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フィリップ・パカレ

Philippe Pacalet


ブルゴーニュで「自然派」と言えば彼、フィリップ・パカレです。2001年に初ヴィンテージをリリース、瞬く間に「自然派ワイン」の代名詞とも言われるまでになりました。あのロマネ・コンティ社の醸造長へのオファーを辞退してまで自らの理想とするワイン造りを目指した骨のある醸造家でもあります。自然の力を最大限に活かすために最新の化学も導入する…まさにワインの新時代を切り開く開拓者であり、ブルゴーニュでも入手困難なドメーヌとなっています。

自然派ワインの祖、ジュール・ジョヴェに学ぶ


自然派ワインの祖と言われるジュール・ジョヴェ。その最後の愛弟子こそフィリップ・パカレです。「自然酵母を用いる」、「醸造中にはSO2(酸化防止剤)は使用しない」、「野生酵母を守るため農薬、除草剤は使用しない」、「化学肥料を用いない」、「完熟した果実のみ使用する」。実は1950年台までは普通に行われていた栽培、醸造方法でもあります。この非常に手間のかかる古典的であり、現在では新しいと呼ばれる方法を用いて醸されるのが彼のワインの特徴でもあります。

プロフェッショナル集団によるブドウ栽培


フィリップ・パカレ氏はわずかな畑しか所有していません。因みに、所有している畑はブルゴーニュ・アリゴテのみです。多くは賃貸契約畑でブドウを栽培しています。しかし、葡萄耕作会社を設立し、畑のプロフェッショナルを集め彼の細かな指示のもとでブドウ栽培を行っています。各過程ごとに専門チームを作り管理する事で自らが理想とするブドウを栽培しているのです。

彼が重要視しているのは「野生酵母の働き」です。畑にはテロワール(土地それぞれの持ち味)があり、その個性を最大限に活かすには野生酵母の働きが必要不可欠だと考えられています。除草剤、殺虫剤を使えば栽培自体は楽になりますが、大切な畑独自の「野生酵母」を死滅させてしまいます。こうなるとせっかくの畑それぞれの個性でもある土壌のミネラル分をワインで表現することが難しくなってしまうからです。

主役は野生酵母、自然によりそうワイン造り


「野生酵母」を主役とした考えはワイン醸造の過程でも顕著に表れています。ブドウは除便(じょこう…茎の部分を取り除くこと)せず、全便発酵させます。これはロマネ・コンティなどもそうなのですが芳香が豊かになり、タンニンやストラクチャーがしっかりとするメリットがあります(反面、エグ味が強くなったり、手間がかかるなどのデメリットも)。

ゆっくりと時間をかけて酸化を防ぎながらブドウ由来の自然酵母自身による発酵を待ちます。他のドメーヌと違うのは、ここで温度管理も行わず、酵母の自然な働きを促している事です。各区画には30数種の酵母が存在しており、この酵母を最大限に活かすため人為的な温度管理を行わないとの事で…この気が遠くなるような作業が複雑な味わいのワインを醸し出すんですね…正直ここまでこだわる造り手は中々居ないのではないでしょうか?そして醸造過程ではSO2(亜硫酸塩)を不使用でもあります。

ワイン造りは「化学」でもある


自然派と思われつつも、醸造に関しては「化学的根拠」を大切にする理論派でもあります。本人自らは「自然派」とは名乗らず、「本物のブルゴーニュ・ワインを求めた結果、野生酵母を最大限に活かす事、SO2(亜硫酸塩)不使用(醸造過程での)を採用しただけ」と語っていることからも伺えます。近年日本酒で人気の「獺祭」を醸造している蔵元さんも同様で近年、こういった手法の醸造家の方が様々なジャンルで増えて来たように思います。

ワインに過剰な樽香をつけるのを避けるため新樽は使用を抑え、1、2年使用された樽を中心ににしています。当然、ノンフィルター(無濾過)。必要最低量の酸化防止剤(亜硫酸塩)を添加し、全てのライン(グラン・クリュからブルゴーニュ・ルージュまで)で手作業で瓶詰めをしています。

本物の「ブルゴーニュ・ワイン」を追い求めて


伝統的な「本物のブルゴーニュ・ワイン」を求めた結果、所謂「自然派」に辿り着いたフィリップ・パカレ。彼の造るワインの醍醐味は「時間をかけて、ゆっくり楽しむ」という事です。薄い色合いと、滑らかなタンニン。アルコール度数は一般的なブルゴーニュ・ワインより1%ほど低いので、軽やかに感じます。が、時間が経つにつれブドウ本来の旨味が広がる造りに仕上がっています。濃厚なブドウのエキスを堪能出来ます。毎ヴィンテージ完売してしまうのも頷ける名門ネゴシアンの逸品の数々です。

フィリップ・パカレ 主な所有畑一覧


<グラン・クリュ(特級畑)>

シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ
マジ・シャンベルタン
ラトリシエール・シャンベルタン
ミュジニー
クロ・ド・ヴージョ
エシェゾー
コルトン
コルトン・シャルルマーニュ
バタール・モンラッシェ
ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ

<プルミエ・クリュ(1級畑)>

ジュヴレ・シャンベルタン・コンブ・オ・モワヌ
ボーヌ・クロ・デ・レキュ
ニュイ・サン・ジョルジュ・レ・サン・ジョルジュ