『最高のマリアージュを! ワインとチーズもっと美味しく!』

  • LINEで送る
ワインとチーズ

皆さんは、ワインを飲むときのおつまみといったら、何を思い浮かべますか?
「やっぱりチーズかな?」って方、多いのではないでしょうか?

ソムリエ協会の教本にも、「チーズ」という章があるほど、ワインとチーズは切っても切れない関係です。
今では、少し高級なスーパーやデパートの地下などで、世界中のチーズが、気軽に手に入るようになりました。

どのチーズもとても美味しいし、大抵のワインには合ってしまうのですが、「マリアージュ」という言葉があるように、やっぱり「このワインには、このチーズ!」というお互いを引き立てあう組み合わせがあります。

だけど、チーズにもワインにもいろいろ種類がありすぎて、よくわからない…という方の参考になればと、ワインと同じようにとても奥深い、チーズの世界にご案内します。

そもそもチーズって?

チーズは、はるか5000年も昔、メソポタミア文明の時代には、広く食されていたと言われています。日本でも飛鳥時代にはチーズのような「蘇」という食べ物が、貴族の間で食されていたようです。

そして、前述のソムリエ協会の教本に、チーズは次のように定義されています。

「チーズとは乳を原料として、乳酸菌や凝乳酵素などによって凝固させ、ホエイ(乳清)の一部を取り除いたもの、またはそれらを乳酸菌やカビ等の微生物で発行・熟成させたものである。」

なんだか難しいことがかかれていますが、すごく簡単に言ってしまうと、牛や羊、ヤギなどのミルクに含まれるたんぱく質を固めて、余分な水分を取り除いたものがチーズだという事です。

つまり、チーズは良質なたんぱく質のかたまり!(脂肪分も多いのですが…)なんだか体によさそうですね。

また、おつまみとしてのチーズは、栄養面でもさることながら、二日酔いを防いでくれる効果もあるようです。

二日酔いを防ぐには、「飲む前に、乳製品で膜を作るといい」なんて聞いたことありませんか?チーズに含まれる乳脂肪が膜となって、アルコールの吸収を緩やかにするということもありますが、良質なたんぱく質が、アルコールを分解する肝臓の働きを助けてくれるという理由もあるんです。

ワインとチーズの相性が良いと言われるのは、なぜなんでしょう?
アルコールの分解を助けてくれるという役割もありますが、このチーズのたんぱく質、口の中で溶けやすく、特に赤ワインのタンニンと結びついて、タンニンの持つ渋みや雑味が和らげられ、まろやかな味わいに感じられるということもあるようです。

古代ギリシャの叙事詩オデッセイアの中には「美の女神アフロディテは、娘ヘレナを、チーズとワインと甘い蜜で育て、ヘレナは輝くばかりの美しさを与えられた」という記述があるくらい、はるか昔から、ワインとチーズは人々の生活に溶け込み、切っても切れない、最高の相棒だったんですね。

 

ワインもチーズも農産物

ワインのラベルに、「AOP」や「AOC」という文字があるのを見たことありませんか?

このAOP(旧AOC)=原産地呼称統制は、産地や製法などが細かく定められた、いわばEU(AOCはフランス政府)のお墨付きを受けた農産物のことで、ワインだけでなく、チーズやバターも認定を受けたものがあります。

フランス国内で、AOP認定されている農産物でいちばん数が多いのはワインで、その数340以上!
ではチーズはというと、45のチーズがAOP認定されています。つまり45種類ものチーズが正統派だと認められているわけです。

ミルクを出す牛が育った地域の牧草や、ミルクを絞った季節によっても、味が変わってくると言われているAOPのチーズ。ぶどうの樹が育った土壌やその年の天候によって、味わいの変わってくるワインと、なんだか共通点がありそうですね。

 

このチーズには合うのは、このワイン!

では、チーズのタイプごとに、ちょっとしたお話しとおすすめのワインをご紹介していきます。

白カビタイプ

表面がソフトな白カビで覆われたチーズが白カビタイプのチーズ。コンビニでも気軽に手に入る「カマンベールチーズ」がその代表格です。かわいいハートの形をした「ヌーシャテル」や、馬蹄の形をした「バラカ」も白カビタイプのチーズです。

権力者たちが愛したチーズ ブリー・ド・モー

フランスでは「チーズの王様」と呼ばれるブリー。パリ郊外の東部ブリー地方にあるモー村(名前のままですね!笑)で造られているブリー・ド・モーが、最高のものとされています。

このチーズ、かのフランス皇帝シャルルマーニュ(カール大帝)や、フランス革命で王座を追われたルイ16世も大好物だったそうで、いよいよベルサイユ宮殿が陥落し、国外逃亡を図ろうとした時、このチーズ食べたさに馬車を停めたため、予定が狂ってしまい、ルイ16世は亡命に失敗したという逸話が残っているほどなんです。

一見、カマンベールチーズとそっくりですが、違いはその大きさ。カマンベールは手のひらサイズですが、ブリーは直径30センチ、お盆くらいの大きさです。大きなチーズなので、外側から内側へと熟成がゆっくり進み、白カビのある表皮のあたりと、真ん中のとろりとしたところ、部位ごとに味の違いが出てきます。それを楽しむのが、いちばん美味しい食べ方で、フルーツとの相性も抜群のチーズです。

【ブリー・ド・モーに合わせたいワイン

まろやかで上品な印象を持つブリー・ド・モー。
果実味豊かなボルドー右岸のワインや、繊細な気泡のシャンパーニュ、エレガントな味わいのコート・ド・ボーヌの赤と合わせてみてください。

《おすすめワイン》

「マチュー・プランセ ブリュット プルミエ・クリュ ブラン・ド・シャルドネ NV 白」
熟成したシャルドネ特有の香ばしい風味と深いコクを持つシャンパーニュ。造り手のミシェル・マチューは、独立するまでボランジェで働いた経歴の持ち主。ボランジェで学んだ、香りも味わいも格段に上がる「長期ビン熟成後の出荷」という極意を生かし、瓶詰め後3年半~5年間程度寝かせてからはじめて、市場にリリースされています。その賜物である、きめ細かな泡や果実味豊かな香りが、ブリー・ド・モーの持つミルクのコクとぴったりです。

 

ウォッシュタイプ

様々なタイプの中でも、最も個性的な味わいで、匂いも強いチーズです。表皮は熟成のためオレンジ色をしていて、中はミルクでコクがたっぷり、とろりとした味わいがたまらないチーズです。日本では11月頃にしか、お目にかかれないチーズ「モンドール」もこのウォッシュチーズの仲間です。

名前の通り、ワイン、マール、ブランデーなどの様々なお酒や塩水で、表面を優しく洗いながら、熟成させていきます。上手に熟成させるには、表皮について菌の働きを緻密にコントロールする必要があり、造るのにとても手間のかかるチーズです。ウォッシュするのに、地酒を使うこともあり、チーズを育てたお酒との相性は、格別だと言われています。

 

ウォッシュチーズのひとつ「エポワス」。フランスでは「神様のおみあし」、イギリスでは「豚の蹄のあいだ」なんていう異名をとるくらい、強烈な匂いのするチーズです。

あの強烈な匂いのもとは、私たち日本人にはおなじみ納豆菌の仲間、枯草菌の一種リネンス菌。慣れるとやみつきになるウォッシュチーズの風味ですが、どうしても苦手だという方は、表皮をはがして、中のとろりと熟成したところだけを食べるのもありです。

 

匂いは強烈だけど美味 マンステール

フランスのドイツ国境付近アルザス地方で、7世紀ころから造られている伝統あるチーズ。この地方、唯一のAOCに認定されたチーズで、修道院で造り始めたことから、修道院という意味の街の名「モナスール」がチーズの名前になりました。塩水でウォッシュしたチーズです。

地元では、そのままはもちろん、熱々のじゃがいもにかけたり、甘い蜜をかけてデザートのようにして食べることもあるそうです。また、強烈なにおいをカバーするため、クミンをふって食べたりすることもあります。

【マンステールに合わせたいワイン】

香りは強いですが、味わいはなめらかで柔らかく、まるで口の中で溶けるフォアグラのような食感のマンステール。同郷のアルザス、きれいな酸のピノ・ノワールや、すっきり辛口のピノ・グリ、少しオリエンタルな香りもあるゲヴュルツトラミネールと合わせてみるのがおすすめです。

《おすすめワイン》

「アルザス ゲヴュルツトラミネール レ・テール・ブランシュ テール・デトワール 白」
赤坂でフレンチのシェフとして働いていた日本人の奥様がマダムを務める、テール・デトワール(旧ミット・ナットフレール)。我がドラジェにも、造り手であるクリストフさんと奥様 由佳さんがお見えになったことがあり、筆者は勝手に親近感を持っている造り手さんです。
彼らの造るこのゲヴュルツトラミネールは、バラ、胡椒、完熟したライチを思わせる、濃密な味わい。由佳さんもこのマンステールとの組み合わせをおすすめしています。

 

ウォッシュ初心者におすすめ タレッジョ

北イタリア ロンバルディア州タレッジョ渓谷で造られているチーズ「タレッジョ」。表皮には、少し青カビもついています。ウォッシュ特有の香りも控えめなので、ウォッシュチーズが苦手な方でも試しやすいチーズなのではないかと思います。むっちりもっちりした舌触りで、フルーティでマイルドな風味が特徴です。

【タレッジョに合わせたいワイン】

干しぶどうなどのドライフルーツにもぴったりなタレッジョに合わせたいのは、地元で手軽に飲まれているフルーティな赤ワイン オルトレポ・パヴェーゼ。焼き立てのパンのようなイースト香もあるイタリアの高級スパークリング、瓶内二次発酵のフランチャコルタもおすすめです。

《おすすめワイン》


「ドディチドディチ オルトレポ・パヴェーゼ カステッロ・ディ・チゴニョーラ 赤」
現代イタリアを代表する天才醸造家リカルド・コタレッラが造るリッチでエレガントなバルベーラ。桑の実ジャム、サワーチェリー、ナツメグなどのスパイスや、チョコレートなどのアロマ。ワインの持つ果実味と、少し熟成し、複雑な香りを持ち始めたタレッジョの風味が、絶妙にマッチします。

 

シェーヴルチーズ

ヤギのミルクから造られる、フランスロワール地方が名産のチーズです。

8世紀頃、フランス内陸部ロワール地方まで攻め込んでいたイスラム教徒が、トゥール・ポワチエの戦い(世界史で習ったかも!)で敗れた時、家畜として連れて来たヤギを置いたまま退散してしまったため、ヤギのミルクで造るシェーヴルは「サセラン人の置き土産」と、現地では呼ばれているそう。

牛乳のチーズよりも歴史が古く、小さな農家が手作業でチーズ作りをするフェルミエ(農家製)が多いシェーヴル。真っ白で、ほろりとくずれる食感と、独特の香りや酸味があります。特有のクセがあるため、ダメな人は徹底的にダメだけれど、一度好きになってしまったら、とことん好きになってしまうチーズなんです。

 

皇帝の怒りに触れてしまったチーズ ヴァランセ

チーズにしては珍しい四角錘の形をしていて、周り濃いグレーの灰がまぶしてあるチーズです。同じ名前のAOCがワインにもありますね。

このヴァランセの形、何かに似ていませんか?そう、ピラミッドです。なんでこんな形になってしまったかといいますと…。
ヴァランセ城の主タレーラン公は、かの皇帝ナポレオンの腹心だったそうなのですが、エジプト遠征に失敗した後!に開かれた皇帝との会食で、当時は、ピラミッド型をしていたヴァランセを出してしまったそうなのです。このチーズを見たナポレオン「ピラミッドなんか見たくない!」と怒り、チーズの頭の部分を切り取ってしまったそうなんです。それで今のような形になったのだと言われています。

そしてまわりにまぶされている黒い木灰は、独特の香りを抑える効果もあるそうで、熟成が進むと、淡いグレーへと変化していきます。チーズ上級者は、ぜひ熟成のすすんだものを、そうでない方は、青草を食んだ春に絞ったミルクを使った若いチーズをお勧めします。

【ヴァランセに合わせたいワイン】

酸味とほどよいコク、しっとりとした風味を持つヴァランセ。同郷ロワールのフルーティな辛口の白ワインにぴったりです。赤ワインだと、やはり同郷で、果実味豊かで、少し植物の香りのある「シノン」によく合います。

《おすすめワイン》

プイィ・フュメ エリック・ルイ 白」

星の王子様のラベルでおなじみのエリック・ルイ。厳格なリュット・レゾネで造られるこのワインは、素直に美味しいと思える1本です。ソーヴィニヨン・ブランの爽やかな酸味と豊かな果実味、ミネラルのバランスが秀逸な白ワイン。土壌由来のスモークのニュアンスが、ヴァランセ特有のクセと、絶妙なハーモニーを奏でます。

 

青カビタイプ

ブルーチーズ」と呼ばれているのが、青カビタイプのチーズ。フランス語では、Fromage a pate persillee(中身がパセリ状のカビのチーズ)というそうです。たしかに、そんな見た目ですね。その歴史は大変古く、なんと2000年も前、ローマ時代の書物に、ブルーチーズの記述があるそうです。

ブルーチーズの味わいはというと、混ぜ込まれる青カビは塩気を好む菌のため、他のチーズよりも、少し塩味が強く、ピリッとしたシャープな刺激があります。このピリッと刺激も青カビの出す酵素によって作られる風味。牛乳だけでなく、ヤギや羊のミルクが使われることもあり、原料やミルクの脂肪分の違いで、味のバラエティもいろいろです。

最近では、ピリッとした刺激が苦手な人のために、ツンとした匂いや刺激がマイルドになったタイプのブルーチーズも多くなっています。世界三大ブルーチーズのひとつ、イタリアのゴルゴンゾーラのなかでも「ドルチェ」と呼ばれるタイプのものは、青カビが少なくクセもないので、ブルーチーズが苦手な人にもおすすめです。また、蜂蜜をかけてみると、刺激もマイルドになり、甘さとしょっぱさの絶妙なバランスを楽しむこともできます。

 

その洞窟でしか作れないチーズ ロックフォール

三大ブルーチーズのひとつで、羊のミルクから造られるのが、ロックフォールです。

フランス最古のチーズとも言われるこのチーズ、今から数千年前、フランス中央部ロックフォール地方の山岳地帯にいた羊飼いが、うっかり洞窟の中にチーズを置き忘れ、偶然、そのチーズに青カビが付いたことでこのチーズが誕生したという伝説があります。

ただ今でも、このチーズを作るには、その洞窟で採れた青カビを使うことが決められていて(洞窟の壁面のカビを取るわけにはいかないので、洞窟の中にパンを置いて、それに付いた青カビを使用するそう)、熟成もこの洞窟を使って行われているという、まさに伝説のチーズなんです。

【ロックフォールに合わせたいワイン】

トリュフやマッシュルームのような高貴な香りや、羊のミルク特有のなめらかさや甘みを、少し強めの塩分がうまくまとめ上げ、シャープで強めの味わいのロックフォール。ワインもしっかりした味わいのものと相性が良いようです。ピリッしたスパイスの香りがあるローヌのシラーもおすすめですが、貴腐ワインのソーテルヌとの相性も抜群です。

《おすすめワイン》

「シャトー・ペイロン 2002 白」

言わずと知れた甘口ワインの王様、貴腐ワインソーテルヌ。20年熟成されたこのシャトー・ペイロンは、アプリコット、金柑のシロップ漬けや蜂蜜、白い花などの複雑で豊かなアロマと、上品な甘みの優雅なソーテルヌです。とろっとした口当たりが、ロックフォールの刺激をマイルドにし、上質な甘さとチーズの塩味が、互いを引き立てあう最高の組み合わせです。

 

ハードタイプ

もともと新鮮なミルクが手に入りにくい環境で、長期保存できるように工夫されてできたハードタイプのチーズ。プレス器で圧搾して水分を抜き、じっくり長時間かけて熟成させるため、うまみがたっぷりで複雑な味わいのチーズになります。

そのまま食べたり、粉末にしたり、溶かしたりと応用範囲が広く、非常に懐がふかいチーズだともいえます。
フランスのAOPチーズの中でいちばん消費されているのも、アルプスの麓フランシュ・コンテ地方のハードチーズ コンテ。世界中で、最もよく食べられているのが、ハードタイプのチーズです。

 

イタリアチーズの王様 パルミジャーノ・レッジャーノ

言わずと知れた、イタリアチーズの銘品です。このパルミジャーノ・レッジャーノ、規定により、前日に搾ったミルクとその日に搾ったミルクを混ぜて作るため、なんと、一日に一度しか作れないチーズらしいです。

そして、その熟成期間は年単位。最低2年熟成させたものでないと、出荷は許されません。パルミジャーノを食べた時のシャリっとした食感、あれは長い熟成により結晶したうまみ成分のアミノ酸だったんですね。

ナッツやドライパイナップルなどの華やかで複雑な香りと、噛みしめるほど旨味の出てくるこのチーズ、まさにイタリアチーズの王様です。バルサミコ酢をかけても、とても美味しくいただけます。

【パルミジャーノ・レッジャーノに合わせたいワイン】

とにかくしっかりとしたうまみを持ったこのチーズには、キリっと辛口の白ワイン、例えば、パルミジャーノ・レッジャーノのリゾットを作る時に使われている、ガヴィもとても相性が良いです。赤ワインでしたら、しっかりと骨格のある赤ワインがおすすめです。

《おすすめワイン》

「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ リオンド カンティーネ・リオンド 赤」

干しブドウのような凝縮したダークチェリーやブラックベリーのアロマとスパイスや樽熟成由来のヴァニラの香りが織りなす複雑な風味。イタリアのルネ・マカローニ誌で96点を獲得した上質で濃厚で飲みごたえのあるこのアマローネと、濃厚で、複雑な旨みが凝縮したパルミジャーノ・レッジャー、最高のマリアージュです。

 

おしまいに

ワインとチーズ。
それぞれでも、もちろんいいのですが、一緒になるともっと美味しくなるなんて言うことなし! 1+1が3にも4にもなるってことです!

そうそう、デザートを忘れてました!

少し甘めのチーズケーキ、あわせるワインも少し甘めのイタリアの微発泡ワインアスティなんかがおすすめです。

熟成度合いやヴィンテージごとの味わいの違いなど、
ワインとチーズの組み合わせって、一期一会なのかな、とも思います。
きちんと味わって、楽しみたいですね。

より良いワインとチーズのマリアージュのために、この記事が参考になったら嬉しいです。

  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

人気の記事

コメントを残す

*