【勝沼】白百合醸造のオンラインツアーに参加してみた!

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世の中の情勢を受けて急速に拡大した感のあるWebセミナー

味気ないなんて言う方もいますが、メリットもたくさん。我々にとってはそう、離れた土地にいる現地の生産者の方々と直接話のできる機会が持てるんです!

今回は日本ワイン屈指の銘醸地、勝沼にある白百合醸造さんのオンラインツアーのレポートです!

白百合醸造とは

まずはオンラインセミナーの内容を理解するためにも、白百合醸造の紹介からしたいと思います。
1938年に勝沼の地に創業した白百合醸造は80年以上の歴史を持ちます。
ここでは抜粋した内容しかお伝えできないので、興味のある方は下のロゴをクリックして、ホームページを見てみてください!

想い

まずはワインの名前に入っている「ロリアン(L’ORIENT)」の由来について。
フランス語で「東洋」を意味し、ヨーロッパに劣らぬ高水準のワイン作りを目指し、名づけられました。

ワインは「ローカル」であること。これを大切に、原料のブドウ栽培からワイン作りまで行っています。日本屈指の銘醸地、勝沼の地に自社畑を持つ白百合醸造は、勝沼を世界へ羽ばたかせるために、一貫性のあるワインを作り続けています。

オンラインツアーを受けた後だと、よりこのメッセージが鮮明に心に残ります。甲州やマスカット・ベリーA以外にも欧州系品種を育てている点や、テイスティングにおいてスタンダード・キュヴェにも上級キュヴェにも共通点が見られる、という点で一貫性を感じました。

それと同時に、勝沼という土地に自信と誇りを持っているのだ、と感銘を受けました。

ブドウ畑

その想いをもとに世界に通ずるワインを作るためには、風土に合ったブドウを作ることが必要。と内田社長は語っています。もちろん勝沼という土地で、です。いくつかの欧州系品種を育てているのは、気候風土に合う品種を見極めるため、とのことです。

栽培においては、生食用ブドウに近い栽培(特に笠かけ)を行うそうです。ほかのワイナリーではここまではしないようで、ひとつひとつのブドウを大切にする、という姿勢が垣間見えます。自社畑は2ha所有していて、甲州市、山梨氏、笛吹市にいる75件の契約栽培農家でブドウづくりを行っています。

ワイナリー自らが栽培に取り組める自社畑においては、房を厳選し肩を落とす(実ができる前の房の数量調整)ことで、あえて小さな房づくりを行い、梅雨時には傘をかけ、茂りすぎた葉を落とし、苦手な湿気からブドウを守ることで、丁寧なブドウ栽培を心がけています。

ここでオンラインセミナーのメリットが生きてきます。もちろんこの季節なのでブドウの実はなっていませんが、ツアーはこの自社畑で始まりました。ちょうど剪定の時期で、棚仕立ての甲州のX字剪定を実践してもらいました。正直ワイナリーに行ってもあまり見れない作業だと思うので、貴重です。

ワイン作り

一般的なワインの作り方はここでは省きます。

その土地でよいぶどうが搾れるというのがワイン造りの第一条件、これに関しては今までの想いと、ブドウ畑の説明で分かっていただけたかと思います。

実はこの考え方のルーツは、内田社長がフランスのプロヴァンス地方への留学時代に学んだことが基になっています。ワインの本場フランスの人々は「その風土に合ったぶどうでつくるからこそ、おいしいワインができるのだ。ここのワインは最高だ」と口々に自慢しあっていたそうです。

内田社長は「勝沼に戻って以来、ひたすらこのことにチャレンジしている」と言っています。

個人の感想でいえば、フランスの中でもボルドーではなくブルゴーニュに近い考え方だと思います。つまり極めて農家的もしくは手工業的な。

「ブドウは農産物である」という知識として頭ではわかっていたとしても、商売でワインに接している、我々のような人間とはまた違ったものの見方で、改めてその考え方を口にされると、ある種新鮮です。

そしてまた違った立場である、買う側あるいは飲み手の方々は、この言葉に異なる印象を持つかもしれません。

オンラインツアー

ではここからはオンラインツアーの話をしていきたいと思います!始まりから甲州の棚仕立てのブドウ畑から始まり、テンションが上がりました!
終始、内田社長の穏やかな人柄と親しみやすい話し方で和やかーに進みました。

新しいワイナリーツアー

先ほども言った通り、甲州の棚仕立ての畑からオンラインツアーが始まりました。この時は抜けるような青空に恵まれ、現地にいたらより気分も上がった状態で、楽しくワイナリーツアーができていたことを思うと少し残念ですが、100km近く離れた場所で同じ時間を共有できることに、改めて驚きを禁じえませんでした。

まずは甲州のX字剪定の方法と実践。なかなか見ることのできない作業ですが、文字に起こすことは私には不可能でした。想像でお願いします。ちなみに甲州は棚仕立てですが、欧州系品種は垣根栽培です。樹勢が違うからですね。

そこから歩いてワイナリーに戻り(とっても近い)内田社長のセミナーが始まります。参加している方は、白百合醸造さんにゆかりのある、地元の酒販店さんやソムリエさん、山梨のホテルのサービスの方々もいらっしゃいました。

醸造家より

まずは勝沼という土地の説明から。古来からワイン(葡萄酒)を作っていたこの地域には、3000件ほどのワイナリーが軒を連ねていたこと。そして現在では山梨県全体で80件ほどしかないので、激減してしまったこと。

実は古いワイナリーであれば、親戚関係であることが多いそうです。有名なところだと勝沼醸造の血筋も、遠い親戚関係に当たるそうです。地元を離れることのできない、第一次産業だとよくあることみたいですね。

次にブドウの話。たびたび出てくる欧州系品種ですが、白百合醸造ではシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、珍しいことにシラーも作っています。
そしてこの欧州系品種、勝沼の土地だと病気になりやすいらしいのです。やはり気候の問題だ、と。ワインとしてのテロワール以前のそもそもの話だそうです。

そしてこれからのこと。もはや社会問題化している農家の後継者不足に関しては、やはり実感と危機感を持っているそうで、さまざまな取り組みをしているようです。
これは白百合醸造だけの話ではなく、勝沼のワイナリー全体で取り組みを始めています。ホームページにはクラウドファンディングの話も掲載されていますね。

収量の今後としては減少の予想をしていて、それ自体にはさほど問題を感じていないとのことですが、生産量を増やすという方向での成長ではなく、ブランド価値を上げていく方向にかじを取っているそうです。

最後に明るいニュースです。
内田社長の息子さんがブルゴーニュ・ボーヌの学校から帰国し、いろいろと取り組みを始めているようです!4代目の活躍に期待しましょう!

質疑応答

Q 2020年ヴィンテージの出来はどうですか?

A 7月に雨がずっと降り続いた影響で、ブドウが水っぽくなる懸念はあったが、反面8月は晴天が続き、持ち直しました。ただ収量に関しては雨の影響で選定を厳しく行ったため、多少減です。

Q 最近試していることはありますか?

A ブドウ栽培、ワイン作りは時代に流されていくものではないと考えています。例えば、今流行りのビオは日本の気候的に難しいものがあると思います。

Q ブドウの選別はどの段階で行っていますか?

A 何十年もやっているとやはりこの畑からはいいブドウが取れる、というのがわかるので、農家ごとに選別することが多いです。もちろんもっとあとの、ワインができたタイミングでテイスティングして、決めることもあります。どちらにしても期間は短いので、すぐに決めます。

テイスティング

今回のオンラインツアーでは試飲ボトルを事前に送っていただいて、参加者も試飲に参加しながら、作り手とお話しできました。
なかなか4本同時に試飲する機会もないので、とっても貴重な体験でした。
ボトル画像に販売ページへのリンクも付けていますので、気になった方は見てみてください。

甲州

ロリアン 勝沼甲州 白百合醸造

勝沼といえば甲州ですね。白百合醸造のフラッグシップがこの1本。

シュール・リー製法を採用し、柔らかい柑橘系の味わいとうまみの残る辛口に仕立て上げました。心地よい苦みが特徴的ですね。

内田社長曰く、シャブリをモチーフにしているとのこと。また重たさや濃厚さを甲州に求めるのは間違っている、と断言。私もそう思います。イメージは大和撫子のような感じだそうです。

甲州樽発酵 白百合醸造

小樽で発酵後、シュール・リーを施した甲州。生産量1000本ちょっとの希少品です。

ほのかに樽由来のバニラが香りますが、決して支配的ではなく柑橘系の香りも混じります。クリーミーなニュアンスもありつつ、甲州らしいいきいきとした酸味や苦味がバランスよく、余韻は樽のおかげで長くなっています。

正直、甲州に樽を使うとバニラ香やバターのような味わいが支配的になってしまうことが多いのですが、これはとてもバランスの取れた、厚みもある甲州です。

マスカット・ベリーA

ロリアン セラーマスター マスカット・ベリーA 白百合醸造

日本固有のマスカット・ベリーA。もちろん白百合醸造さんでも作っています。

こちらはスタンダード・キュヴェ。マスカット・ベリーAらしい甘やかで華やかな香りと柔らかな口当たり。タンニンはほぼ感じられませんが、スムースな1本。

抽出のポイントは2週間のかもし。この期間により色味と果実味を抽出します。下手なマスカット・ベリーAっぽい薄っぺらいこともなく、柔らかく和食とよく合いそうです。

マスカット・ベリーA 樽熟成 白百合醸造

マスカット・ベリーAをタンクで発酵後、オーク樽で熟成させた1本。こちらも生産量3000本に満たない希少品です。

樽由来のアーモンドの香りと、イチゴやフランボワーズなどの甘やかな香りが混じり、複雑味のある香り。程よい酸味と果実味、こちらはタンニンがアクセントになり、バランスが取れています。

個人的には今回のベストでした。まず香りが魅力的。味わいもとてもバランスがとれていて、飲み疲れしないワインでした。

最後に

白百合醸造さんのオンラインツアーのレポートいかがでしたでしょうか。

今回は業界関係者だけのセミナーだったので、直接映像をお見せすることはかないませんでしたが、雰囲気だけでも伝わればと思い、できるだけ白百合醸造さんからもらった現地の画像を使いながら、レポートさせていただきました。

このレポートを読んで、新しいワイナリーツアーの形、白百合醸造さん、ひいては勝沼のワインや日本ワインに興味を持っていただければ幸いです。

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