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ケブラダ・デ・マクール

Quebrada de Macul

1995年のワイナリー誕生以来、極少量の個性的なプレミアムワインを生産している、ケブラダ・デ・マクール。そのパワフルで濃厚なワインは、チリワインの常識を覆し、今日、世界中のワイン愛好家に愛されています。

生まれるべくして生まれた、こだわりのワイナリー


チリ、マイポ地方の「アッパーマイポ」 と呼ばれる地域に、マクールという素晴らしい土地があります。このマクールは、アンデス山脈の傾斜地にあり、チリで最も高額なワインを生み出すブドウ園が広がるところ。まさにチリワインの「聖域」と呼ぶにふさわしい場所です。

このあたりの土地は、もともとチリで最も歴史の長い「コウシーニョ・マクール(Cousino Macul)」というワイナリーが所有していたもので、ペーニャ家はそのワイナリーから30haの畑を購入します。

そこで作ったブドウを「コンチャ・イ・トロ」や「サンタ・リタ」「エラスリス」など高級ワインメーカーに卸すことで生計を立てていました。そしてリカルド・ペーニャの代になった時に独自のワイナリーを立ち上げる事になるのです。1995年の事です。

設立当時のパートナー、イグナシオ・レカバレン


彼はチリのワインメーカーにおいてカリスマ的存在で、多数のワイナリーの醸造指導にあたっていました。チリ全土のテロワールを知り尽くしている人物だといっても過言ではありません。

「チリのワインは美味しいが個性がない」とイギリスで批判されたことが、彼のワイン造りへの原動力となり、フランス、カリフォルニア、ニュージーランドで修業を重ねワインを追求し続けました。チリワインの先駆者であるレカバレンは、イギリスのワイン専門誌「デカンター」で『世界の4大醸造家』にも選ばれるほどの人物です。

80年代にサンタリタ・ワイナリーで働いていた彼は、ペーニャ家のブドウを仕入れていたことから、そのブドウを高く評価していました。そこから二人のワイナリー「ケブラダ・デ・マクール」の誕生へとつながるのです。

チリで最も素晴らしいブドウが育つマイポ・ヴァレーで、1996年のファースト・ヴィンテージ「ドムス・アウレア」を1998年にリリースします。このワインは各国のマーケットで称賛され、ケブラダ・デ・マクールは一躍話題のワイナリーとなりました。

しかし2001年、意見の相違によりレカバレンがワイン醸造から撤退。既に醸しの段階に入っていたワインは、パトリック・バレット(エル・プリンシパル・ワイナリー創設者の息子)とパスカル・マーティー(オーパス・ワンに携わったワインメーカー)の手に引き継がれます。

パトリックはセカンドワインの製造にこだわり、降雨量の多さから「ドムス・アウレア」が造れなかった2000年や、それ以前のストックを使用して、よりエレガントな「ステラ・アウレア」を生み出します。

チリにおける「セカンドワイン」の概念は、欧州のそれとは違い、《格下》という意識はありません。あくまでもファーストワインと同じ扱いで、二つのタイプの違うワインを造っているという意識でしかありません。

その後、パトリックとパスカルも意見の相違で、その関係は決裂。2003年から、パトリックは新進気鋭のフランス人醸造家ジャン・パスカル・ラカーズを迎えることになります。1995年のワイナリー設立から3組のワインメーカーが関わってきたドムス・アウレアですが、その品質はいつもドムス・アウレアであり続けたことは、彼らの情熱の証でもあります。

ケブラダ・デ・マクールのワイン造り


ワイナリー設立当時、レカバレンは最先端の技術を導入します。今でこそ当たり前になっているブドウ畑のマッピングもその一つ。

マッピングによって別々に収穫されたブドウを、別々の発酵タンクで醸造し、また別々に管理されたワインをブレンドする、これは当時としては大変珍しいことでした。しかし、ここでレカバレンのカリスマ醸造家としての本領が発揮されます。

複数のタンクから、そのテロワールの個性を主張しているワインを選び出し、ブレンドする割合を細かく決めていくのです。理想とするワインを求めて、レカバレンの追及は続き1998年のデビューでその成果が世に発表されました。そこから、チリのプレミアムワインの歴史が始まったのです。

この土地のテロワールは、水はけがよくやせた土壌と、アンデス山脈からの冷たい風で生まれます。その好条件の元でブドウはゆっくりと熟し、十分な酸を保つのです。

畑は合計30haあり、ブドウの平均樹齢は30年以上。農薬は必要に応じて硫黄、または有機農薬を必要最低限の量で散布します。収穫はすべて手摘みで、選果の後100%除梗し、醸しと発酵はステンレスタンクで行います。27〜30℃で平均1週間ほどです。

樽熟成は、フレンチオーク樽で3ヶ月熟成したのち、80%新樽、20%1回使用樽で16〜19か月熟成させます。清澄作業は卵白使用で、濾過はしません。

栽培品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ベルド

ケブラダ・デ・マクールの主なワイン


ドムス・アウレア

「黄金の家」という名前を持つこのワインは「モヒカン」の愛称で親しまれています。ラベルに描かれたモヒカンの戦士の横顔は、チリの著名な画家;ベンジャミン・ヒーラによるもの。

ドムス・アウレアは、「テロワールの個性」を妥協することなく表現することに強いこだわりを持っています。その年の気候を想像できるほど、ヴィンテージごとの違いがはっきりしていることも特徴の一つと言えるでしょう。

マクール地方の特徴であるミント、ユーカリのアロマと、凝縮感のある果実味、滑らかなタンニンのバランスが美しくエレガントなワインです。

ステラ・アウレア

エレガントさをより追求して生まれたのが、こちらの「ステラ・アウレア」。その意味合いは「黄金の星」です。セカンドワインとして誕生しましたが、今やドムス・アウレアと並ぶプレミアムワインとして生産されています。10年の熟成が可能。

チェリーやストロベリーのフレッシュな果実味と、樽香に重なるスパイス香。タンニンはしっかりとしていながら心地よい酸味も感じます。エレガントで余韻の長い1本です。

アルバ・デ・ドムス

「ドムスの夜明け」と名付けられたセカンドワイン。ラベルの絵は、ドムス・アウレアに描かれている戦士がラフに描かれたもので、そこには「成長したらドムス・アウレアになる」という想いがこめられています。もとはサードワインとしての位置づけでしたが、現在はセカンドワインとして認識されています。手頃な価格ながら、8年の熟成にも耐えうるポテンシャルを持つと言われています。

甘く濃厚な果実香と、樽のバニラ香、土の香りに続く深いコクとボディのしっかりした味わい。スパイシーさにビターなチョコレートのニュアンスも感じるフルボディです。

ドムス・アウレアのラベルのモデルは、初代醸造家レカバレン。ステラ・アウレアは妻。アルバ・デ・ドムスは2人の息子、と3つのラベルで家族をテーマとして描き、現代社会で失われつつある家族の絆や愛情を訴えていると言います。