故郷を知れば、もっとワインがおいしくなる! アルザス地方のワインと料理

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アルザスのワイン、飲んだことありますか?
そうそう、すらっと細長い瓶に入っている、あのワインです。
私事ですが、ただワインが好きなだけで、ボルドー?ブルゴーニュの村名?と、ワインの知識がこれっぽっちもなかった頃、これを選んでおけば間違いない!というワインのひとつが「細長い瓶で、アルザスって書いてある白ワイン」でした。
それから、資格取得のために、アルザスのことを知れば知るほど、アルザスワインが好きになりました。
ワインが産まれた場所を知って、ワインの楽しむ。今回はアルザス地方がどれだけ素敵なところか、お伝えしてみたいと思います。

アルザス地方ってどんなところ?

アルザス地方は、フランスの北東部にあり、ライン川を挟んでドイツと国境を接しています。フランスを五角形に例えるならば、右上の角の辺りで、地理的にも歴史的にも、ドイツ文化の影響を色濃く受けた地域です。

 

アルザス最大の都市は、ストラスブール。ライン川左岸、パリからはTGV(フランスの新幹線)で2時間半のところにあります。

古くからヨーロッパの交通の要所ともなっており、ストラスブール大聖堂やEU欧州議会の会議場、世界中からいろいろな企業の研究所などが集まっている、歴史と現代が共存する街になっています。

12月には、16世紀から続くフランス最古のクリスマスマーケットが開かれるなど、観光地としてもとても人気のあるところです。

そして、西に20Km離れたマルレンハイムから始まるアルザスワイン街道へ向かう玄関口にもなる街がストラスブールです。

 


 

アルザス地方の実質的な首府はストラスブールですが、アルザスワインの首都ともいえるのはストラスブールから南に80Kmほど離れた「コルマール」

宮崎駿監督の「ハウルの動く城」のモデルにもなったともいわれている街で、教会の屋根には、「幸せを運ぶ鳥」としてアルザス地方のシンボルとなっているコウノトリが巣を造り、カラフルな木組みの建物(コロンバージュ)の街並みが続く、アルザスの魅力が凝縮された、とても可愛らしい街「コルマール」。おいしいアルザスワインと地元のお料理がいただけるヴィンシュテュヴ(ワイン居酒屋)もたくさんあり、ワインラバーにとっては、たまらない街です。

 



歴史的なことに目を向けると、アルザス地方は、鉄鉱石や石炭が産出され、ライン川という交通路もあったことから、その領有権は、ドイツとフランスの間で行き来を繰り返しました。17世紀にフランス領になった後、19世紀後半、ナポレオン3世が普仏戦争で敗れるとドイツ領になりましたが、第一次大戦後の1919年フランスへ返還され、第二次世界大戦中はドイツの占領下に置かれたこともありました。

 

そんな歴史的な背景があるため、木組みの建物が並ぶ街並みや食文化など、ドイツに似たところがたくさんあります。しかし、現地の方達は「自分たちはドイツ人でもフランス人でもなく、アルザシアン(アルザス人)だ!」とおっしゃるそうです。今でも人口の43%は流暢なアルザス語を話しています。

歴史に翻弄されながらも、自らのアイデンティティをしっかり持った地域それがアルザス地方です。

 

フランス最北のワイン産地 アルザス

フランスワイン産地の中でも、最北の産地アルザス


アルザスワインのぶどう畑は、一番北のストラスブール近郊から南のミュールーズまでおよそ120Km(東京から富士山と同じ距離!)、幅1~5Kmの帯状に広がっています。

そのワイン畑の間をぬって続く「アルザスワイン街道」沿いには100を超えるの村々が点在し、900余りのワイナリーがあります。

 

ドイツの国境にもなっているライン川の向こう岸は、ドイツワインの銘醸地バーデンのアルザス地方。いかに北に位置する産地かが想像できると思いますが、どうして香り豊かな果実味あふれるワインが造れるのでしょう?

その理由は、東にあるヴォージュ山脈


大西洋からの湿った空気を遮断してくれるおかげで、フランスの中でも、最も降雨量の少ないワイン産地になっており、東向きのの斜面に広がったぶどう畑には、朝と昼にしっかりと日照があり、緯度が高い割にはしっかりと熟したぶどうが収穫できます。夏場の気温は30℃に達する日もあるほどです。


そんな地理的に恵まれた条件が重なって、きりっと辛口ながらも、果実味の凝縮した、香り高いワインが造られる産地となっています。

 


 

アルザスで造られるワインの90%近くが辛口の白ワインです。

しかし少量ながら、甘口に仕上げられたワインもあります。アルザスの「高貴4品種」とも言われるリースリング、ゲヴェルツトラミネル、ピノ・グリ、ミュスカを使用し、「Vendanges Tardives(ヴァンダンジュ・タルディヴ=遅摘ぶどうの意)」や「Selection de Grains Nobles(セレクション・ド・グラン・ノーブル=貴腐ぶどうの意)」とラベルに書かれていたら、それは甘口のワインです。

 

白ワインの印象が強いアルザス地方ですが、全体の1割程度ですが、赤ワインも造られています。アルザスの赤ワインといえば、ピノ・ノワール。しっかり果実味がありながらも、すっきりときれいな酸のピノ・ノワールで、筆者はとても好きです。見かけたらぜひ試してみてください。

 

アルザスワインはわかりやすい!

アルザスワインの特徴のひとつが、フルートボトル
すっと細長い、シラサギ?いえいえアルザスのシンボル、コウノトリの首のような、背の高い、ひと目でわかるあのボトルです。


社内的なお話をすると、実は、お客様からラッピングの依頼があった時に困るボトルのひとつでもあります。
背が高すぎて、ラッピング用の箱に入らないことが多々あるのです…。そして、陳列棚に頭がつかえてしまうことも(笑)。

 

そして、アルザスワインのもうひとつの特徴は、ラベルを見れば、どんなブドウ品種を使っているかがすぐにわかること!


主として「モノセパージュ(単一品種で造られたワイン)」が多く、その場合には、品種名を表示することが、法律上許されているからです。ちなみに、複数品種のアッサンブラージュの場合には「Edelzsickerエデルツヴィッカー」という表記や「Gentilジャンティ」という表記がされています。


他の地域で造られたフランスワインには、ブドウの品種は基本的に書かれていません。例えば、ボルドー五大シャトーのひとつ「シャトー・ラフィット・ロートシルト」。ラベルを見ても、書いてあるのはシャトーの名前とヴィンテージだけ。ブドウ品種はどこにも書いてありません。フランスのワイン法では、AOC(アペラシオン)毎に使用できる品種が決まっているため、ブドウ品種を記載する必要がないからです。ラベルからブドウ品種がわかるようになるには…勉強するしかありません(笑)。

 

その点、アルザスワインはブドウ品種が明記されていることが多く、とってもわかりやすいんです。

 

アルザスワインのAOC(アペラシオン)


フランスのワイン法に基づくAOC(アペラシオン)は全部で53あります。
もともとは、AOCアルザスAOCクレマン・ダルザスAOCアルザス・グラン・クリュの3つのAOCだけでしたが、AOCアルザス・グラン・クリュを名乗ることのできる51のリュー・ディ(小区画)すべてが、それぞれ独立したAOCとなったため、現在アルザス地方にあるAOCは、全部で53になりました。

生産量は、AOCアルザスが67%を占め、AOCクレマン・ダルザスが29%、AOCアルザス・グラン・クリュが4%となっています。(2019年現在)

それぞれのAOCについて、簡単に見ていきましょう。

*AOCアルザス

1962年にAOCとして認定。アルザス全生産量の67%を占め、赤・白・ロゼを造ることができますが、そのほとんどが白ワインです。

主なブドウ品種は、白ブドウは、ピノ・ブラン(クレヴネル)や、リースリング、ゲヴェルツトラミネル、ピノ・グリ、シルヴァネル、ミュスカ、黒ぶどうは、ピノ・ノワールです。

*AOCクレマン・ダルザス

1976年にAOCとして認定された、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵の製法で造るスパークリングワインのAOCです。フランス国内でのスパークリングワイン消費量のNO.1がこのクレマン・ダルザス
主にピノ・ブランが使われていますが、シャルドネやリースリング、ピノ・ノワールで創られることもあります。クレマン・ダルザスは、爽やかな香りと凝縮された果実味、柔らかで繊細な味わいが特徴です。

*AOCアルザス・グラン・クリュ

1975年に制定された後、次々と対象となるリュー・ディ(小区画)が拡大され、2007年に認められたケフェルコプフが加わり、現在のAOCアルザス・グラン・クリュの数は51になりました。

AOCアルザス・グラン・クリュを名乗ることができるのは、白ワインのみで、手摘みされたブドウを使うことが義務付けられています。使用できるブドウは、例外を除きアルザス「高貴4品種」と呼ばれるリースリング、ゲヴェルツトラミネル、ピノ・グリ、ミュスカに限られています

 

アルザスワインとアルザスのごはん

「地のもの」という言葉がありますが、やっぱり同じ土地のもの同士は、すっごくよく合います。
アルザスワインと相性抜群の、アルザスの郷土料理をいくつかご紹介します。

*Quiche Lorraine(キッシュ・ロレーヌ)


キッシュのロレーヌ風。某コーヒーチェーンに定番で置いてある、お食事にもなるあのタルトです。ほうれん草とベーコン、チーズをパイ生地で作った型に入れて、卵生地で焼き固めたもの。リースリングやピノ・ブランとよく合います。

おすすめワインはこちら→https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/W-FR20041807

 

*Baeckeoffe(ベッケオフ)


肉と野菜の蒸し焼き。Baeckeoffeはアルザスの方言で「パン屋さんのかまど」の意味。ベッケオフ用に作られた可愛らしい陶器の鍋があり、そこに塩胡椒したジャガイモなどの野菜を、ピノ・グリやハーブでマリネした肉入れて、オーブンで蒸し煮にした料理です。
かつて、この地方の主婦達が材料を入れた鍋をパン屋に預け、パン屋さんは余ったパン生地で蓋の隙間に封をして、パンを焼いた後のオーブンの残り火で調理してもらったことがその発祥といわれています。ピノ・グリやピノ・ノワールとよく合います。

おすすめのワインはこちら→https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/W-FR15131607

 

*Choucroute(シュークルート)


豚肉の蒸し煮、発酵キャベツ添え。Choucroutは酸っぱいキャベツという意味で、ホットドッグに挟んであるあの酸っぱいキャベツの漬物です。日本のぬか漬けと同じで、塩もみしたキャベツが乳酸菌発酵によって酸っぱくなったものです。ドイツのザワークラウトとほぼ一緒なのですが、一緒にしてはいけません!正真正銘のアルザスの「シュークルート」は2018年にEUでIGP(地理表示保護)を取得していて、伝統の製法で、アルザスで造られたキャベツを使って作らなければいけません。キャベツの漬物自体をChoucrouと呼ぶこともありますが、塩漬けの豚肉と一緒に煮込んだ料理そのものをさすことが、一般的です。「pedalar dans la choucroute(シュークルートの中で自転車を漕ぐ=なかなか前に進めない様)」なんて言葉もあるほど、フランスの生活に溶け込んでいます。こちらはシルバヴァネルと。

おすすめのワインはこちら→https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/W-FR13032203

 

*Tarteflanbee/Frammenkeuche(タルトフランベ/フラムンキッシュ)


アルザス風の薄焼きピザ。薄く伸ばしたパン生地に、フロマージュブランのソース、薄切りにした玉ねぎとベーコンをのせて、焼いたもの。アルザス地方のどこのレストランに行っても、メニューに載っているほど、ポピュラーな料理。アルザスワインの白ワインならどんなものでも合います。

おすすめのワインはこちら→https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/W-FR13031101

 

*Kouglof(クグロフ)


干しぶどう入りブリオッシュ。あのマリーアントワネットも大好きだったお菓子。クグロフ型(斜めにうねりのある蛇の目型)にアーモンドとさくらんぼのリキュール キルシュで香りをつけた乾し葡萄を入れ、ブリオッシュ風の生地を入れて焼き上げたもの。
半甘口のヴァン・ダルザス・モワルーと合わせて。

 

そして最後に忘れてはならないのが、アルザス地方のチーズ「マンステール」です。表皮はオレンジ色で中身はとろりとしたなウォッシュチーズです。強烈な香りはあるものの、クリーミーでマイルドな味を楽しむことができます。

こちらもアルザスの白ワインならどちらでも。

 


アルザス料理は、素材の味を生かしたシンプルなものが多いようです。
この点は日本の家庭料理と似ていて、ポン酢でいただくお鍋や塩味の肉じゃがなどの和食とアルザスワイン、意外と合うものが多そうです。お刺身に合いそうなアルザスワインもあります。

おすすめのクレマンはこちら→https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/W-SK16080504

アルザス料理 作ってみました!

美味しそうなアルザス料理がたくさんご紹介しましたが、この中からハードルの低そうな(笑)「シュークルート」と「タルトフランベ」を作ってみました。
より手軽に作れた「タルトフランベ」のレシピをご紹介します。

コツは、生地をしっかりとこねて、薄ーく伸ばすこと、それだけです。ひとり一枚は軽くいけちゃいます!

<タルトフランベのレシピ 1枚分>


■材料
★タルト生地:強力粉100g、オリーブオイル大さじ1杯、ぬるま湯60~70㏄、塩と砂糖 ひとつまみ
★ソース:フロマージュ・ブラン50g、生クリーム50㏄、ナツメグと塩 適量
※フロマージュ・ブランは水切りヨーグルトで代用できます。プレーンヨーグルト1パックをキッチンペーパーを敷いたざるの上にあけ、一晩ほど置いておけば完成です。余った水切りヨーグルトは、緩く泡立てた生クリームと合わせたり、そのままジャムなどをかけると、美味しいデザートになります。
★上にのせる具材:玉ねぎ 1/2個分、ベーコン 50g

 

■作り方
①生地を作ります。大きめのボールに、強力粉と塩、砂糖を入れ、軽く混ぜます。中央にくぼみを作り、そこにオリーブオイルとぬるま湯を少しずつ加えながら、混ぜていきます。はじめはバラバラしていますが、頑張ってこねていると、段々と粉に水分が回り、しっとりとまとまってきます。10分ほど生地をこね、表面がつやっとしてきたら、丸めてラップをかけ、ボールの中で1時間ほど休ませます。
②休ませている間に、ソースと具材の準備をします。
ソースは、フロマージュ・ブラン、生クリーム、塩、ナツメグ(なくても可)をよく混ぜるだけ。具材は、それぞれ薄切りにしておきます。
③あとは焼くだけです。オーブンは200℃に予熱しておきます。休ませていた生地(イーストは入っていないので、膨らみません)をめん棒などを使って、とにかく薄く伸ばしていきます。薄く伸ばした生地を天板に置き、②で作ったソースをたっぷり塗り、その上に具材をたっぷり散らします。そして、予熱のできたオーブンにいれて、10~15分。タルトフランベの完成です!

材料もシンプルで、作ってみたらとっても簡単(これ一番大事です!)、ソースが重いのかと思いきや、意外とあっさりしていて、アルザスワインとのマリアージュも最高でした!!

 

おしまいに

アルザスワインと料理
アルザス地方の魅力、少しでも伝わったでしょうか?
本当なら、現地に行って、その場の雰囲気を味わいながら、ワインもお食事もいただきたい…ところですが、なかなかそれもかなわず、です。
意外にも日本の食卓にも合いそうなアルザスワイン。
アルザスに思いを馳せながら、お料理を作って(デパ地下で調達して?)旅した気分で、きりっと冷やしたアルザスワインいただきましょう!
少しでもアルザスワインラバーが増えるといいな、と思ってます。

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