ヴィオニエは、白ワインの生産に使用されるブドウ品種です。ローヌ渓谷の有名なアペラシオンであるコンドリューで、唯一栽培されているブドウ品種であり、その香り豊かな柔らかいキャラクターからは、多くの高品質ワインが生み出されています。
国際的にも認知されている品種であり、栽培地域は世界中に広がっています。フランス以外では、北米、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イスラエル、そして日本でも栽培されています。
ヴィオニエは主に白ワインを生産するために使われますが、地域によっては赤ワインを造る際のブレンドとして使用されています。特に相性の良い赤ワインのブドウはシラーであり、シラーとともにヴィオニエを発酵させることで造られるワインも有名です。
ヴィオニエの歴史
ヴィオニエの歴史はとても古く、その起源や名前の由来ははっきりとしていません。一説によると、ブドウは西暦281年にローマ皇帝が、現在のクロアチアからローヌへ運んできたとされています。また、名前の由来はローマの主要な前哨基地であったウィーンであるという説があります。
1965年、フィロキセラによる被害が広がり、フランスで栽培されるほとんどのブドウが絶滅の危機に陥りました。ローヌ北部ではわずか8エーカーのブドウ畑しか残らず、当時1900リットルのワインしか生産することができませんでした。
その後、木の植え付け技術が向上したことで状況は改善され、ヴィオニエを使用したワインの人気と価格が上昇したことによって、栽植数が増加していきました。現在では、ローヌに740エーカー以上のブドウ畑が広まっています。
1990年代初めの頃より、ヴィオニエの木は世界中で植え付けられるようになりました。
ヴィオニエの栽培
ヴィオニエは暖かく乾いた気候と長い栽培期を好む傾向がある品種です。フランスでは、ミストラルという地方風がローヌ北部のブドウ畑に影響を及ぼし、風が地中海性気候を和らげ、夏の厳しい暑さにさらされるブドウを冷やします。優れた品質のブドウは、樹齢15~20年ほどの木から収穫することが可能であり、中には70年という古いものも存在します。
ヴィオニエは、果実が完全に熟した時期を選んで収穫することに適しています。コンドリューのワインメーカーは、アルコール度数が13%程度のワインを生産するために必要な糖度レベルを持ったブドウを選びます。ヴィオニエは、果実が完全に熟すことで深い黄色を呈し、強い香りと高度なアルコールを持ったワインへ生まれ変わります。
ワインメーカーの中には、通常より遅めの時期にブドウを収穫し、そのブドウを使ってデザートワインを生産する場合もあります。デザートワインに使用されるブドウは、10月下旬または11月上旬に収穫されています。
ヴィオニエのワイン造り
ヴィオニエのワインは、マスカットやリースリングのワインのように、花の香りやテルペンでよく知られています。これらのワインは、栽培された場所や気象条件、樹齢などによってその個性が異なります。
ヴィオニエのワインは主に乾燥しており、ピーチやハニーサックル、ジンジャーブレッドの香りを持っています。
ワイン造りにおいて、生産者たちはブドウを朝早くに収穫し、できるだけ透明な果汁を作ります。一部のワインメーカーではブドウの皮も果実と一緒に使用しており、柔らかい皮の部分にはフェノールが多く含まれています。ワイン造りのスタイルによって、ワインは1年熟成させることもあれば、10年もの長い時間を寝かされる場合もあります。
またヴィオニエは、相性の良い赤ワインのブドウであるシラーとのブレンドとして使用されることで、そのワインを柔らかく香り豊かにする効果があります。
北米では、1980年代後半から、アメリカとカナダでヴィオニエの植栽が劇的に増加しました。カリフォルニア州セントラルコーストには、2000エーカーを超えるブドウ畑があり、ヴィオニエから造られるワインは他のブドウから造られるワインと比べてアルコール度が高くなっています。
ニュージーランドでは、ワイヘケ島とワイララパ地方で少量のヴィオニエが栽培されており、ホークス・ベイ地方では、ブドウを単一の品種として使用するだけでなく、伝統的なローヌ式赤ワインを生産するために、シラーとブレンドさせています。
ヴィオニエのワインの楽しみ方
ヴィオニエのワインは、風味が豊かで印象に残りやすいです。その豊かさは、食前酒として楽しむこともできれば、料理と一緒に味わうこともできます。魚と肉の両方に合い、特に濃厚でクリーミーな料理とは相性が良いです。また、軽度のスパイシーな料理もヴィオニエワインと合い、マイルドなタイカレーのようなクリーミーでスパイシーな料理とは抜群の相性を持っています。