大きな変革期を迎えているドイツワイン!今飲みたいおすすめ10選!

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ドイツワイン

「ドイツのワイン」と聞いて、思い浮かべるのはどんなワインでしょうか?
「ドイツワイン=ほんのり甘い白ワイン」という図式は、少し前のこと。
ワイン大国フランスのお隣、言葉は悪いですが、少し地味な印象も拭えません…。

でも、今のドイツワインはすごい!

より良い物を造るために独自の品質基準を作ったり、互いに切磋琢磨している若手醸造家団体が現れたり…。ドイツワインのレベルは、一昔前に比べて格段に上がっています。

実は、毎年3月に開かれる、ヨーロッパ最大のワイン国際見本市「ProWein(プロヴァイン)」が開かれるのも、フランスではなくドイツなんです。

ちょうど今年2021年はワイン法の改正もあり、ドイツワインにとって節目ともいえる年。

再び大注目のワイン産地ドイツについてと、おすすめのドイツワインも一緒にご紹介していきたいと思います。

ドイツのワインは甘口の白ワイン?

少し前まで、日本で気軽に楽しめるドイツワインといえば、少し甘口の白ワインだったこともあるのか、「ドイツワインは甘い」というイメージが定着しているように思います。が、今ドイツワインの生産量の70%を占めるのは、辛口ワインなんです。

このドイツワインの辛口へのシフト、ドイツでのワインの位置づけとも少し関係があるようです。

それは、お茶代わりに飲んでいたものから、食事中に飲むものへと変化したこと。

ドイツの夕食は、伝統的に、パンとチーズ、ハムなどのコールドミートなど、あまり手をかけずに済ませるものでした。しかしながら、20世紀後半から、夕食に調理した温かいものを食べるようになったり、フランスやイタリアのように、食事と合わせてワインを楽しむ習慣ができました。

それまでのワインは、会話の合間に喉を潤す飲み物でした。つまりおしゃべりの合間にワインを飲むという感じだったので、甘口のワインでもよかったのですが、食事に合わせるなら、やっぱり辛口のワインですよね…。

そういった国内の事情と、世界的な辛口ワインのトレンド、両方の需要があり、ドイツでの辛口ワインの生産量が増えています

そして、白のイメージが強いドイツワイン。なんと、現在ではぶどう畑の33%で、赤ワインを造る黒ぶどうの栽培がされています。黒ぶどうの筆頭シュペート・ブルグンダー、いわゆるピノ・ノワールの栽培面積は、フランス、アメリカに次いで、世界第三位です。

ドイツといえば・・・のリースリング

「ドイツの白ワイン」といえば、やっぱりリースリングです。
やっぱり、ドイツはリースリング大国なんだと思わせるデータがあります。

リースリングの栽培面積なのですが、ダントツの1位はドイツの24,049ha!(deutscher wein statistik2020/2021より)。あるデータによると世界全体の約47%を占めています。2位のアメリカの4倍以上の栽培面積です。

リースリングといえば、伸びやかで美しい酸が一番の持ち味!

この「伸びやかで美しい酸」を育む一つの要因は、冷涼な気候です。
近年の地球温暖化の影響で、ぶどうは熟しやすくなり、美しい酸をキープしたままぶどうを収穫するのに、どの産地も試行錯誤しています。ただ、もともとワイン産地としては北に位置するドイツは、温暖化による影響はまだ小さく、美しい酸を持つワインを造ることができています。

収穫量だけでなく、味わいにおいても、ドイツのリースリングは抜きん出ているんですね!

ドイツワイン法の改定

正直言って、少々とっつきにくいドイツワインのラベル。ドラジェ倉庫でも、ピッキングスタッフが少し苦手なワイン棚がドイツの棚だったりします。

どんなドイツワインのラベル、今年のワイン法の改正で、少しわかりやすくなりそうです!

ドイツに最初のワイン法が成立したのが1892年。その後、1971年に施行された改正ワイン法で、簡単にいうと「ぶどう果汁の糖度によって格付け」が決まることになりました。カビネット・シュペトレーゼ・アウスレーゼ・・・というおなじみのスタイルです。ドイツがあるのは、樺太と同じくらいの緯度の寒い地域。よく熟した甘い果汁から造られる甘いワインは手軽に糖分が保有でき、古来より貴重品だったことも、そのような制度ができた背景のひとつです。

従来の「ぶどう糖度による格付け」が続く一方で、2001年に発足した生産者団体VDP(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)は、独自に「地理的呼称範囲による格付け(ぶどう畑への格付け)」を始めました。というのも、どんなに良いぶどうを収穫しても、果汁の糖度だけで格付けがされてしまうと、ある一定の評価しか得られないことになってしまいます…よね。大変な思いをして作ったぶどうに正当な評価がされないことで、ぶどう作りをやめてしまう農家も現れたそうです。

また2009年8月には、EU全域に「ワインの地理的呼称制度」が導入されました。ドイツでも一部地域で地理的呼称による格付けが導入されていたこともあり、「ワインの価値=ぶどう畑の格付け」という考え方にシフトしていく流れが強まっていきました。その頃のドイツ国内では、従来の「果汁糖度」による格付けと、「地理的呼称」による格付けが並行して行われており、消費者には少しわかりにくい状態になっていました。

そして、とうとう2021年、ドイツワイン法で、本格的な「地理的呼称制度」が施行されることになりました。
すごく大雑把にいうと、ブルゴーニュの格付けに近い形、「畑ごとにきちんと評価しましょう」ということです。(約5年間は移行期間として、今までのラベル表記が認められます)

ここからは、少し細かい話になるのですが、ドイツワインの大半を占める、13ある特定地域(ラインガウ、ファルツやバーデン等々)のぶどうのみを使った地域名ワインQualitatswein(クヴァリテーツヴァイン:g.U.と標記)をさらに細分化し、


■Einzellage(アインツェルラーゲ:単一畑)
■Erstes Gewachs(エアステス・ゲヴェックス:1級畑)
■Grosses Gewachs(グローセス・ゲヴェックス:特級畑)

の標記、つまり、ぶどうの出自が明記がされるようになります。
これからはラベルを見れば、どこで獲れたぶどうを使ったワインなのかがわかりやすくなり、ワイン選びが楽しくなりそう!

ドイツワイン法の改正について興味のある方は、ドラジェでもお世話になっているインポーター ヘレンベルガーホーフさんのHPにわかりやすい解説がありましたので、ご覧になってみてください。

ソムリエおすすめ!ドイツの白ワイン

お待たせしました!

それではまずは白ワインから、紹介していきたいと思います。

ドイツ地理的呼称制度の生みの親が造る特級畑のキュヴェ <ファルツ>

フォルスター ウンゲホイヤー リースリング トロッケン グローセス・ゲヴェックス 2018 フォン・ウィニング 白

1990年代後半から、ドイツの伝統品種によるテロワールを表現する辛口ワインを目指す生産者が現れた、ドイツ南部のファルツで、ぶどう畑の格付けを始めた生産者の一人がこのフォン・ウィニング。
特級畑(グローセス・ゲヴェックス)のぶどうを使用し造られたこのワインは、りんごやスイカズラの花の蜜、スモーキーなニュアンスとローストアーモンドのフレーヴァーなどが顔を出し、奥行きのある香り。高い酸味をキープしながらも心地よい甘みがあり、しっかりとした味わいの逸品です。

世界最高峰の白ワインの造り手の造るお宝ワイン <アール>

ヴィルティンガー・ブラウネ・クップ・シュペトレーゼ 2018 エゴン・ミュラー 白

ドイツを代表する醸造家エゴン・ミュラー。所有するドイツ5大畑のひとつ「シャルツホーフベルガー」から造られる極上の白ワインは、別名「ドイツのロマネ・コンティ」。
このワインは、シャルツホーフベルガーと同じヴィルティンゲン村にある、わずか4haのブラウネ・クップのぶどうを使用した、意外と知られていないエゴン・ミュラーの逸品。
レモンやリンゴ、マスカットなどの、爽やかでよく熟れた果実の香りと、アカシアの白い花のニュアンス。フレッシュで透明感のある甘やかな果実味とシャープな酸、ミネラルのバランスが素晴らしい、非常にエレガントで気品あふれるワインです。

軽やかでフルーティ 典型的なラインガウ・リースリング  <ラインガウ>

リースリング トロッケン ソヴァージュ [2019] ゲオルグ・ブロイヤー <白> <ワイン/ドイツ>

ラインガウにあるゲオルグ・ブロイヤーの醸造所。非常に傾斜のきつい畑のぶどうを使って、とびっきりのワインが造られています。現当主のテレーザさんは非常に明るく、情熱を持ってワイン造りをしている方なんです!

このソヴァージュは、この醸造所のベーシックカテゴリーのワイン。3つの村(リューデスハイム、ラウエンタール、ロルヒ)のぶどうを使って造られた、軽やかでフルーティな、典型的なスタイルのラインガウ・リースリングです。実は、筆者も大好きなワイン、ぜひ飲んでみていただきたいです!

「モーゼル御三家」の一人・ゴーミヨ誌も認める生産者の甘口ワイン <モーゼル>

ヴェレナー・ゾンネンウーア リースリング シュペトレーゼ 2006 ヨハン・ヨゼフ・プリュム 白 

モーゼルを代表する生産者ヨハン・ヨゼフ・プリュム(ラベルには「Joh.Jos.Prum」と表記されています)。
お手本の方ようなモーゼル・リースリングを造り、安定した高品質ワインを造る生産者としても、高い評価を受けています。
完熟した遅積みぶどうを使用した甘口のこのワイン、ただ甘いだけではない、リースリングならではの透明な酸味と繊細で爽やかな味わいは、まさに極上の味わいです。

フランケンにこの生産者あり!ゴーミヨも3つ房評価のジルヴァーナ<フランケン>

シルヴァーナ QbA トロッケン 2019 ユリウスシュピタール

16世紀末に設立され、ドイツ東部フランケンに168haものぶどう畑を所有する、ドイツ国内でも最も有名な醸造所のひとつとして知られているユリウス・シュピタール。
ドイツを代表する品種ジルヴァーナを使ったこのワインは、レモンや洋ナシ、熟したリンゴなど、いきいきとした果実の味わい。ドイツの春の風物詩アスパラガスとの相性は抜群だそうです!

あの有名シャンパンメゾン「マム」のルーツが造る北限のリースリング <ラインガウ>

フィフティ・ディグリー リースリング トロッケン 2019 フォン・マム 白

あのシャンパーニュのグラン・メゾン マムのルーツともいえる、ドイツの「フォン・マム」。1822年にワイン造りを開始しました。ぶどう栽培の北限といわれ、マム家が所有し、大事にしてきた北緯50度に位置する秀逸な畑のリースリングを使用して造られたのがこのワインです。
熟した桃、青リンゴを思わせる爽やかな香りと熟したレモンのニュアンス。爽やかで、フレッシュながらも、キリっとした印象のエレガントで調和がとれたワインです。

ソムリエおすすめ!ドイツの赤ワイン

近年、めきめき実力を上げているドイツの赤ワイン。

特にシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)の品質には、目を見張るものがあります。

おすすめの2本をご紹介します。

ドイツ辛口赤ワインの祖 職人気質の生産者のシュペート・ブルグンダー <ファルツ>

ベッカー シュペートブルグンダー 2016 フリードリッヒ・ベッカー 赤

歴史的に領有権の争われた、フランスとドイツの国境にあるベッカー醸造所。ぶどう畑はフランス、醸造所はドイツにある、ちょっと変わった醸造所です。
若い頃に旅したブルゴーニュで、ロマネ・コンティのピノ・ノワールに出会い、衝撃を受けた当主のベッカーさん。1970年代初めにワイン造りを始めましたが、甘口ワインがまだまだ主流だったこの時代に、彼が造ったのはブルゴーニュスタイルの「辛口の赤ワイン」。貴腐ワイン用の甘いぶどうばかり生産していた他の生産者からは「酸っぱくてまずいぶどう」だと非難を浴びました。(そのことは、イソップ童話「ぶどうと狐」をモチーフにたエチケットにも表されています。)

しかしながら、静かな情熱と努力、センスで、ゴー・ミヨ誌で、8度もの最優秀赤ワイン賞受賞を成しとげ、ドイツにおけるシュペート・ブルグンダーのトップ生産者になりました。
このシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)は、ベッカーさんの造るピノ・ノワールのエントリークラスのワイン。チャーミングで華やか、軽快でありながら、ピノ・ノワールの色気をしっかり感じる、余韻の長いワインです。

やまとなでしこの手がける、和食に合うシュペート・ブルグンダー <ファルツ>

シュペート・ブルグンダー・トロッケン 2014 ヨーゼフ・ビファー 赤

ドイツの大学で、シュ-ル・リーを研究し、銘醸地ファルツのダンデスハイムにある醸造所再建を成し遂げた徳岡史子さん。銘醸地ファルツで19世紀から続く「ヨーゼフ・ビファー醸造所」の後継者に抜擢され、2013年からワイン造りをスタートしました。
自社畑で丁寧に造られたシュペート・ブルグンダーを使ったこのワインは、透き通ったきれいな酸とピュアな果実味が持ち味。なぜか彼女の手掛けるワインは、日本の食事とぴったりな味わい。ぽん酢だれのしゃぶしゃぶや、しょうゆ味を使ったお料理と相性抜群です。

いち早く地理的呼称制度を取り入れたシュペート・ブルグンダーの伝説的生産者  <バーデン>

アルテレーベン シュペートブルグンダー 2017 ベルンハルト・フーバー 赤 

ライン川のフランス・アルザスの対岸にあるバーデン。お隣アルザスの食文化の影響を受け「料理を引き立てるワイン」を目指した生産者のひとつが、フーヴァー醸造所。VDPによる地理的呼称制度をいち早く取り入れ、テロワールを生かしたワインを目指した醸造所でもあります。
研修生だったころ、故郷のマルターディンゲン村が、かつてはピノ・ノワールの一大産地であったことを知った先代のベルンハルトさん。ブルゴーニュの地質に酷似しているこの地で造ったシュペート・ブルグンダーは、高く評価され、ゴー・ミヨ誌で何度も最優秀醸造家賞を受賞しています。2014年に急逝したベルンハルトさんの後を継いで、現在は息子のユリアンさんがワイン造りを行っています。
このワインは、息子のユリアンさんが造ったシュペート・ブルグンダー。村名入りクラスのワインで、マルターディンゲン村の樹齢20年前後のピノ・ノワールのみを使用しています。何度か使用した小樽で熟成を行っており、 程よい樽の風味があり、食事にも合わせやすいワイナリーの看板ワインです。

ソムリエおすすめ!ドイツのスパークリングワイン

ドイツのスパークリングワインの代表といえば、ゼクト。

シャンパーニュと同じ、瓶内二次発酵を行って作るスパークリングワインです。

リースリングの魔術師の手がける贅沢なゼクト! <ミッテルライン>

ゼクト バハラッヒャー・リースリング Sekt.b.A. 2014 ラッツェンベルガー 白

ドイツのワイン産地の中でも北に位置するミッテルラインにあるラッツェンベルガー醸造所。地の利を生かしたまろやかで果実味に満ちたエレガントなリースリングを、親子3代で造る家族経営のワイナリーです。
ご紹介するゼクト(スパークリングワイン)は、ワイン漫画「神の雫」でも取り上げられ大人気となったことのあるゼクト。シャンパーニュと同じ瓶内二次製法で造られるゼクト、ラッツェンベルガーさんの看板でもあるこのゼクトの熟成期間は、なんと5年!瓶詰め前に補填される「門出のリキュール」と呼ばれる甘口ワインも、7年もののアウスレーゼを使用している、なんとも贅沢な造りのゼクト!
この造りにして、この価格。ぜひ一度は飲んでほしいドイツのスパークリングワインです。

おしまいに

今や「甘い白ワインだけではない」ドイツワイン、いかがだったでしょうか?
もっともっとご紹介したいワインがありますが、今回はここまで。

軽やかでフルーティ、低アルコールで飲みつかれしないドイツワインは、間違いなく「これから来る!」と筆者は思っています。

ぜひ、ドイツワイン飲んでみてください!

そして、心が痛みますが、今年2021年7月には、ドイツ西部の生産地アールは大洪水にも見舞われました。
ワインを飲んで、現地の生産者さんの支援につながれば嬉しいな、と思っています。

この記事が、ドイツワイン好きが増えるきっかけになれれば、嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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