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ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ

Vernaccia di San Gimignano


ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは、トスカーナ州のシエナ、ピサ、フィレンツェ近郊、サン・ジミニャーノ地区で生産される白ワインです。

中世の王侯貴族の食卓を飾ってきた白ワイン


その歴史は非常に古く、13世紀後半にはすでにヨーロッパの王侯貴族、法王、富裕な商人たちに愛されていたという記録が残っています。14世紀の詩人フォルゴレも、ヴェルナッチャのワインをその作品の中で讃えています。

「ヴェルナッチャ」という名前は、このワインの発祥がリグーリア州の「ヴェルナッツァ」であったためという説が通説となっています。当時、このワインの需要がどれほど高かったかは、現在イタリア各地の古文書館に残る関税の記録を見れば一目瞭然です。また、ダンテやペトラルカといったイタリア語の父ともいえる偉大なる文学者からフランスの文学者にいたるまで、作品中に「ヴェルナッチャ」のワインを登場させるほど、当時のヨーロッパでは愛され、知名度が高かったワインでした。

リグーリア州からイタリア各地に普及したワイン「ヴェルナッチャ」はしかし、サン・ジミニアーノの地でさらにその質を高めます。当時、サン・ジミニャーノは高価なサフランの生産地として有名でした。この肥沃な土壌で育つブドウから生産される白ワインは、たちまち富裕層の投機の対象になったほどでした。ミラノの君主やフィレンツェのメディチ家をはじめとする貴族が、こぞってサン・ジミニャーノのブドウ園を購入した記録が現在まで残ります。

16世紀には、サン・ジミニャーノの貴族やフィレンツェのメディチ家が競うようにしてヴェルナッチャのブドウを、購入したサン・ジミニャーノ近郊の土地に植えたことがわかっています。また、ミケランジェロのパトロンとして有名であった法王パウルス三世も、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノのワインの大ファンであったことで有名でした。

17世紀には、その醸造技術の向上からヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは黄金時代を迎えました。しかし、18世紀には新大陸からもたらされたお茶、チョコレート、コーヒーなどが普及し、人々の味覚に変化が起こります。ワインの嗜好も変化し、あれほどもてはやされたヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノも生産量が低下しました。

細々とその生産が続いていたヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノが再生するのは、じつに1930年代。トスカーナの有力者が、その再興のために尽力し、1960年代に生産が軌道に乗り始めます。

そして、1966年に「DOC(原産地統制呼称)」を獲得、1993年に「DOCG(保証つき統制原産地呼称)」に認定されました。

現代の「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ」のワイン


現在、「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ」の原料となるヴェルナッチャのブドウは、全原材料の90%におよぶといわれています。ただし、不足の分は必要に応じてシエナ県産の白ブドウを15%までブレンドすることが許可されています。

いずれにしても、サン・ジミニャーノ地区の丘陵地帯で栽培されるブドウの使用しか許可されていません。醸造、熟成、瓶詰めもすべて、サン・ジミニャーノの近郊で行われることが科されています。また、ブドウ園が広がる丘陵地帯は、海抜500メートルが最も高い地点となっています。

現在、このワインは「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノDOCG」と「リゼルヴァ」の2種が存在します。「リゼルヴァ」は、使用するブドウを協同組合に報告する義務が課されています。また、「リゼルヴァ」と名乗るためには、ブドウの収穫年の翌年1月1日から、最低でも11ヶ月の熟成を経ることが条件です。また、出荷される前に瓶の状態でも3ヶ月の熟成が原則なのです。

ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの特徴


美しい黄色が特徴のヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは、年月を経ると黄金色に輝くようになります。香りは非常で繊細で優美、可憐な花々とフルーツの甘さがギュッと詰まっています。ワインが成熟してくると、こうした香りにミネラルの匂いが漂うようになるのです。味わいはドライで全体のハーモニーが絶妙です。後味は、炒ったアーモンドのような香ばしさが残ります。

ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノと料理の組合せ


ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノは、さまざまな料理と組合せがしやすいワインとして知られています。とくに、オリーブオイルをベースにした地中海料理とは、自然に調和する性質があります。トマトソースを使わないシンプルなパスタ、ライスサラダとの組合せは、夏のメニューとして定番となっているほどです。

冬の料理では、トスカーナの郷土料理「リボッリータ」がお薦めです。キャベツやインゲンマメなどを煮込んで、カリカリにトーストしたパンの上にかけて食べる素朴な料理です。

もちろん、白ワインの常で海の幸との相性は最高。魚のグリル、揚げ物、ホイル焼、また生の海の幸ともぜひ堪能してみてください。

そのほかの料理では、卵料理や揚げ物ともおいしく召し上がれます。鶏肉、フレッシュチーズ、旬の野菜のシンプルな料理、といった具合で食卓への登場率が高いワイン、それがヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノなのです。

飲用する時の適温は、スタンダードなタイプで8度から10度、リゼルヴァは12度から14度でお楽しみください。