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スーパータスカン Super Tuscans



イタリアワイン好きでなくとも、ワインをたしなむ方ならば必ず聞いたことがあるであろう「スーパータスカン」もしくは「スーパートスカーナ」。 イタリアのワイン史においても大変重要な出来事だった「スーパータスカンの誕生」についてご紹介します。

スーパータスカンとは、中部イタリア・トスカーナ州で生まれたモダンな造りのイタリアワインのことで、ワイン法の伝統や格式にとらわれることなく、「自由に」そして「美味しさ」をとことん追求したワインのことです。 「たかがそんな事?」と思われるかもしれませんが、スーパータスカンワインが出来る前までのイタリアワインは、伝統的な手法にこだわり、古くから栽培されているブドウ品種を実直に育て、昔ながらの方法で醸造し、国内で消費できればいいレベルのワインが殆どでした。

イタリアは伝統もあり生産量も1、2を争うワイン大国でありながら、随分とワインの発展が遅れていたのです。 しかし「スーパータスカンの誕生」は、そんな閉鎖的なイタリアの視野を世界に向けさせ、品質を劇的に向上させました。

そして1980年代からスーパータスカンは一大ブームとなり、国内のみならず、世界中のワイン愛好家がこぞって買い求めるようになりました。

また、トスカーナから端を発した「国際品種」「品質重視」のワイン造りは、イタリア全土に広がり、イタリア全体の品質の向上にも繋がりました。

イタリアワイン界に、ここまで大きなビックウェーブを巻き起こした立役者が・・・

言わずもがな「サッシカイア」なのです!!

サッシカイアの誕生秘話




トスカーナのティレニア海沿い、斜塔で有名なピサの町から60キロメートルほど南下した所にボルゲリ地区があります。 ボルゲリは、同州のキャンティやモンタルチーノに比べると気候は温暖です。またマレンマ湿地内に位置し、土壌は小石混ざりの粘土質が中心です。

このボルゲリ地区こそが、スーパータスカン発祥の地であり、サッシカイアが誕生した地です。

サッシカイアの誕生は1944年まで遡ります。 ボルゲリに広大な土地を所有していたマリオ・インチーザ侯爵は、大のボルドーワイン好きでした。 しかし第二次世界大戦で敵国だったフランスワインが輸入されなくなり、やむなく自分たちの畑でボルドー風ワインを造ることにしました。 当時から交流のあったシャトー・ラフィット・ロートシルトにそのことを伝えると、快くラフィットの苗木を送ってくれたそうです。

そして1944年、1ヘクタール程の畑にその苗木を植えたのがサッシカイアの始まりでした。 しかしあくまでも自家消費用のワイン。優れた技術もなければ深い知識もなく、造ったばかりの頃は美味しいとはとても言えるものではありませんでした。

サッシカイアが頭角を現し始めたのは1968年のこと。 マリオから息子のニコロに経営が代わり、ちょうどその頃ジャコモ・タキスを迎え入れました。このジャコモ・タキスは、後に「スーパータスカンの父」と呼ばれる人物で、サッシカイアを手掛けた後に、ティニャネッロ、ソライア、アルジャーノ、イタリア南部のアルジオラス、ドンナフガータ、コルヴォ・ディ・サラパルータなど数々のヒットワインを世に生み出すワインコンサルタントです。

ニコロとタスキは、ステンレス発酵タンク、長いマセラシオン、フレンチオークでの樽熟成など、当時最新鋭の技術を駆使し、とにかく「美味しいワイン」を造ることを追求しました。 彼らの功績は最新技術を導入だけれはありません、「ボルゲリ」という新しい産地を発掘し、国際品種ブームの火付け役にもなりました。

もともとボルゲリは、白ワイン用もしくはロゼワイン用のブドウしか栽培されていなかった地域です。そこにカベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を植えたのは、マリオのボルドー好きが高じた偶然だったかもしれません。 しかし、ボルドー・メドック地区は昔オランダ人が干拓の技術を伝えできた土地であり、大西洋海沿いの温暖な海洋性気候です。これはマレンマ湿地ボルゲリに酷似した気候風土であり、土壌もまたグラーヴのように小石に覆われた畑でした。

つまり、ボルゲリはカベルネ・ソーヴィニヨンにとって最適なテロワールであり、ある意味サッシカイアは造られるべくして造られたワインだったのです。

その実力を決定づけたのが、1978年イギリスで最も権威あるワイン雑誌、デキャンタ誌が主催するブラインド・テイスティングにおいて、あのシャトー・マルゴーらの名だたる名門ワイナリーを抑え、サッシカイアがベスト・カベルネの称号を獲得したことです。

これにより一躍世界のトップワインになったサッシカイアに続けと、未開拓地だったボルゲリに多くの資産家が押し寄せワイナリーを建設、国際品種の植樹やバリック熟成などモダンなスタイルのワインが続々と多く造られるようになりました。

そして数々の功績を残したサッシカイアは、1994年にDOCに認定せれるのです。 これは単独ワイナリーとして唯一のDOCであり、「DOCボルゲリ・サッシカイア」と自身のワインがついた名誉あることでした。 法律に縛られないサッシカイアが、ついに法律までも変えてしまったのです。

拡散するスーパータスカン 〜ボルゲリ編〜




サッシカイアの成功により、高品質なスーパータスカンを造るワイナリーが増え、世界中を熱狂させていきました。

今やサッシカイアと人気を2分する「オルネライア」もその一つでしょう。 このオルネライアを生み出したのはイタリアワイン界の名門、アンティノーリ家で、実はサッシカイアの生みの親であるマリオの従兄弟にあたります。

スーパータスカンの2大スターがなんと親戚同士のワインだったのです。

ちなみにアンティノーリ家は、オルネライアのみならず多くのスパートスカーナを造っていて、ボルゲリ地区の「グアルド・タッソ」をはじめ、内陸部のキャンティ地区でも「ティニャネッロ」、「ソライア」などを生み出しています。

また、ボルゲリで忘れてはならないのが「レ・マッキオーレ」です。 代表作であるカベルネ・フラン100%で造る「パレオ・ロッソ」は、マッキオーレ夫婦が描いた夢の完成形です。 ボルゲリ地区の殆どの土地を貴族が所有する中で、農家として22haほどの小さな畑でワインを造る職人気質なワイナリーです。 レ・マッキオーレの特徴は、驚異的な密植度です。1ヘクタールあたり10000株にもなり、果実味豊かな凝縮度の高いワインを造ります。

拡散するスーパータスカン 〜キャンティ編〜




キャンティといえば、トスカーナ州の内陸部に位置し、無数の小高い丘が広がる産地です。 伝統品種であるサンジョヴェーゼを主体に、カナイオーロやマルヴァジーアなどがブレンドされる軽やかなワインが主流だったこの地域ですが、1980年代になると国際品種をブレンドしたり、白ブドウを排除してより複雑で凝縮感のあるワインを造るワイナリーがでてきました。

キャンティ地区におけるスーパータスカンの先駆けとも言えるのが、アンティノーリ家が造り出した「ティニャネッロ」です。

ティニャネッロが誕生したのは1971年のこと。 当時はキャンティ(現在のキャンティ・クラシコ)には、白ブドウの混醸が義務付けられていました。 「それではサンジョヴェーゼの良さを活かしきれいない」と考えた彼は、サンジョヴェーゼと極少量のカナイオーロだけでワインを造り、キャンティとは名乗れないため法律上は格下である「IGTトスカーナ」としてワインを造りました。

軽いワインこそキャンティだったその時代に、この試みは画期的であり、このワインが海外で爆発的な人気をもたらしたことで、キャンティ地区のスーパータスカンブームに火がつきました。

今日では改良が進み、ティニャネッロはサンジョヴェーゼ主体でカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランがブレンドされていますが、国際化を図った訳ではなく、あくまでもサンジョヴェーゼの魅力を最大限に引き出すために考えられたブレンド比率でした。

そしてアンティノーリが造るもう一つのスーパータスカンが「ソライア」です。 ソライアはティニャネッロの鏡の様な存在で、畑は隣同士、使用ブドウの構成比率はちょうど真逆になっています。カベルネ・ソーヴィニヨン主体で、サンジョヴェーゼとカベルネ・フランが混醸され、ちょっとした遊び心あるワインですが、その味わいはボルドーにも引けを取らない品格のあるワインです。

ティニャネッロの登場により、昔と変わらずキャンティを造っていた生産者たちは、サンジョヴェーゼの価値について改めて見直すようになったのです。 サンジョヴェーゼに国際品種をブレンドしたモダンなワインを造るもの、逆にサンジョヴェーゼ100%で品質の高いワインを造るものなどが出現していきます。

当時はどれも、「キャンティ」、「キャンティ・クラシコ」とは名乗れませんでしたが、品質のよいサンジョヴェーゼ主体のワインが次から次へと造られ、最終的にはキャンティ・クラシコの法律までも見直されるようになったのです。 (現在のキャンティ・クラシコの規定は、サンジョヴェーゼ100%可、白ブドウのブレンド廃止、国際品種20%まで使用可)

その他スーパータスカンを造る有名なワイナリー




ポデーレ・ポッジオ・スカレッティ

グレーヴェ・イン・キャンティでサンジョヴェーゼ100%のワインを造る「イル・カルボナイオーネ」

クエルチャベッラ

グレーヴェ・イン・キャンティで造るカベルネ・ソーヴィニヨン主体で、サンジョヴェーゼをブレンドした「カマルティーナ」 そしてシャルドネとピノ・ビアンコ半々で造られる「バタール」

トゥア・リータ

トスカーナの中ではマイナーな産地スヴェレートながら、ワイン・スペクテイター100点を獲得する快挙を成し遂げ一躍有名になったメルロー100%の「レディガフィ」

フォントディ

サンジョヴェーゼ100%をフレンチオークのバリックで熟成させた「フラッチャネッロ」

アルジャーノ

ブルネッロで有名なモンタルチーノ村で造られるスーパータスカンワイン。カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シラーをブレンドした「ソレンゴ」

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