フランス・ブルゴーニュ地方が生んだ世界最高位の黒ブドウ品種といえば、言わずと知れたピノ・ノワールです。
ロマネ・コンティはじめ、ジュヴレ・シャンヴェルタン、シャンボール・ミュジニーなど、ワインファンであれば知らぬ者はいない最高峰の赤ワインに使用されている黒ブドウ品種です。
最近ではアメリカ、ニュージーランドなど、ニューワールドと呼ばれるワイン産地でも目を見張るピノ・ノワールのワインが生み出されています。世界中の生産者たちがこのブドウに惚れ込んでいるのです。
ピノ・ノワールとは
ピノ・ノワールは、ブルゴーニュ生まれとされている黒ブドウ品種です。4世紀頃にはすでにブルゴーニュ地方で栽培されていたと言われており、昔はモリヨン・ノワールとも呼ばれていました。
ブルゴーニュ地方の主要品種として今も有名な黒ブドウ品種ですが、ほかヨーロッパ諸国、アメリカやニュージーランド、オーストリア、南アフリカなど世界的に栽培面積が広がっています。
ただし、ピノ・ノワールの特徴を最も良く出すことができる産地はブルゴーニュ以外には無いと言われており、他産地はブルゴーニュを目指し、それに追い付こうと努力を続けています。
ピノ・ノワールの特徴
ピノ・ノワールは、しばしばボルドー品種のカベルネ・ソーヴィニヨンと比較されます。カベルネ・ソーヴィニヨンは黒く濃い色合いを持ち、タンニンが豊富なワインが造られる傾向にあります。
一方、ピノ・ノワールは色合いが淡く、タンニンが優しい酸度の高いワインとなる傾向にあります。カベルネ・ソーヴィニヨンの方が熟成が長年できるというイメージがありますが、ピノ・ノワールも素晴らしい品質、醸造法で造られたものは長年の熟成に耐える最高級ワインとなります。
ピノ・ノワールは単一品種で造られることが多く、ニューワールドや南フランス、シャンパーニュ地方以外などでブレンドされることは稀です。繊細な香り、風味、味わいがピノ・ノワールの特徴とされているので、スティルワインとして他ブランドと混合されることが少ないようです。
さらに、暖か過ぎる気候の場合は酸が下がり過ぎたり、病害にも大変弱い品種であることから、栽培することが大変難しいとされています。また、石灰質と粘土質がバランス良くブレンドしている土壌であることが重要と言われています。
ピノ・ノワールの評価が高い産地
ピノ・ノワールは、ブルゴーニュだけが素晴らしい、と言われていたのですが、近年ではさまざまな産地のピノ・ノワールが注目されています。アメリカのオレゴン州であったり、ロシアン・リヴァーなどは冷涼でありながらも日照量が多く、繊細かつ力強いピノ・ノワールを楽しむことができます。
一方、ニュージーランドのセントラル・オタゴは今最も世界で注目されているピノ・ノワールの産地であり、本場ブルゴーニュをも凌ぐクオリティのピノ・ノワールを造り話題となっています。
そのほか、フランスのアルザスやドイツ、ルーマニアなどのピノ・ノワールも注目されています。大陸性気候、石灰質土壌が求められるピノ・ノワールですが、醸造法などによっても大きくスタイルを変えるため、腕の良い生産者たちによって、今非常に面白いワインが造り続けられているのです。
ピノ・ノワールの香り
ピノ・ノワールの特徴の香りは、赤く、小さな果実です。サクランボやイチゴ、ラズベリーといった香りが特徴的であり、スミレなどの香りも呈します。
熟成を経ると、なめし革を思わせる動物的な香りを放ち、紅茶や下草などの香りも出てくるため、若い頃とは全く変わった印象を楽しむことができます。タンニンが柔らかいため、飲み口は大変なめらかですが、ほど良いタンニンと酸味が果実味を引き締めます。
ピノ・ノワールの醸造
ピノ・ノワールは、醸造法によってスタイルを大きく変化させる品種として知られています。ピノ・ノワールは、タンニンが少ないことから、除梗をしない全房醗酵が用いられることがあります。
酸度が下がり、さらに雑味が出るリスクがありますが、複雑性が生まれ、ほかにはないユニークな味わいになります。有名なドメーヌなどは全房醗酵を取り入れており、ヴィンテージによってその比率を変化させているようです。
ピノ・ノワールは、繊細な飲み口と香りが重要になるため、含まれている香りの成分を揮発させ過ぎないために、低温で仕込まれるのが一般的です。
味わいに複雑性を出すためピジャージュと呼ばれる、果汁に果皮と種子の成分を抽出する作業が多く行われますが、近年の傾向ではピジャージュをし過ぎない洗練された味わいを目指す生産者が増加しています。
ピノ・ノワールに合わせる料理
ピノ・ノワールは、軽めの料理と合わせると良い相性を示します。熟成させることにより、なめし革のニュアンスが出るために、ジビエなどの個性が強い肉料理とも合いやすくなります。
また、アミノ酸が豊富なワインになるので、和食にも合いやすいです。合わせる料理が不要なほど高級なワインもありますが、日常使いしやすい赤ワインにもなります。