・・・。

筆者は、2018年のテイスティング試験で無事合格する事ができましたが、実は品種は全て外しました。

オーストラリアのハンター・セミヨンを、オーストラリアのクレア・ヴァレー・リースリングに。

フランスのブルゴーニュ・マルサネ・ロゼを、タベル・ロゼに。

スペインのテンプラニーリョを、日本の樽熟成メルローにしました。

ロゼの答えにはかなり開きがありますが、白と赤は品種は違えどテイスティングコメントはほぼ同じだったと思うので、品種を間違えても合格になったのだろうと思います。

ロゼについても、色調がマルサネにしては濃く見え、タベルにしては薄く見えてしまったので、タベルでマセラシオンの時間を極端に短くして、抽出時間が短かったため淡く、タンニンも比較的穏やかになったと結論づけました。

このような結果でも合格しているという事は、この試験は、結果の品種の正誤よりも、過程の分析を重視しているからだと思います。

筆者自身、ソムリエ試験で偶然にも全問正解した時よりも、ソムリエ・エクセレンス試験で品種を全問外した今回の試験の方が、よっぽど納得のいく結果だと思っています。

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