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フランソワ・ミクルスキ

Francois Mikulski


フランソワ・ミクルスキは、ブルゴーニュ コート・ド・ボーヌを代表する白ワイン銘醸地ムルソーの名手の一人です。1992年の初リリースから、短い間に一気にスター生産者に駆け上りました。テロワールを充分に活かしたワインを造っています。

しっかりとした果実味、素晴らしいミネラルと伸びやかな酸から構成される奥行きのある白。今飲んでも充分に美味しく、長期熟成にもふさわしいワインです。フランスでの人気が高く、日本への入荷数は限られているため、入手が容易ではない生産者の一人です。

カリフォルニアでも修行した異色キャリア


当主が地元で修行し、代々引き継ぐ老舗ドメーヌが多い印象のブルゴーニュにおいて、フランソワ・ミクルスキの経歴はちょっと異色です。彼は1992年に彗星のごとく登場し、わずか10年でスター生産者の地位に上り詰めました。

ブルゴーニュの中核を成すコート・ドール県の中心都市ディジョン出身のフランソワ・ミクルスキは、若い頃はプロのラグビー選手を目指していたという変わった経歴の持ち主。

ワイン生産者になることを決意した彼はボーヌのエコール・ヴィニコールで醸造を学び、その後アメリカに渡り、カリフォルニアのロマネ・コンティとも称される名門「カレラ・エステート」創始者ジャンセンの元で修行します。フランスに帰国後は1984年から1991年まで名門ボワイヨ家の流れを組むドメーヌ・ルシアン・ボワイヨの畑の管理を担当しました。ドメーヌ・ルシアン・ボワイヨの6代目当主ピエール・ボワイヨは彼の叔父に当たります。

1991年、叔父の引退に伴い、畑を借り受ける形で自身の名を冠したドメーヌをスタート。畑の面積は1997年に7.07haまで拡大し、2000年には国道近くの建物およびセラーを購入しました。現在16区画約8haを所有しています。

ワイン造りの哲学


彼がワイン造りにおいてゆずらないのは、「ブドウの持つ良さをそのまま素直に表現する」こと。そして、「ブドウの上品さ・純粋さを最大限に引き出す」ことです。その背景にあるのは、「ブルゴーニュワインとは、私たちの想像をはるかに越えた存在であり、理屈で理解できるものではない。」という確信です。ブルゴーニュワインにおいては、生産者の仕事はブドウの本来持つ魅力を引き出すことのみととらえているのです。

彼はこう主張します。「ワイン造りで大切なのは誠実さ・上品さ・純粋さ」。栽培に対して誠実とは、人を育てるのと同じようにブドウの木を敬い愛情を注ぐこと。そして、入念な準備でブドウを健全で上品な状態に維持管理すること。「全ての要素がプラスの方向に働き、頂点に達した時に『純粋』が生じる」と。

一見抽象的な思想のように見えますが、彼の哲学は実は単純明快。「良いワインとはグラス、ボトルがすぐに空になること」だそうです。

具体的な栽培と醸造


フランソワ・ミクルスキの畑では、農薬の使用を極限まで抑えた「リュット・レゾネ(減農薬栽培)」が採用されています。また、肥料は自家製の堆肥を使用。収量量は、白は45hl/ha〜50hl/ha、赤であれば35hl/haに抑えられ、品質を最優先して管理されています。

ブドウの良さをそのまま表現するため、醸造工程では人の介入を可能な限り減らしています。バトナージュ( バトンBatonを用いて、熟成期間中にワインと底に沈殿した澱を攪拌すること)は最低限しか行いません。白ワインの発酵には天然酵母を用い、岩盤を掘った地下のカーヴで3〜4カ月かけて発酵。このカーブ内は冬の間は6〜8°に保たれています。

熟成はオーク樽で12カ月以上。樽のニュアンスが出過ぎないように、新樽の比率は20%以下に抑えられています。途中澱引きは行わず、澱と一緒に熟成します。試飲を重ねて納得できる状態になったら仕上げとして清澄(コラージュ)を行います。

フランソワ・ミクルスキのワインの特徴


フランソワ・ミクルスキはカリフォルニアで修行経験があり、かつドメーヌ設立当初は多くをアメリカへ輸出していたこともあり、当初の彼のワインはアメリカで好まれるタイプのワインでした。強い圧搾と浸漬法を採用した比較的樽の効いた「濃い」タイプです。

ブルゴーニュの真髄を理解して以降、新樽率は抑えられ、骨格自体はしっかりとしていながら、全体の印象は非常にエレガントで凛としたブルゴーニュらしいスタイルに仕上がっています。

また、どのワインも力強く男性的で長熟タイプであることも大きな特徴です。ブルゴーニュワインという大きなくくりの中で、彼自身の個性が反映された部分です。

エチケットへのこだわり


チョーク文字をイメージしたシンプルなエチケットを採用し、彼のワインの見た目はブルゴーニュとしては異色です。「装いは何も必要ない。必要なのは最低限の情報だけ。大切なのは中身であって外見ではない」というワイン造りに対する彼の美学が表れています。

市場での評価・流通


上級キュヴェが常に高い評価を受けているはもちろんですが、彼のワインで特筆すべきは、A.C.ブルゴーニュ・アリゴテなど手頃な3,000円台からの価格帯のキュヴェにおいても素晴らしいクオリティを保っているところです。ここが彼の真骨頂であり、彼の人気の高さの理由です。

フランス国内でのミクルスキの人気は高く、ボジョレー地区のミシュラン三つ星「ジョルジュ・ブラン」、ブルゴーニュ・ソーリューのミシュラン三つ星「ベルナール・ロワゾー」といった数多くの星付きレストランでオンリストです。

当主であるフランソワ・ミクルスキには世界各国からの要望に応えたいという強い思いがあり、生産量のうち約6割を輸出に回しています。しかし、生産量自体がそう多くないため流通量は限られており、それは日本も例外ではありません。

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