当たり前だと思ってた事が違ってた!
まことしやかに語られる常識が、全く根拠の無いデマだった!
世の中にはそんな事が往々にしてありますよね。
特にワインの場合、そういうのがとにかく多い!
ちょっと前までは常識だったけど、状況が変わって今は違うって事も少なくないんです。
そこで今回は、ワインの世界に入門したばかりの方向けに、意外と誤解しがちなワインの豆知識を集めてみました。
ドヤ顔でお友達に話してしまい、真実を後で知って「うわぁ…」と後悔しないように、ここでぜひチェックしておきましょう。
目次
豆知識1.ラベルに書いてある事が、100%事実ではない
「カベルネ・ソーヴィニヨン」とラベルに書いてあったら、カベルネだけで造られてるのが常識だと思っていませんか?
実はそうとは限らないんです!
もちろんラベルに表記していい内容は、生産国によって厳格に定められています。
でもブドウ品種の場合、例えばアメリカ・カリフォルニアの法律では、全体の75%以上使っていればブドウの名前を表記して良い事になっています。
という事はラベルに「カベルネ・ソーヴィニヨン」だけ書いてあっても、25%までメルローが混ざってる可能性もあるわけ。
これって、けっこうアバウトですよね?
25%違う品種がブレンドされてたら、味わいにはかなり大きな影響があるはずですし。
実際にアメリカのワインでは、有名銘柄でさえ表記外のブドウが入っている事は珍しくなく、むしろ個性づけなどの理由で積極的にブレンドされるそうですよ。
意外と知られていない豆知識ですが、これはブドウ品種だけの話ではなく、実はヴィンテージや産地についても同じようなルール。
ラベルに表記されている以外の産地・年号のワインを、わずかとはいえブレンドする事が正式に認められているのです。
今回はアメリカを例に挙げましたが、それ以外の生産国でも、ラベル表記についての似たような制度は多く存在しているのです。
豆知識2.レストランで働いた事が無いソムリエ…実はいっぱいいる!
ソムリエと聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
白いシャツに黒いベスト、蝶ネクタイにエプロンつけて、レストランでワインを注いでるあの姿ですね。
ところがソムリエの資格を持っているのに、レストランで働いた事が全く無いという人も多いって知ってました?
意外かもしれませんが、そもそもソムリエという呼び名は、ワインに関連する仕事をしている人を広く指すんです。
日本でソムリエ資格と言えば、一般的には日本ソムリエ協会が運営する、認定試験に合格して得られる称号を指します。
その受験資格が、「ワインに関連する仕事に3年以上従事してる」って事。(他もあるけど割愛)
つまりレストランじゃなくても、酒屋さんや輸入元で3年働いて試験に合格すれば、ソムリエ資格は取れてしまうんですね。
かくいう私も、実はレストランで働いた事が無い一人。
華麗に注ぐ姿を見て、「自分だったら絶対こぼすわぁ」とか、同じソムリエなのに感心しちゃってます(笑)
さらに資格についての豆知識として、日本では数多ある民間資格の一つですが、フランスでは立派な国家資格。
しかもめちゃくちゃ努力しないと合格できない、超難関の資格なんだとか!
さすがワインの本場、もしフランスのソムリエさんにお会いする事があっても、「自分もソムリエです」なんて言うのが恥ずかしい…。
豆知識3.チリワインは品質が劣る…なんてとんでもない誤解!
「やっぱりチリのワインは口に合わないのよね~」
って、イメージだけで言っちゃってませんか?
確かに一昔前まで、チリワインの品質はお世辞にも良いと言えない時代がありました。
しかし現在のチリは別物、ワインのクオリティが飛躍的に向上しており、コスパの極めて高い産地というのがスタンダードな認識です。
チリの全体的な傾向として、ストレートで強い味わいのワインが多いですが、近年では驚くほど繊細でキレイなタイプも出てきています。
チリワインが品質も多様性も高めつつ、コスパの高さを維持しているのにはいくつか理由があるんですが、ここでさらに豆知識。
例えばフランスやイタリアなどの伝統国では、良いブドウが育つ「格」の高い産地だと、コストがかかったり付加価値がつくのが常。
そういうスペックが高いワインの価格は、数万円になる事も珍しくありません。
それに比べてチリなどの新興産地では、良くも悪くも格付けルールがあまり細かくないんです。
だから素晴らしい畑とはいえ高額になりすぎず、良いワインが比較的安価で入手できるんですよね。(一部プレミアムワインなど例外もあります)
もちろんフランスやイタリアの銘醸地には、そこでしか造れないオリジナリティがありますが、チリならではの味わいもまた素晴らしい個性だと思います。
チリの細長い国土には、ブドウ栽培のポテンシャルを秘めた未開の地が点在していて、まだまだ産地として進化する可能性を秘めた期待の国なんですよ。
豆知識4.オーガニックワインは二日酔いになりにくい…というウソ
ワインには酸化防止剤として、亜硫酸塩が添加される事が一般的です。
もちろん健康に支障がない範囲の量なので、大多数の方には影響がないはずなんですが、ごく少数のアレルギーがある方は頭痛を引き起こす原因になるそうです。
この話に尾ヒレがついたのかはわかりませんが、
「オーガニックワインは添加物が入ってないから頭痛にならない」
と、信じて疑わない方をお見かけする事があります。
しかしこれは大きな誤りで、人間が二日酔いになる原因って、飲みすぎをはじめアルコールの許容量オーバーがほとんどなんだとか。
体に良さそうなオーガニックというワードがついてても、飲みすぎれば二日酔いになってしまうのは当然の話。
この間違った常識は、改めないと危険ですね…。
さらに付け加えておくと、オーガニックワインでも亜硫酸塩が入ってる銘柄はい~っぱいあるんです。
亜硫酸塩はワインの美味しさを保ってくれる、とても大切な役割を持っているので、オーガニックワインでも添加されるケースは少なくないです。
食品添加物を気にされる方は、知っておいた方がいい豆知識ですね。
何にしてもワインを飲んで異常な頭痛を感じる場合は、医療機関を受診しましょう。
豆知識5.赤ワインは常温…で飲んだらもったいないかも?
白ワインは冷やして、赤ワインは常温で。
ワインの簡単な解説本だと、飲み頃の温度についてこんな風に書いてある事がありますが、この常温って言葉が落とし穴です。
よく言われるこの「常温」って、実は元々ヨーロッパでの常温を指しての解説。
当然ながら日本と全く気候が違いますし、夜でも室温が30度もあるような夏期の常温では、間違いなく冷やした方が良いでしょう。
本当に美味しく飲むために温度にこだわるなら、銘柄にもよりますが、赤ワインの場合は15度前後を目安にするといいと思います。
温度を保つための豆知識として、専用のワイングッズを知っておくと便利です。
ボトルに巻きつけて使う温度計や、飲み頃温度をキープする保冷ベルト、氷水を貯めるワインクーラーなど、いろいろあって見ているだけでも楽しいですよ。
豆知識6.ワイン用のブドウの実は、棚からぶら下がってません
秋の行楽シーズンには定番のぶどう狩り。
人の背丈よりちょっと高いくらいの棚にブドウが実っていて、手を上に伸ばして枝ごと収穫する…っていうのが一般的ですよね。
実はそういう育て方って、日本における食用ブドウの栽培法。
ワインに使われるブドウの樹は、下の写真のように棚は使わず、普通の果実樹のような垣根仕立てで育てていきます。
ではなんで巨峰とかシャインマスカットは、わざわざ棚からぶら下げてるのでしょうか。
ブドウそのものについての豆知識ですが、実はブドウって非常にデリケートな農作物で、地面からの雨の跳ね返りだけですぐ病気になってしまうんです。
というか雨が多すぎるだけでも弱っちゃうほどで、欧米の産地と比べて降雨量が多い日本の場合、なるべく地面から遠ざけて仕立てるのが正解なんですね。
とはいえ日本の専売特許というわけではなく、例えばポルトガルやエジプトなんかでは、強すぎる直射日光を避けるために棚栽培を実施しているみたいですよ。
その他にも天候不順やら災害やら獣害やら、ブドウ栽培は大変な事だらけ。
様々な困難を乗り越えて、大切に育てられたブドウから産まれるのがワインというお酒なんです。
生産者の方には、心から感謝しないといけないですね!
豆知識7.スクリューキャップだから安物…なんて言ったら笑われる
「スクリューキャップだから安物ワインだ」
なんていう話、正直申し上げてかなり時代遅れな常識なので、もし勘違いしてた方は今すぐアップデートしましょう!
確かに1,000円前後のデイリーワインには、スクリューキャップの比率が高いのも事実ですが、近年では高価なワインに使われる事も増えてきました。
特にオーストラリアやニュージーランドでは、国全体でスクリューキャップが積極的に利用されており、なんとその使用率は90%超え!
両国共に言わずと知れた銘醸地ですので、何千年~何万円の値をつけるワインも存在しますが、これらにもちろんガンガン使用されてます。
さらに豆知識として、本場フランスのボルドーやブルゴーニュといった高級産地でさえも、現在ではスクリューキャップが普及してきています。
いつの日かワインも、「コルクの方が珍しい」っていう時代が来るかもしれませんね。
キャップシールをナイフで切って、コルクの栓を引き抜くという一連の作業も、ワインの楽しみの一つなのでちょっと寂しいですが。
豆知識8.ワイン発祥の地は中国だった!?
歴史的にも文化的にも、ワインというお酒はヨーロッパ発祥のイメージですよね。
その起源は諸説ありますが、何千年も前に中央アジア周辺で誕生したという説が有力で、少なくともヨーロッパでない事は確かなんです。
日本でワイン造りが始まったのは、それと比べるとごく最近の明治時代。
とはいえもっと昔から外国との交易は存在したため、それ以前にワインを飲んだ人がいても不思議ではありません。
有名なフランシスコ・ザビエルが、薩摩の島津貴久と面会した際に赤ワインを飲ませた、なんていう文献もあるみたいですね。
ところがお隣の中国では、ヨーロッパにワインが伝わるよりはるか以前、なんと9,000年前から既にワインが飲まれていたという説をご存知でしょうか。
それどころか「ワインの起源は中国だ」という主張もあり、それを証明する考古学的な痕跡も見つかっているそうなのです。
まさに常識を覆すような話ですが、実は中国の歴史書を紐解くと、ワインに関する記述がたくさん出てくる事がわかります。
例えば三国志で有名な曹操の跡を継ぎ、「魏」の初代皇帝となった曹丕は、ワインを愛飲していた事で知られる人物。
曹丕がワインとブドウの事について、
「ブドウってめちゃくちゃ旨いし、ワインにしても旨いし、最高な果物じゃん!(かなり意訳)」
と言及した記述も残っており、相当気に入っていた様子が見てとれますね。
曹丕は天命に恵まれず西暦226年に早逝しましたが、当時「倭」と呼ばれていた日本の卑弥呼が、魏に使節を送ったのが西暦238年の事。
卑弥呼とほぼ同じ時代に、既に中国の皇帝はワイン好きだったなんて、面白い豆知識じゃないですか?
このように中国のワイン史は長く、近年では産地としても注目を集めていて、将来は名実共にワイン大国になるかもしれませんね。
豆知識9.ワイン好きがウザい人とは限らない
これはね、完全に偏見なのでやめて頂きたいですね。
なんか「ワイン飲んでる=鼻もちならない」みたいな構図が、いまだに日本にはあると思うんです。
Google検索で「ワイン好き う」まで入れると、予測変換の上位に「うざい」って出てくるんですが、これは人工知能の仕業なんでしょうか!
確かにワイン好きの中には、そういう風に思われて仕方ない人もごく一部というか、多少というか、そこそこというか…いらっしゃる事は否定しません。
みんなが興味無い話を延々と垂れ流したり、知識マウントを取ったりするような行為は、ひんしゅくを買って当然ですね。
これは真理だと思うのですが、ワインを飲んでようが飲んでなかろうが、そういった方は元々そうなのであります。
元から自分本位で空気が読めないのであって、決してワインが脳に作用して人格を歪めたわけではないはず。
もはや豆知識なのかわかりませんが、私の知ってるソムリエや愛好家の方々には、ちゃんと気遣いができて好感度の高い方がいっぱいいますよ。
まだワインをよく知らない方も、そういったマイナスイメージに臆する事無く、ぜひこの楽しい世界に足を踏み入れてください。
そして自分がワイン愛好家になったら、気づかぬうちに承認欲求を暴走させて、周囲から白い目で見られないよう…くれぐれも気をつけましょうね。
さいごに
ワインに関する豆知識、いかがでしたでしょうか。
感覚的な表現が多いワインの世界では、誤った情報や勘違いが広まっている事も多く、少しでもその解消になればと思いこの記事を書きました。
まだまだ書こうと思えば出てきそうなので、もし好評であれば続編も書いてみたいと思います。
最後までお読み頂き有難うございました!