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マディラン

Madiran


マディラン村はフランス南西部のピレネー・バスク地方に位置しています。フランスには原産地統制呼称(AOC)という農製品に与えられる認証があることで知られていますが、ワインもこのシステムによってその品質が管理されています。その中でもマディランAOCはフランスの中でも歴史が古いAOCで1948年にAOC認定を受けています。マディラン地域はピレネー山麓の恩恵を受け朝晩の寒暖のさがあり、また土壌は粘土質のためワイン用の葡萄栽培に適していると言われています。

マディランAOCの赤と白


マディラン地方の固有品種タナにカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランをブレンドして醸造されるのがマディランワインのスタイルです。タナ種の効果で非常に色が濃く、フルボディの赤ワインを楽しむことができます。

赤ワインはシャトー・モンテュスが圧倒的な存在感を発揮していますが、マディランの白ワインも忘れてはいけません。白ワインはパシュラン・デュ・ヴィクビルと言われ、グロ・マンサン、プティ・マンサンそしてクルビュが補助品種として用いられ醸造される。白ワインで特に有名なものはモワルーで上品な甘口ワインを楽しむことができます。オーク樽で熟成されるものは5年以上の熟成に耐えられるものもあります。

地場の葡萄品種タナとは


マディラン地方の固有品種であるタナ種は丈夫で収穫量も多いのが特徴です。タンニンが強いため他の葡萄品種とブレンドして使われることが多いです。タナ品種のワインはコクのあるガツンとくるワインが多いです。

タナ種を栽培するには朝晩の寒暖の差、水はけの良い粘土質の土壌、そして葡萄の収穫時期に雨が少なくないとならないという条件が必要になります。マディランはタナ種の栽培に適する条件が全て揃っています。現在はウルグアイにおいてもタナを利用した国を代表するワインが造られています。マディラン地方からの入植者がウルグアイにタナを持ち込んだそうです。ウルグアイのタナは本場マディランと比べると、やや軽い口当たりのワインに仕上がります。その後タナはウルグアイからアルゼンチンにもたらされ、さらにはオーストラリア、ブラジル、ペルー、ボリビアにも広まりました。現在ではイタリアやアメリカでもワイン用葡萄として栽培されております。

マディランワインとアラン・ブリュモン氏


アラン・ブリュモン氏はドメール・アラン・ブリュモンのオーナーで、マディラン地域の立役者と言われております。アラン・ブリュモン氏はマディランらしいワインを生産するために情熱を注ぎ、その功績が称えられフランスの最高勲章であるジオン・ド・ヌールを与えられています。

マディランワインが今のスタイルになる以前、マディランワインは当時流行していた隣接地域のボルドーワインを模倣するような造りとなり、その結果知名度の高いボルドーの陰に隠れずっと正当な評価を受けてきませんでした。アラン氏はボルドーに似たワインを造るのではなくマディランらしいワインを造りたいと考えました。そしてそれまではタナの持つタンニンの強さばかりが主張したワイルドな印象が強かったマディランワインが、アラン氏の努力によりタナの魅力を存分に引き出した、かつエレガントなワインが誕生することになりました。

シャトー・モンテュスのコダワリ


アラン・ブリュモン氏は父親から畑を継承した後、テロワールの研究を重ね優良なテロワールを持つ畑を少しずつ自身の管理下に置いていきました。そして父親から畑を継承した20年後には事実上、マディランAOCの優良なテロワールを持つ畑全てのオーナーとなっています。

そしてアラン氏の最高傑作がシャトー・モンテュスです。今ではワインショップで見ないことはないくらい知名度があがりそのコストパフォーマンスと品質の良さから多くのファンを魅了しています。エールフランス航空の機内で提供されるビジネスクラス用ワインとして抜擢されたこともあります。アラン氏は2001年にモンテュスにシャトーを造りました。彼が拘ったのが土着品種であるタナの魅力を最大限に発揮させるワインをつくること、そしてそのためには畑での葡萄の木の栽培密度を高め、収穫の際は葡萄を傷めないよう手摘みを徹底しています。

モンテュスのセパージュはタナ80%、そしてカベルネ・ソーヴィニヨン20%です。発酵は28度と少し高めで行われ、マセラシオンを3週間から2か月間とその時の状況により長めにすることでマディランワイン特有の力強い味わいが現れます。そこで出来たワインは、その60%がオークの新樽、そして40%が1年使用したオーク樽に入れられシェリー酒のオリと一緒に熟成されるのです。この過程がワインに複雑味を与えると言われています。