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アタ・ランギ

Ata Rangi

ニュージーランドの地を一流銘醸地に変貌させた功労者





ニュージーランドの首都ウェリントン、そのすぐ北に位置するワイララパ地方は、今ではブティックワイナリーの聖地とも言われ、家族経営のワイナリーが多い事でも有名です。

2つの山脈に囲まれた乾燥した地域で、秋の雨量は国内で最も少なく、秋の寒暖差は国内でもっとも大きいとされています。これにより時間をかけてゆっくりと成熟することができ、ブドウに最適の産地となっています。

しかし1979年頃まで、ワイララパ地方の中心地であるマーティンボロー地区は、人口1500人ほどの小さな町で、主な産業はミルク農家が点在する程度でしたが、1979年に行われた政府の地質調査で、「ニュージーランドで最もブドウ栽培に適した土地」「気候と土壌がブルゴーニュ地方と似ている」と報告された事で一気に風向きが変わっていくのです。

石ころだらけの荒れ地を開拓、実はワインに最適だった





地質調査を担当した、「アタ・ランギ」「ドライ・リヴァ―」「マーティンボロー・ヴィンヤード」などは、当時羊と馬ばかりだったマーティンボロー地区にワイナリーを造ることを決意しました。

アタ・ランギは、そのマーティンボロー地区で最初にワイン造りを始めたワイナリーです。マオリ語で「新しい始まり 夜明けの空」を意味するこのワイナリーは、ニュージーランド産高級ピノ・ノワールを語る上で最も欠かせない代表格と言えるでしょう。

ワイナリーは1980年、クライヴ・ペイトン夫婦、妹夫婦のに4人で設立されました。たった5ヘクタールの石ころだらけの荒れ地を購入しブドウを植え始めましたが、当時は良質なブドウが直ぐには育たないため、垣根の間にカボチャを栽培し生計を立てていたようです。

しかしその場所こそ、後に有名となる「マーティンボロー・テラス」と呼ばれる砂利に覆われたシルト粘土土壌であり、その恩恵を受け凝縮したブドウから造られたワインは、マーティンボローを一躍プレミアム産地にのし上げたのです。

現在アタ・ランギは55ヘクタールにまで畑を拡大、恵まれた条件だけに胡坐をかかず、殺虫剤、化学肥料、除草剤などは使用せず、調合剤やワイルドフラワー、地下の自然の土を掘り起こし散布するなど、サステイナブルと一部バイオダイナミック農法を取り入れるなど進化を続け、愛好家からの絶賛だけでなく他の生産者、また醸造家からも敬愛されるような存在となっています。

ブルゴーニュ最高峰、ロマネ・コンティのクローン苗





アタ・ランギを語る上で欠かせないのが、エイベル・クローンの存在。

かつて、あるニュージーランドの旅行者がロマネ・コンティの畑から不法に持ち帰った、いわゆるスーツケース・クローン。不法に持ち帰った切り枝を、税関職員でワインメーカーであったマルコム・エイブルが没収し、こっそり自宅の畑に植え、増やしたものなのだそうです。

アタ・ランギのクライヴさんがマルコム・エイブルの友人であったため、そのクローンを譲り受けたことから、国内最古の苗木(エイベル・クローン)となったのです!

アタ・ランギのピノ・ノワールはそのほとんどがこのエイベル・クローンであり、ブルゴーニュ最高峰のロマネ・コンティと、元は全く同じ樹が植えられているわけなのです。

ウェリントンで開催された、インターナショナル・ピノ・ノワール2010において、アタ・ランギはNZピノ・ノワールにおける「グラン・クリュ」、「もっとも偉大な成長」と称賛した「Tipuranga Teiteio Aotearoa」賞を受賞しました。

これは「最も偉大な成長」を賞賛するものであり、アタ・ランギが質・評価・知名度において、ニュージーランド国内のピノ・ノワールの発展・成長に大きく貢献したことを表彰したものです。

独特の複雑さ、凝縮感と深みのある洗練されたスタイルで、魂を揺さぶるワインを造るアタ・ ランギには、世界中のピノ・ノワール愛好家から今でも熱い視線が注がれています。