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テヌータ・ディ・トリノーロ

Tenuta di Trinoro

直感の男が「無」から生み出したテヌータ・ディ・トリノーロ


「イタリアワイン界のカリスマ」という別称をもつのが、テヌータ・ディ・トリノーロを創業したアンドレア・フランケッティです。フランケッティの直感的で叙情的な資質は、そのまま彼が生産するワインに反映されている、と批評家たちは語ります。

イタリア人の父とアメリカ人の母との間に生まれたアンドレア・フランケッティは、アーティストたちが頻繁に出没するローマの喧噪の中で育ちました。18才でアフガニスタンに向かい、ニューヨークのイースト・ヴィレッジで1960年代を過ごしました。

その後、故郷のイタリアに戻りローマとマルケにレストランを開業、そこで得た知識を基にイタリアのワインをアメリカへ輸出する事業を開始しました。こうして、アンドレア・フランケッティの名は、少しずつ国際的に知られるようになりました。

90年代になり、アンドレア・フランケッティはブドウの栽培に乗り出します。彼が選んだ土地は、ラツィオ州とトスカーナ州の州境にある土地で、ブドウ栽培の伝統など皆無の場所でした。この無名の地にあった古い小さな要塞を修復し、ブドウ栽培の拠点としたのです。

フランケッティは、我流でブドウの植樹を始めますが納得できず、フランスのボルドーへしばし移住し、ボルドーの偉大なブドウ業者たちから技術と哲学を修得しました。

フランケッティが師事したマエストロは、醸造学の大家ピーター・シセック、シャトー・オーゾンヌの所有者アラン・ヴォーティ、シャトー・ヴァランドローのオーナーであるリュック・テュヌヴァンなど、そうそうたる人物ばかりです。

1991年にボルドーから運んだ木を接ぎ木し、数年の試行錯誤を繰り返し、1997年にはじめてテヌータ・ディ・トリノーロが世に出ます。このワインは、瞬く間に国際的な高評価を獲得しました。

2000年、アンドレア・フランケッティはシチリアを訪れます。そして、エトナ火山の斜面、標高1000メートルあたりに放置されたままのブドウ畑を発見しました。

フランケッティは、溶岩からなるテロワールの有用性を直感。これが、シチリアのワイナリー「パッソピシャーロ」の設立へとつながったのです。

アンドレア・フランケッティのこの瞬発力により、エトナ周辺のブドウ栽培・醸造業は活気を取り戻すことに成功しました。エトナのコントラーダのワインは、フランケッティによって蘇り、さらには国際的にも知られるコントラーダ・ワイン・フェスティバルの開催にまでつながったのです。

2012年、テヌータ・ディ・トリノーロは、サン・カシャーノ・デイ・バーニにピーノ・ネーロを栽培し始めました。翌年生まれたのが、「サンカバ」です。アンドレア・フランケッティの従兄弟カルロ・フランケッティが始めたこの事業は、2014年に「ヴィーニ・フランケッティ」という会社設立を成功させています。

さらに2015年、アンドレア・フランケッティはカベルネ・フランの栽培に新たに着手。3つのクリュで栽培されたブドウは100パーセントカベルネ・フランのワインに醸造され、2017年販売開始、大きな話題となりました。

アンドレア・フランケッティの哲学とは


フランケッティは、ワインの生産についてこう語っています。

私は、ワイン作りが好きだ。ワイン作りは、毎年変化に富んだ芸術作品を作り出すのに似ている。ブドウは、その成長の間に大地と気候の影響をもろに受ける。毎年目にする風景、季節の移り変わり、それがすべてブドウの実に凝縮している。

ワインは毎年変化する。そして、私のワイン醸造法も毎年少しずつ変化している。ワインを飲めば、造り手はおのずと知れる。ワインは、造り手を映す鏡なのだ。

最初は、ブドウの栽培が軌道に乗ることを考えそれに集中し、4、5年後に満足ゆくブドウが収穫できるようになるまでひたすら学ぶ。最も難しいのは収穫のタイミングだ。このタイミングを学ぶのには、経験が必要だ。収穫の日がたった一日ずれるだけで、ワインの味はまったく違うものになってしまう。

収穫のあとには、発酵をはじめとする何百の手順が待ちかまえている。あらゆる手順において、正しい決定が必要となる。それらの蓄積が、ワイン生産者のスタイルを確立していく。ワイン醸造は、20ヶ月間気が抜けない。始めたばかりのころ、私はどれだけパニックに陥ったことだろう。しかし、私はマエストロたちの才能と徳を信じた。彼らは、その知識を出し惜しみせずに、あらゆる緊急時に適確な解答を私に与えてくれた。

直感の人、アンドレア・フランケッティは文章もシンプルで洗練された才気の人であり、名のある一流の醸造家たちと胸襟を開いて語り合える人間的魅力の持ち主であることが、その哲学から伝わってきます。

テヌータ・ディ・トリノーロの主なワイン


テヌータ・ディ・トリノーロ

数あるフランケッティのワインの中でも、テヌータ・ディ・トリノーロはアンドレア・フランケッティのスタイルを最も顕著に表現していると言われています。

肥沃とはお世辞にもいえない石灰や粘土質の大地で何年も実験的試みを重ね、その成果を経て収穫したカベルネ・フラン(50%)、メルロー(33%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(13%)、プチ・ヴェルド(4%)のアンサンブル、それがテヌータ・ディ・トリノーロなのです。

テヌータ・ディ・トリノーロが最もフランケッティ的といわれるのは、すでに存在していた製造法を用いたのではなく、すべてがフランケッティの直感とインスピレーションが生みだした作品である点でしょうか。テヌータ・ディ・トリノーロは、ボルドーのブドウとトスカーナの土が生みだした滋味なのです。

年間生産量、7200本。静止したような深い赤色が美しいテヌータ・ディ・トリノーロは、肉料理全般、ジビエ、熟成チーズとおいしく召し上がれます。

レ・クーポレ

テヌータ・ディ・トリノーロの弟分といえるワイン、それが「レ・クーポレ」です。テヌータ・ディ・トリノーロと同様、カベルネ・フラン(66%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(7%)、メルロー(20%)、プチ・ヴェルド(7%)を原料にしていますが、樹齢が若いブドウを使用しているのが特徴です。1995年に販売が開始されたレ・クーポレも、スーパータスカンのワインの仲間入りを果たし、高評価を得ています。

明るいルビー色が特徴で、レッドフルーツに絡み合うスパイスの陰影が印象的です。タンニンは柔らかく、ドライでフルーティーな味わいを楽しむことができます。 鶏肉料理、キノコのリゾット、トマトソースがベースのパスタと一緒にどうぞ。