サン・テステフ Saint-estephe

オー・メドック内の格付けシャトーを擁する4つの村の中では一番北に位置するサン・テステフ。格付けシャトーの数は5つと、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーに比べて最も少ないからか、若干地味な印象もあるアペラシオンですが、名前を聞けば納得の、粒ぞろいのシャトーが建ち並びます。

名前の印象からは、どこか優美でしなやかなイメージもありますが、作られるワインは色が濃く、酸とタンニンが豊富な力強いタイプ。熟成してこそ真価を発揮する、厳格なタイプのボルドーワインの産地です。

サン・テステフの格付けシャトー

サン・テステフの南端で、ポイヤックのシャトー・ラフィット・ロートシルトの畑を見下ろせる高台にそびえ立つのは、第2級のシャトー・コス・デストゥルネル。第2級の中でも、時に第1級を脅かす存在である「スーパーセカンド」と呼ばれるシャトーの筆頭格です。コス・デストゥルネルのほど近くにある、第4級のシャトー・ラフォン・ロシェ、第5級のシャトー・コス・ラボリも、その格付に恥じないワインを造り続けています。

サン・テステフの中でも、最もジロンド川に近い東側に位置するのは、シャトー・モンローズ。コス・デストゥルネルの良きライバルとして、こちらも「スーパーセカンド」と呼ばれるシャトーの中の一つです。

また、ハートのラベルが有名な第3級格付けのシャトー・カロン・セギュール。ラフィットとラトゥールのオーナーであったセギュール侯の「我が心カロンにあり」という言葉と、心を意味するハートマークの逸話はあまりにも有名ですね。日本ではプレゼント用のワインとしても非常に人気が高いものの一つです。ここ最近、特に2000年以降は品質も更なる高みに達してきており、殆ど第2級レベルに達しています。

サン・テステフの土壌　砂利から粘土に

ジロンド川の上流から運ばれてくる砂利は、下流にかけて徐々に減少してきます。南部のポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーは殆どが砂利土壌なのに対し、このサン・テステフはメインは砂利土壌ながらも、北部に行くと粘土質が増えてくる、ちょうど境目のエリアになります。カベルネ・ソーヴィニヨン主体の左岸の中では、メルローの栽培比率も高いエリアでもあります。

粘土質が多いことで、砂利に比べて水捌けが悪いのですが、気温が高く、水不足になるような年には、反対にその保水性が功を奏し、ワインにいい影響を与えます。2003年や2010年のような暑い年は最も得意とするヴィンテージです。

粘土質混じりの土壌で作られたワインは、砂利質土壌よりも酸が強く、またどっしりとした重みのあるワインになります。華やかさ、しなやかさという点では劣りますが、長期の熟成にも耐えうる、色が濃くて肉太の赤ワインが多く見られます。

豊富なクリュ・ブルジョワ

格付けシャトー以外にも、粒ぞろいのシャトーが多いサン・テステフ。メドック格付けのすぐ下のランクと認識されている、メドックのクリュ・ブルジョワ（ブルジョワ級）シャトーも数多く存在します。

クリュ・ブルジョワの中でも、2003年に最上級となるクリュ・ブルジョワ・エクセプショネルに選ばれた9つのシャトーのうち、4つのシャトーがこのサン・テステフに存在しています。カロン・セギュールのすぐ南にある、シャトー・フェラン・セギュール。こちらもカロン・セギュールのすぐ西に位置する、シャトー・ド・ペズとシャトー・レ・ゾルム・ド・ペズ。コス・デストゥルネルとモンローズの間に位置するシャトー・オー・マルビュゼがそれにあたります。

また、アペラシオンはオー・メドックになりますが、サン・テステフのすぐ北にあるサンスーラン・ド・カドゥルヌという村には、非常に超熟な傑出したワインを産み出し、メドックの格付けが見直されれば、格付けは間違いないと言われている、シャトー・ソシアンド・マレがあります。

サン・テステフの主なシャトー

シャトー・コス・デストゥルネル（第2級）
シャトー・モンローズ（第2級）
シャトー・カロン・セギュール（第3級）
シャトー・ラフォン・ロシェ（第4級）
シャトー・コスラボリ（第5級）
シャトー・フェラン・セギュール
シャトー・ド・ペズ
シャトー・レ・ゾルム・ド・ペズ
シャトー・オー・マルビュゼ
シャトー・シサック