シャブリの味わいをもたらす「キンメリジャン土壌」とは?

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ブルゴーニュの辛口白ワインと言えば、多くの方がまず「シャブリ」を連想すると思います。

ブルゴーニュに限らず、世界中の辛口白ワインの中でも圧倒的な人気を誇っているのがこのシャブリです。

果実味のある爽やかなミネラル感と、キリッとしたシャープな酸が魅力のシャブリ。徐々に汗ばむような陽気になっていきますが、そんな時に冷蔵庫でしっかりと冷やしたシャブリを新鮮な魚介類に合わせて飲むのは最高の組み合わせのひとつです。

これからの時期、食卓に華を添えるお手伝いとして、手頃なシャブリを冷蔵庫に是非ご用意していただくことをお勧めしたいと思います。

シャブリがAOCブルゴーニュから外れる?!

今年の2月の上旬、そのシャブリについて「ブルゴーニュAOCの産地から除外する」という提案がINAO(国立原産地名称研究所)から出されたのでした。

ブルゴーニュの地理的な線引きを確定するのが狙いで、ヨンヌ県にあるシャブリの16コミューンの他、ディジョン周辺の6コミューン、コート・ドール県北端のシャティヨネ23コミューンなども含めて計64のコミューンで、ブルゴーニュAOCを造れないという提案を出したのです。

この提案に対しブルゴーニュの生産者が猛反発!INAOはパリ郊外モントルイユの本部でこの議題を討議する予定でしたが、農民や地元の議員らが本部前に集結し通りを占拠。プラカードを掲げて反対のデモを行った結果、INAOの会長がプランを撤回す意向を表明したことで騒ぎは収まりました。

そんな今話題のシャブリについて、今回はお話させていただきます。

キンメリジャンについて深く掘り下げる!

シャブリは、パリから約150kmの東南に位置し、ブルゴーニュの最北端のワイン生産地域です。パリとボーヌを直線で結ぶと、ちょうどその中間点にあたるのがシャブリ地区で、スラン川の流域の約20キロに及ぶ、小さな谷となだらかな丘陵にブドウ畑はあります。

栽培されるぶどう品種はシャルドネです。シャブリAOCを名乗るためにはシャルドネ種から造られる白ワインでなければなりません。

シャブリの大部分はキンメリジャン(Kimmeridgian)という石灰質の土壌から生まれます。

ではこの時代背景を簡単に説明します。

地質時代は古い時代から大きく分けて、古生代・中生代・新生代に分かれていますが(古生代以前には先カンブリア時代があります)、ワインに関係する土壌については中生代が大きく関わっています。

中生代は約2億5000万年前から約6500万年前までの期間で、古い順番から、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と移り変わりました。キンメリジャンの地層は巨大恐竜が全盛期だったジュラ紀に遡ります。

ジュラ紀はさらに、前期(リアス)、中期(ドッガー)、後期(マルム)と分けられ、さらにそれぞれは細分化されるのですが、後期(マルム)については、オクスフォーディアン、キンメリジャン、チトニアンと移り変わりました。

キンメリジャンは約1億5千万年前に遡るジュラ紀後期(マルム)の地層となります。(ちなみにロマネ・コンティなどコート・ドールの土壌はジュラ紀中期のドッガー時代によるものです。)

石灰岩地層の多くは有孔虫やウミユリ、サンゴなどの海洋生物の殻が堆積して出来たものです。シャブリのキンメリジャン土壌の場合、この石灰岩にエグゾジラ・ヴィルギュラ(Exogyra Virgula)と呼ばれる微小なカキ殻の化石を多く含んでいるのが特徴です。

この特殊な土壌とシャルドネ種の組み合わせにより、独特のミネラル風味を持った、キレのよい辛口ワインが出来上がります。シャブリがしばしば火打石の香りや風味があるといわれるのも、この土壌によるものです。

キンメリジャン土壌はシャブリ以外でもシャンパーニュの南部やロワール地方のサンセールにも見られます。

シャブリ地方では19世紀末までにおいて、4万ヘクタールものブドウ畑があったそうです。1938年に、「キンメリジャン土壌から生まれた白ワインのみをシャブリとする」とシャブリの原産地呼称が定められます。

19世紀のフィロキセラの災いと2つの世界大戦を経た後の1955年には、シャブリのぶどう畑はわずか550ヘクタールまで減少しました。

1970年代後半に、シャブリの原産地呼称の範囲が拡大されます。ポートランディアンの土壌までシャブリの名前が使えるようになったのです。ポートランディアンの呼び方は方言のようなもので、国際的にはジュラ紀最後の時代「チトニアン」にあたり、 キンメリジャン後にできた地層です。この拡大により、現在シャブリの生産地域は約5500ヘクタールまで広がりました。

シャブリの4つのアペラシオン

シャブリのアペラシオンは以下の4つに分けられます。

 ● シャブリ・グラン・クリュ

 ●シャブリ・プルミエ・クリュ

 ●シャブリ

 ●プティ・シャブリ

グラン・クリュはスラン川の右岸、通称グラン・クリュの丘と呼ばれる100ヘクタールの斜面に固まっています。

7つの特級畑があり、「ヴォーデジール」、「レ・プルーズ」、「レ・クロ」、「グルヌイユ」、「ブーグロ」、「ヴァルミュール」、「ブランショ」に分けられますが、特殊なタイプとして、ヴォーデジールとレ・プルーズにまたがる「ムートンヌ」とよばれる区画も特級と同格の扱いをされています。シャブリ・グラン・クリュの生産量はシャブリ全体の1%ほどしかありません。

<スラン川>

プルミエ・クリュは40のクリマとさらに細分化された79のリュー・ディが認定されています。全体の15%の生産量となります。

生産量の最も多いのがシャブリで、全体の生産量の66%をAOCシャブリ占めます。

プティ・シャブリは、そのほとんどがポートランディアンの土壌から造られます。 フルーティーで軽やかな、若くして楽しめるシャブリで、生産量は全体の18%ほどです。

スッキリタイプだけじゃない、樽熟シャブリ

ブルゴーニュのワインは、畑の格付け以上に生産者の力量でその味わいが変わってきます。

シャブリで最も偉大な生産者として挙げられるのが、「ドメーヌ・フランソワ・ラヴノー」と「ドメーヌ・ヴァンサン・ドーヴィサ」です。

どちらも樽を使う生産者の代表格で長熟なシャブリを生産しています。その人気の故に、価格は高騰、市場でも常に品薄なシャブリとなってしまいました。樽熟によるヴァニラ的な複雑さと豊満で丸みのあるワインが樽派の特徴です。

またステンレス派のシャブリはクリーンな果実味とシャブリ本来のミネラル感が特徴となりますので、シャブリ独特のテロワールがよく反映されます。

おすすめのシャブリはコレ!

シャブリ 2018 ドメーヌ・ウィリアム・フェーヴル 白

ウィリアム・フェーヴルは、日本で最も知られているシャブリ生産者かもしれません。シャブリのグラン・クリュの最大面積を所有する大ドメーヌでありながら、安定した品質を誇ります。

先日こちらのワインを試飲しましたが、きめ細やかなミネラルと酸が備わった上品で優美なシャブリでした。「フェーヴルは間違いない。」と再確認させられた一本です。

シャブリ グラン・クリュ レ・クロ 2009 ルイ・ラトゥール 白

こちらのワインは、シャブリ格付け最上位の「シャブリ グラン・クリュ」。

なおかつ造り手は、「コルトンの帝王」の名をほしいままにし、ブルゴーニュ屈指の生産者として、200年以上家族経営を続けているルイ・ラトゥールです。テロワールへのこだわりはもちろん、熟成に使う樽までも、自社の工場で作成している稀有な存在です。

しかも超希少なバックヴィンテージ2009年という最高の条件が揃ったワインです。

シャブリ 2017 アニェス・ディディエ・ドーヴィサ 白

お手頃価格で楽しめるシャブリとしておすすめなのが、こちらのワイン。

なんとヴァンサン・ドーヴィサとフランソワ・ラブノーの二大生産者の血を受け継ぐアニェス・ディディエ・ドーヴィサが造るシャブリなんです!

味わいはまさに「王道シャブリ」。柑橘系アロマと火打石を思わすミネラル香。シャープな酸とキンメリジャン土壌由来の豊かなミネラル感が全体をキリっと引き締めドライに仕上げています。シャブリのお手本のようなワインなので、シャブリの特徴がいまいち分からない、という方にはまずはじめに飲んで頂きたいシャブリです。

その他ドラジェ取り扱いシャブリ一覧はこちら>>

最後に・・・

とにもかくにも、日本人はシャブリが大好きな国民であることは間違いないようです。

2018年の統計では、シャブリの輸出数量が、金額、数量のどちらもイギリス、アメリカに続き世界第3位の輸出市場となりました。

そして日本で飲まれるブルゴーニュの白ワインの内、2本に1本はシャブリなのです。

 

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