スペイン産スパークリングワインの代名詞「カヴァ(カバ)」。その品質はもちろんのこと、生産量の多さや驚く程の安さで世界中で愛され、シャンパーニュ、プロセッコと並んで世界三大スパークリングワインの一つとして知られています。
普段スパークリングワインはあまり飲まない…。という方にも是非教えたい、カヴァの美味さ!そして、こんな料理と合わせるとヤバい程美味しくなる方法を、今回はちょっとだけお教えしたいと思います!明日からは、風呂上がりのビールではなく、風呂上がりのカヴァになる!?
目次
カヴァってなに?
スペインを代表するスパークリングワイン、カヴァ。名前は聞いたことあるけど、他のスパークリングワインと何が違うの?そう思っている方も多いかと思いますので、ここで少しカヴァについての簡単な説明をしたいと思います。尚、CAVAの正式な日本語表記は「カバ」が正解とのことなのですが(スペイン語でVもBもバビブベボで発音するから)、動物の「カバ」がどうしても出てきてしまうのと、日本では「カヴァ」の方が認知されている点も踏まえて、カ「ヴァ」と表記しております。
カヴァの生産地
カヴァとは、二次発酵を瓶内で行う製法により生産されるスパークリングワインのD.Oです。スパークリングワインの製法はいくつかあり、大きなタンクで泡を発生させてから瓶詰めするシャルマ方式や、後から炭酸ガスを注入する方式もあるのですが、一番質の高いスパークリングに使われる方式が、この瓶内二次発酵方式です。
シャンパーニュ地方でも採用され、別名シャンパーニュ方式と言われるこのやり方。ボトルごとにワインを二次発酵させ泡を生み出してていくので、手間も時間もかなりかかるのですが、よりきめ細かく持続性のある泡を生み出し、非常に質の高いスパークリングワインを造り出す方法です。カヴァではこのやり方を採用しています。
また、カヴァの生産地域はちょっと特殊。というのも、「リオハ」や「リベラ・デル・ドゥエロ」のように、一つの決まった生産地域だけでしか名乗れません!というのではなく、複数の州に産地が広がる広大なD.O(原産地呼称)なんです。別に「カヴァ州」というのがあるわけでなく、スパークリングワインの名称が原産地呼称となっているのが特徴です!
認定生産地域は、バルセロナで有名なカタルーニャ州や、バレンシア州などが認められていますが、その総本山ともいえるのがカタルーニャ州。実にカヴァ生産量の95%をここで生産しています!
カヴァで使われているブドウ品種はなに?
カヴァに使用できる品種は決められていますが、主に用いられるのは以下の3つが中心。生産者たちはこれらのブドウを組み合わせで、自らのカヴァにオリジナリティを産んでいます。
マカベオ
別名ビウラとも呼ばれる、スペインを代表する白ブドウの一つです。非発泡性のスティルワインでも、フレッシュで果実味に溢れる良質な白ワインを産み出しますが、カヴァにも欠かせない品種となっており「王道的カヴァの味わい」の素となります。フルーティーなだけでなく酸味も豊富なブドウで、カヴァの味わいに爽やかさをもたらします。
チャレッロ
古代ローマ人によってカタルーニャに伝播したとされるブドウ。溌剌とした酸味をカヴァに与える役割を担いますが、糖度が豊富なのもチャレッロで際立つ点です。これによってしっかりとしたコクとボディが備わるだけでなく、十分なアルコール度数を得る事ができるため、長期の熟成においても大きく貢献します。
パレリャーダ
古くからカタルーニャに根付いてきた土着品種で、コドルニウ家がカヴァを産み出す際に抜擢されたブドウ。豊かで優雅な香りを産み出すという点で、カヴァには欠かせない存在となっています。酸やボディもありますが、味わいの面ではあまり個性を主張せず、繊細さや柔らかさといった要素を演出するのに一役買っています。
その他にもカヴァのロゼではトレパットの他、ガルナッチャにモナストレルといった、スペインで定番の黒ブドウも認められています。ピノ・ノワールもロゼだけに使用されてきましたが、近年になって白のカヴァにも認められるようになりました。またシャルドネの使用も認められているので、銘柄はカヴァでもピノ・ノワールと合わせて、元祖シャンパーニュの再現をする事も可能なのです。
カヴァの歴史はいまから150年前に始まった!
カヴァが誕生したのは1872年。既に老舗の生産者として知られていた、コドルニウ家のホセ・ラベントスという人物が、フランスのシャンパーニュ地方で発泡ワインの生産技術を学び、自らのワイナリーに導入したのが始まりでした。彼はピノ・ノワールやシャルドネの代用として、地元カタルーニャのブドウを使い、上質なスパークリングワインを産み出す事に成功しました。その評判はあっという間に広まり、スペイン王室御用達になるまでの名声を獲得したのです。こうしてカヴァ発祥の地となったカタルーニャ州バルセロナ県のサン・サドゥルニ・デ・ノヤは、現在もカヴァ生産における中心地となっています。
その後、多くのボデガが醸造を始め、そして世界中で飲まれるようになりました。ちなみに「カヴァ」とはカタルーニャ語で「洞窟」という意味で、洞窟内で瓶内熟成をさせていたことから名づけられたと言われています。
驚くほどに安い!その理由とは?
手間もコストもかかる瓶内二次発酵方式にこだわって造られるカヴァ。でも、シャンパーニュのように5~6000円するものはあまりなく、1000円台もしくは1000円を切るものもたくさん販売されています。まさに圧倒的なリーズナブルさを強みとし、世界中あらゆるところで販売されています。日本でもスーパーはもちろん、コンビニでも見かけますね。
もちろん安価なカヴァは、シャンパーニュと比べてしまうと泡の質や上品さ、綿密さが劣るのは仕方ないこと。しかし特別な日に飲むのがカヴァではなく、いつもの食卓に、風呂上がりの1杯にもってこいな価格帯のカヴァは、その生産量と消費量で他の追随を許さないほど圧倒的な強さを見せていると言えるでしょう。
この安さにはいくつかの要因が絡んでます。例えば、生産地域ががちがちに固められているシャンパーニュとは違い、カヴァは前述の通り広域なD.O。それにより比較的安い土地代で広大な生産が可能になります。労働者の賃金の差も影響していると思われます。
また、シャンパーニュは15か月の熟成が必要なのに比べ、カヴァは最低9か月。ブドウも、高価なピノ・ノワールなどと比べ、マカベオなどの方が安く手に入りやすいと言うのも影響しているのではないでしょうか。
カヴァにもいろんなクラスがある!熟成表記を見逃すな!
スペインワインを飲んだことがある方なら、例えば「レゼルヴァ」や「グランレゼルヴァ」という表記を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
これはワインがどれだけ熟成を経てからリリースされているのかを明確にするための熟成規定で、カヴァにもこのような表記があるものがあります。因みに、通常カヴァと名乗る為には最低9か月の瓶貯蔵・熟成期間が必要となります。
レゼルヴァ
瓶詰から滓抜きまでの瓶貯蔵・熟成期間が15か月以上。
グラン・レゼルヴァ
瓶詰から滓抜きまでの瓶貯蔵・熟成期間が30か月以上。尚、瓶詰から出荷までボトル替えは禁止されています。
通常のカヴァより、レゼルバやグランレゼルヴァの方が美味しい!と感じるかどうかは人それぞれです。しかしながら、熟成のポテンシャルを見抜き、あえて現金化せずに手間と時間をかけて熟成させてから出荷する以上は、ワイナリーの自信と強い思いが詰まったカヴァであることは間違いないと思います。
カヴァと合わせるとヤバいほど美味しい!おすすめ料理とおすすめカヴァ〇〇選
さて、ここまでカヴァについてご説明してきましたが、ここからは筆者が今まで経験した中での絶妙マリアージュをご紹介!
ギョーザとカヴァ!これはビールより合うかも!?
ギョーザと言えばビール。そう決めつけてしまうのはもったいないです。爽快な味わいが特徴のカヴァは、ギョーザとの相性が抜群です!熱々のギョーザからあふれ出る肉汁、ちょっと醤油を垂らして口の中に放り込む。そしてキンキンに冷えたカヴァを飲んでみると、素晴らしいマリアージュが実現します。カヴァがギョーザの肉と野菜のうまみを引き立て、脂っこさをすっきりと流してくれるのでしつこくなく、暑い日に特におすすめしたいですね!
カヴァ ラ・パシオン ブリュット La Pasion Brut
全て自社畑のブドウを手摘み収穫して造る、まるでシャンパーニュのレコルタン・マニピュランみたいな造りが特徴のカヴァ。色調は青みがかった麦わら色。フレッシュで生き生きとした果実の香りが特徴的。グリーンアップル、洋ナシに加え、ドライナッツや焼きたてのパンのような香ばしい香りが感じられます。味わいは凝縮した果実味、酸の調和の取れた味わい。フレッシュな辛口のミディアムボディタイプです。
カヴァ ドミニオ・デ・レケナ ブリュット ナチュレ Dominio de Requena Brut Nature
1808年に設立された小さなボデガ(ワイナリー)で造られるこのカヴァは、生産量の少ないバレンシア産。有機栽培で育てられたぶどうを使い、若い醸造家が情熱を持って丁寧なワイン造りをしています。ほんのり麦わらがかった色合いで、レモンなど酸味のある果物の香りや、ミネラル、蜜、トースト、ハーブなどの香りも感じられるカヴァ。毎日飲みたくなるような味わいで、コストパフォーマンスに優れたカヴァです。
春巻きとカヴァ!いつもの食卓にもってこいのマリアージュ!
お惣菜の定番として人気の春巻き。豚肉やタケノコ、ピーマンの千切りに味を付けて皮で巻き、油でこんがりと揚げた家庭料理。私はちょっとだけお醤油をつけて食べるのですが、お肉と野菜のうまみがギュギュっと詰まった春巻きには、やっぱりカヴァです!個人的におススメしたいのが、ロゼ・カヴァ!ボリューム感のあるロゼの味わいと、ジューシーな春巻きは、ついつい食べ過ぎてしまう程、箸が止まらなくなります!
カヴァ ロジャーグラート ロゼ・ブリュット Roger Goulart Rose Brut
1860年より歴史ある生産者で、ワイン好きの中では元々存在が知られていたロジャーグラート。以前放送された某テレビ番組の中で、あの超高級シャンパーニュ ドンペリのロゼとをブラインドでテイスティングし、どちらがドンペリか当てようという企画で、5人中3人がドンペリと間違えたことで話題となったのがこのロゼ・カヴァです。フルーティなアロマにしっかりとした酒質、香りも華やかで非常に高いクオリティのロゼ・カヴァです。
カヴァ マルケス・デ・チベ ブリュット ロゼ Marques De Chive Rose
ガルナッチャ100%。バレンシアの街から約100km離れたホヤ・デ・カデナス農園のぶどうを用いています。この農園では、できるだけ有機栽培を行っています。完熟した赤果実の香り。しっかりした酸とボディーのあるロゼ・スパークリングです。
鶏の唐揚げとハイボール?いやいや、唐揚げとカヴァがこれからの新定番!
大人気の揚げ物、鶏のから揚げ。昨今の唐揚げブームで、町のいたるところで唐揚げ専門店を目にするようになりました。安くて旨い!ボリュームたっぷり!熱々の唐揚げに合わせたいのが、キンキンに冷やしたカヴァです。瓶内二次発酵で造るカヴァは、ほんのり発酵由来のこうばしさを感じます。それと唐揚げの香ばしさがベストマッチし、さらにフレッシュで爽快な味わいが、油っこさを流してくれるのが嬉しいところです!
カヴァ モンサラ ブリュット Cava Montsarra Brut
このモンサラ・ブリュットは、リーズナブルながらレゼルヴァクラスの長期熟成を経た本格的なスタイルを追求。瓶内二次発酵で造られ、最低でも1年半から2年間の熟成を経てリリースされます。パレリャダ特有の花のような香りが広がり、香りに引き込む力強さがあります。マカベオ由来のフルーティーな味わいと、爽やかさのバランスも絶妙で、辛口ながら上質で柔らかな口当たりときめ細かな泡立ちが特徴的な上質カヴァです。
カヴァ ヴィーニャ・アデライダ ブリュット・ナチュレ Vina Adelaida Brut Nature
スペイン三大生産者が造るカヴァ!外観は輝きのあるペールイエロー。きめ細やかな泡が立ち上ります。
青リンゴやオレンジなどの柑橘系のフレッシュな香りの中に、トーストのこうばしい香り。フレッシュ酸をしっかり感じると同時に、ほのかに果実の自然な甘みも感じるキレの良い生き生きとした印象のカヴァです。
冬の定番、鍋とカヴァ!これは色々試してみる価値あり!
寒くなってくるとついつい「今日は鍋にでもしようか~」ってなりますが、その時に是非一緒に買って欲しいのがカヴァです。鍋には寄せ鍋やみそ鍋、キムチ鍋など様々ありますが、特に醤油ベースの寄せ鍋と、キムチ鍋との相性は抜群!寄せ鍋の出汁とフレッシュなカヴァ、キムチ鍋のピリ辛には超辛口ブリュット・ナチューレなどが相性ピッタリです!
カヴァ ドミニオ・デ・タルシス ブリュット ナチュレ Dominio de Tharsys Brut Nature
ブリュット・ナチュレの表記通り、味わいは 非常にドライな超辛口タイプ。ブドウ由来の自然な甘さもほとんどありません。とっても爽快でクセがないため、合わせる料理も幅広い選択が可能。普段の食事中にビール代わりに飲んでもいいし、家庭料理ならたいていのものに合いますが、今回は是非キムチ鍋と合わせたいところ!
カヴァ ラ・パシオン ブリュット ナチューレ La Pasion Brut Nature
色調は青みがかった麦わら色。フレッシュで生き生きとした果実の香りが特徴的。グリーンアップル、レモンなどの柑橘系の香りに加え、焼きたてのパンのような香ばしい香りが感じられます。味わいは果実味を伴う爽やかな酸味とほのかな苦みが主体のエレガントなミディアムボディ。ブリュットよりワンランク辛口の、ブリュット・ナチューレです。
結びに
今回はかなりの「カヴァ推し」でお話させて頂きましたが、筆者もこのマリアージュを経験してから、改めてカヴァとはどんなスパークリングワインなのかを再発見することが出来ました。
ご紹介した料理も大それたものではなく、お惣菜の定番や鍋など、普段の食卓に出てくる料理ばかりです。普段は缶ビールをプシュッという方は、是非今日はカヴァを買ってみて下さい!スパークリング用のストッパーを使えば、開栓後2~3日は泡持ちするので、1日で1本も空けられないという方にもお勧めします!カヴァに合う自分なりの鉄板料理を見つけてみるのも楽しいですよ!