近ごろよく耳にする言葉、持続可能性、SDGs、サスティナブル、オーガニック、ビオロジック、ビオディナミetc…
ワイン業界にもその波は訪れていて、いままでならコンクールの金賞マークが張ってあるエチケットのわきに、見慣れないマークが張ってあるのをよく見かけます。
今回はボルドー委員会のセミナーで勉強してきた、EU圏内でのワイン認証マークの情報を皆さんに共有したいと思います!
目次
はじめに
まずはこの認証マークについて、大きく分けて二つあることを説明しましょう。
1、生産活動全般に関する認証
2、ワイン(ブドウ栽培)に特化した認証
1、生産活動全般に関する認証
こちらについては、国や団体、認証機関の定める基準を持たした農作物や畜産物、加工品にたいしてマークの付与を許可する、というもの。
ブドウ栽培を始め、穀類や野菜、果実や畜産など、対象は多岐にわたり、それらを使った加工品にも対象が広がるパターンもあります。
2、ワイン(ブドウ栽培)に特化した認証
ブドウ栽培やワインそのものに対して基準を設けている認証。
仕様書が、ブドウ栽培やワイン製造に特化しています。全般に対する認証に比べ、知名度では劣ることが多いですが、ワインの官能試験が入ることもあり、有名生産者が認証されていたりなど、ワイン愛好家にとってはこちらの方が、より重要かもしれません。
では最初に1、生産活動全般に関する認証から見ていきましょう!
生産活動全般に関する認証
生産活動全般に関する認証。
認証団体やマークによって、農業だけなのかそれよりも広いのかは変わってきますので、確認が必要です。
HVE
HVE
(HAUTE VALEUR ENVIRONNEMENTALE)
日本語にするならば、環境価値重視認定。
最近よく目にする認証マークかと思います。
主にサステナブル(あらゆる面での持続可能性)に対して定められた環境認証マークです。対象はフランスの農業全般で、農場に対して与えられる認証。
フランス政府がさまざまな有識者を集めて開催した、環境グルネル会議で提案され、フランス農業・食糧省が3段階の環境認証を創設しました。
HVEは、そのうち最も厳しいレベルにあたるレベル3に相当し、以下の4分野において達成度合いを判断されます。
・生物多様性 ・殺菌、殺虫剤 ・施肥 ・灌漑
なぜワイン業界でHVEをよく見るのかと言うと、ブドウ栽培が先行して取得を奨励しているから。特にボルドーでよく見るかと思います。
マーク自体にあまり見覚えがないかもしれませんが、ワインの仕様書や資料には載っていることがあります。
ユーロリーフ/ABマーク
ユーロリーフ
EU圏内での有機農業全般を対象にしています。
EUの有機農業規則に従って生産された農産物であることを証明するマーク。
認証機関のコードも併せて記載されなければなりません。
2010年からEUで生産された有機農業からの食品について、表示義務化。
ワインに関していえば、直近の最低3年間、合成化学薬品を使わないことを求められます。
緑の背景に、欧州旗の象徴12個の星でかたどられた葉の形。ヨーロッパの環境認証というとこれを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ABマーク
実は1985年に誕生しているABマーク(こちらはフランス農業・食糧省の管轄)と規定がほぼ同じで、ユーロリーフは必須であるのに対し、ABマークに関しては任意で掲載が可能、と言うことになっています。
デメテール
デメテール(デメター)Demeter
1932年に、ドイツにて認証組織が設立されたビオディナミ農法の認証機関。英語ではデメター
対象は農業全般(ワインを始め、スピリッツやビール、食料品、さらに化粧品なども対象)
国際的に広がっており、65か国の生産者がデメテール認証を取得。
フランスが最も多く、全面積の9%がフランスの生産者の農地。ワイン生産者が多いことでも知られています。
ビオディナミ農法自体の説明は今回は割愛するとして、詳細な仕様書があり、ワインの官能試験はないものの、認証としては最も厳格である、との表現もあります。
オレンジ色に手書き風の文字をあしらったロゴ。あまりワインのエチケットには用いられない色とデザインだからこそ、よく目立ちます。ちなみにユーロリーフとのダブル認証も可能です。
ワイン(ブドウ栽培)に特化した認証
次にワイン(ブドウ栽培)に特化した認証を紹介します。
対象が限られている分、ある意味他の認証マークよりわかりやすいかもしれません。
テラ・ヴィティス
テラ・ヴィティス Terra Vitis
1998年にボジョレーで設立された、サステナブル系の認証。結成されたテラ・ヴィティス全国連盟が管轄しています。
対象は、100%ブドウ栽培に特化した認証。
HVEがレベル3に認定されている、フランス農業・食糧省が創設した3段階の環境認証のうち、レベル2に認定されています。
環境保全(カバークロップ、生垣、自然の捕食者の活用など)、社会的責任(畑からグラスまでのトレーサビリティ、 HACCP による衛生管理、従業員教育など)、経済的持続性(法令遵守など)を三つの柱とした仕様書を作成。
その仕様書を遵守することによって、農家と製品に対する認証を出します。
企業の社会的責任までカバーしているのが特徴です。
現状、上記三つよりは目にする機会が少ないかと思いますが、メンバーは年々増加しており、今後目にすることが増えるかもしれません。
ビオディヴァン
ビオディヴァン Biodyvin
1995年にフランスで設立されたビオディナミ農法の認証。
運営は、生産者組合SIVCBD( SYNDICAT INTERNATIONAL DESVIGNERONS EN CULTURE BIO DYNAMIQUE)
対象はワインに特化しています。
仕様書の内容はあまり細かくありませんが、テラ・ヴィティスと違い、認証取得にあたってワインの試飲があるのが特徴です。
フランスを中心に小規模に広まっている認証マークですが、DRCやクロ・ド・タール、シャトー・ポンテ・カネなど、世界的に有名な生産者が取得しています。
その他
これまで紹介してきた認証マークは、国や国際組織など大きい団体が管轄しているもので、目にする機会も多いと思います。
実はほかにもいろいろとあったりするので、簡単に紹介したいと思います。マークの画像は省略します。
AGRI CONFIANCE
フランスの協同組合の組合員が対象。
ワイン以外にも幅広く対象製品があり、環境保全を目的としています。
AREA(Agriculture Respectueuse de l’Environnement en Aquitaine)
ボルドーのあるヌーヴェル・アキテーヌ圏の認証。農家を対象にし、環境保全が目的。
3段階の環境認証でレベル2に認定されています。
ナチュール&プログレ (Nature & Progres)
1964 年フランスで設立された、有機農業の先駆者的組織。
対象は生産活動全般で、ABマークよりも厳しい規定を持っています。
IQUEビオ・コエランス(Bio Coherence)
2010年に開始。フランスで生産されたもの(原材料もフランス)に対してのオーガニック認証。
EU規定よりも厳しい規定を持っています。
ISO14001
国際標準化機構(ISO)が策定した環境マネジメントシステムの国際認証規格。
企業活動の環境への影響を把握し、影響を減らす仕組みの構築を目的としています。
ボトルにロゴが提示されるわけではありませんが、ワイナリー単位で取得しているところもあります。
まとめ
ワインのエチケットや裏ラベルにみられる、環境認証マークに関してまとめてみました。
サステナブル、オーガニック、ビオディナミなどなどさまざまな立場でのマークがありますが、ワインを選ぶ際に参考にしてみてください。
ワイン業界ともども、日々進化しているので2022年時点での情報と思ってくだされば幸いです。