モンラッシェ Montrachet

世界屈指の白ワインが生まれる、ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌ。最も北側にあるコルトン・シャルルマーニュ、ボーヌから南に下ったところにあるムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェの3つの村は、「ブルゴーニュのコート・ド・ブラン（白）」と呼ばれることもある、世界規模で見ても屈指の白ワインの銘醸地です。

中でもピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村は、白ワインの聖地とも言える場所。いずれの村も元々は単に「ピュリニー村」「シャサーニュ村」と言われていましたが、偉大なモンラッシェの畑にあやかる形で、19世紀にそれぞれピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村という名前になりました。コート・ド・ニュイのジュヴレ・シャンベルタン村が、偉大なシャンベルタンの畑にあやかって付けられたのと似ていますね。

ピュリニーとシャサーニュには、「モンラッシェ」と名の付くグラン・クリュが5つあります。大元となる白ワインの世界最高の畑モンラッシェと、バタール・モンラッシェはピュリニーとシャサーニュに跨って存在します。シュヴァリエ・モンラッシェとビアンヴニュ・バタール・モンラッシェはピュリニー側に、クリオ・バタール・モンラッシェはシャサーニュ側だけにあります。

この5つのモンラッシェ系のグラン・クリュ、どれがピュリニー側でどれがシャサーニュ側か、完璧に覚えておくのは難しく、ソムリエ試験等でも度々出題されます。まずモンラッシェとバタールは両方にあると覚えてしまい、次にシュヴァリエ・モンラッシェはピュリニー側と覚えます。残りの2つが混乱するポイントですが、クリオ・バタールの頭文字が「C」なので、シャサーニュの「C」と一緒だからシャサーニュ側と覚えてしまえば、残りのビアンヴニュはピュリニー側となります。

モンラッシェ系のグラン・クリュ（特級畑）

モンラッシェ（Montrachet）
バタール・モンラッシェ（Batard-Montrachet）
シュヴァリエ・モンラッシェ（Chevalier-Montrachet）
ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ（Bienvenues-Batard-Montrachet）
クリオ・バタール・モンラッシェ（Criots-Batard-Montrachet）

モンラッシェ（Montrachet） 7.99ヘクタール

約8ヘクタールの畑を、ピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村が約半分づつ分け合っています。厳密にはシャサーニュ側の畑を「ル・モンラッシェ」、ピュリニー側の畑をただの「モンラッシェ」と言うようですが、あまり意味は無く、敢えて「ル・モンラッシェ」と名乗る生産者も殆どいません。

誰もが認める世界最高の白ワインを産み出す畑で、全てのワイン好きにとって、一度和味わってみたい憧れのワイン。ワイン生産者にとってもモンラッシェを所有することは長年の夢であり、現在は16の生産者が分割して所有しています。

モンラッシェという名前は2つに分解出来ます。「Mont」は山を意味し、「Rachet」は裸という意味で、日本語で分かりやすく言うとハゲ山という意味です。モンラッシェの斜面の山頂部分は石灰岩で、木が殆ど育たない事からこう呼ばれていたようです。

モンラッシェの畑の斜面は、全て南と南東向きに位置しており、太陽の光を長時間に渡って浴び続けることが出来ます。土壌は泥灰岩まじりの石灰質土壌で、水捌けがよく、固い石灰岩の底土にブドウの根をしっかりと下ろす事ができるため、そこから良質のミネラルを吸収することが出来ます。

ブドウ栽培の歴史は古く、1252年の文献には既に「モンラシャのブドウと畑」という記載があります。1483年の借地台帳には、シャサーニュ側にブドウの木を植えた記録が残されています。19世紀の初頭には既に最高の白ワインとしての地位を固めており、1831年にはドニ・モルロ博士が「軽やかにして香り芳しく、精緻にして妙なる繊細さを宿し、エスプリに富むも辛口にあらず、このうえなく甘美なるも鈍重にあら。人が口にできるブドウ酒の中で最良たるべし」と語っています。モンラッシェに関連する名言は他にも沢山あり、「ひざまづき、脱帽して飲むべし」と語った三銃士の作者アレクサンドル・デュマの言葉はあまりにも有名です。

斜面の上部にはキリッとしたシャープさが特徴のシュヴァリエ・モンラッシェがあり、斜面の下部にはパワフルさが特徴のバタール・モンラッシェがありますが、ちょうどその2つの良い部分を持ち合わせており、絶妙にバランスするその味わいは、何世紀に渡っても世界最高の白ワインであり続けています。

モンラッシェの主な生産者（畑の所有者）

世界中のワイン生産者が、ほんの少しでも良いから所有したいモンラッシェの畑。現在16の選ばれし生産者のみが所有していますので、畑の所有面積の多い順に並べてご紹介します。ちなみに、ここで紹介する生産者意外にもモンラッシェをリリースしているネゴシアン等もありますが、いずれかの生産者からブドウを購入しています。誰から買ったかは内緒の場合が多いです。