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シャトー・フェリエール

Chateau Ferriere

マルゴー村のメドック第3級格付けシャトー。メドック格付けシャトーの中で最も小さなシャトーで、隣接するシャトー・マルゴーと比べても10分の1以下の生産量です。その殆どがアメリカ向けに輸出されているため、日本では殆どお目にかかれない、幻の格付けシャトーとも言われています。

シャトー・フェリエールの歴史


シャトー・フェリエールは、メドックの格付け全シャトーの中で、最も畑面積が小さいシャトーです。その起源は18世紀、ガブリエル・フェリエールによって創設されたところまで遡ります。ガブリエルは、海運仲立人であり、狩り担当の王付き役人でした。

ブドウ畑は精力的に、彼の従兄弟でありボルドー市長であったジャンによって拡張されましたが、ガブリエルの死後、所有地は共同所有であったため、裁判所によって売り出されました。彼の妻マリーはそれを買い戻しました。彼女には3人の子供、ガブリエル、ミッシェル、ローザがいました。1855年の格付けで、メドック第3級格付けとなりました。

その後、1914年までフェリエール家が所有しますが、この間には特筆すべきことがない状態が長く続きます。その畑は、隣にはシャトー・マルゴーの畑があるという好立地にありながら、30年契約でシャトー・ラスコンプに貸し出されており、そのワインも月並みなものでしかありませんでした。

現在のオーナーであるヴィラール家が、シャトーを購入した1988年以降、少しずつ畑を買い戻し、1991年すべての契約を完了し終わりました。

ヴィラール家の娘、クレラ・ヴィラール女史は、ワインメーカーの家に生まれましたが、1992年彼女の両親が事故で亡くなった時、パリに住み、化学と物理の博士号を持ち、論文の準備をしているところでした。しかし彼女は自分自身の学業をあきらめ、家業を継ぐ決意をします。

彼女はたぐいまれな熱意と決意で、クリュ・ブルジョワの頂点を維持しているシャトー・シャス・スプリーンを仕切り、また同時に、ボルドー大学で著名な教授の下、ブドウ栽培とワイン学を学びましたが、彼女の一番の先生は、彼の祖父であるジャック・メルローでした。彼女と一族の果敢な改革によって、1992年以降、シャトー・フェリエールは、畑のポテンシャルに加えて、ワイン界の名門の人たちがワイン造りに関わることによって、劇的な復活を果たし、今や、最高水準のシャトーとなりました。

シャトー・フェリエールの特徴


シャトー・フェリエールの畑はたった8haで、メドック格付けシャトーの中では一番面積が小さいです。畑はマルゴー村の北の斜面にあり、あのシャトー・マルゴーの最高のカベルネ・ソーヴィニョンが収穫されている畑の隣にある好立地です。

その畑は、ジロンド川に運ばれた深い砂利質に石灰質が覆っている土壌でジロンド川沿いの特徴的なミクロクリマを作っています。メドックワインの主要品種であるカベルネ・ソーヴィニョンは水はけのよい砂利質土壌を好みますから、カベルネ・ソーヴィニョンにはベストな畑と言えるでしょう。

一方、メルローは、干ばつに弱く、粘土質の多い保湿性の土壌に植えますが、いずれにしても、良いワインは、一定の樹齢(最低でも15年以上)の深く根付いたブドウの樹から生まれます。畑には、カベルネ・ソーヴィニョンが約75%、メルローが約20%、プティ・ヴェルドが5%植えられています。そして、特筆すべき点は、除草剤が使われていないことです。丁寧に鋤入れされた畑を見れば、土が生きていることがわかります。

発酵とマセラシオンは温度管理されたステンレスタンクで行われます。新樽にて、ワインの味わいに丸みとコンプリシティをもたらすマロラクティック発酵で行います。オークの新樽にて16〜18か月熟成させ、清澄も行います。また、カベルネ・ソーヴィニョンの比率が高いことも特徴です。もちろん、ヴィンテージによって異なりますが、収穫後、5〜10年が飲みごろでしょう。

何しろ、最小の畑で作られるワインですから、年間の生産量は、4000ケースと希少です。もし、出会えれば、まさに僥倖と言えるでしょう。

シャトー・フェリエールの評価


現オーナーのクレラ・ヴィラール女史が、自らのワインを「ベルベットのクッションの上にのせられた小さな宝石」と評しましたが、まさに言い得て妙だと思います。小さな畑ゆえに、すべての過程に細心の注意を払い、ワインの細部の完成度にまで自らの職人技、美意識、良心を行きわたらせることができます。

シャトー・フェリエールのワインは、テロワールの持つポテンシャルと、それに関わる全ての人の思い、体温を感じさせる生命ある芸術作品だと言えます。シャトー・フェリエールのワインは、カベルネ・ソーヴィニョンやメルローをメインの品種として使った伝統的ボルドースタイルのワインで、リッチな果実味があり、フルボディのパワフルさを持ち、マルゴーそのものの美点を余すところなく体現していると言えるでしょう。

毎年生産される4,000ケースの内、90%がアメリカに輸出されています。のこりの4,800本のうち、ほんの一部のみが日本に入ってくるだけです。まさに「幻のワイン」なのです。そうなればなるだけ、飲みたくなるのが人の情の常です。このワインに出会う機会は、きわめて少ないです。これが飲める人は、最高に幸せと言えるでしょう。

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