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シャトー・ボーセジュール・ベコ

Chateau Beau-Sejour Becot

眼下にブドウ畑がひろがるサンテミリオンの丘の上、ボルドーでも指折りの眺めのいい場所に、美しい白壁の醸造所、シャトー・ボーセジュール・べコはあります。サン・テミリオンの第1特別級Bに格付けされたこのシャトーの土地は、古くは古代ローマ人によってブドウ作りが行われていました。

シャトー・ボーセジュール・ベコの歴史


フランシスコ会修道院の所有となったあと、17世紀にゲール家がこの土地を譲り受け、その後婚姻によってカール家に引き継がれます。

1787年にボーセジュールと改名された土地は、1823年からピエール・ポラン・デュカルプの所有になり、1860年の後半に、のちのシャトー・ボーセジュール・べコとなる10ヘクタールと、シャトー・ボーセジュール(デュフォ―・ラガロース)となる4ヘクタールとに分けられ、前者は息子のレオポルドが、後者はデュフォ―氏と結婚した娘が相続しました。

1920年にはボーセジュールの名で、両方の畑からワインが生産されるようになっていましたが、1969年、ミシェル・ベコがこのシャトーを購入します。

フランス革命後からサンテミリオンに居を構えるようになったベコ家は、当時からサンテミリオンでブドウ栽培を行っていて、1929年にはシャトー・ラ・カルテを所有するようになっていましたが、この畑は約4.5haと小さく、ボーセジュールを購入することで畑の面積を約14haに広げました。

格下げ騒動とその後の再昇格


シャトーの畑をより拡大するため、1979年にミシェル・べコは4.5haのトワ・ムーランを買い取りましたが、この買取によって第1特別級Bのボーセジュールと、ランクの違うトワ・ムーランを同じ醸造所で醸造することが、サンテミリオンの分類規則に抵触するとして訴えられ、1985年に格付けを降格されてしまいます(ワインの品質の低下から格下げになった、との説もあります)。

状況を改善するため、長年の友人であるミシェル・ローランをコンサルタントとして招き、ブドウの収量を抑えるなど品質の向上につとめた結果、1996年に再びもとの格付けを取り戻すことができました。

1985年からミシェルの息子であるジェラールとドミニクに引き継がれていたシャトーですが、ジェラールは2014年1月に引退、ミシェル・ローランも2018年にコンサルタントから退きました。

現在はジェラールの娘ジュリエット・べコの夫であるジュリアン・バーテが、ドミニク、ドミニクの娘キャロラインと息子のピエールの協力のもと、シャトーの歴史を担っています。

2002年9月にはジュリエット・べコが別のワイナリーを始め、父・ジェラールの実直なワイン作りを踏襲しながらも、女性らしさが感じられる「シャトー・ジョアナン・べコ」をリリースしました。

樹齢の高いブドウを丁寧に栽培


シャトー・ボーセジュール・べコではカベルネフラン21%、カベルネ・ソーヴィニヨン6%、メルロー73%の割合でブドウが栽培されています。37年〜45年と比較的樹齢の高い樹が育てられ、いちばん古いメルローでは樹齢70年のものもあります。植栽密度はヘクタール当たり6200本、19haの畑から年間78600本を生産しています。

葉の除去や摘房、間引き、収穫などは手作業で、収穫後の丁寧な選果は除梗前と除梗後の合わせて3回行われます。4日間の低温マセレーションの後、アルコール発酵を行います。以前はコンクリートタンクを使用していましたが、現在では温度制御されたステンレススチールのタンクを使用し、醸造中はタンクそれぞれの朝晩の温度やその日の天候、作業内容などがボードに記され細かに管理されています。

1週間の発酵のあと2週間程度の果皮浸漬が行われ、その間は毎日試飲をして浸漬期間を決定します。その後オーク樽の中でマロラクティック発酵を行っていきます。

18〜20か月間の熟成期間中、3か月に一度澱引きが行われますがコラージュはせず、軽くろ過して瓶詰めとなります。

ワインの特徴と高まる評価


シャトーが建っている丘の周辺は石灰岩の台地で、かつて採石場だった場所のため地下トンネルも多く、ボーセジュール・べコにもその採石場跡を利用したカーブがあり、表面が石灰質で覆われた粘土質の土壌で育ったブドウからは、堅牢な中にも柔らかさが感じられるワインが生まれます。

コラージュをしないで瓶詰めしていることから、ブドウ本来の香りや風味がそのまま残り、凝縮感がありしっかりとした味わいに仕上がっています。

格下げ騒動はシャトーにとって苦い経験ではありましたが、この1985年を境にしてその後の品質は収穫年に関わらず安定し、評価も年々上がっていきました。

同じサンテミリオンのシャトー・カノン(オーナーは「シャネル」のヴェルテメール家)や、シャトー・シュヴァルブラン(ルイ・ヴィトングループが所有)のように、豊富な資金力を持つシャトーと違い、家族経営のボーセジュール・ベコでは、ここで得られる収益を投資しながら、品質向上の努力を続け格付けの維持に努めなければなりません。

それはなかなか困難なことではありますが、自ら畑に出て汗を流し、誠実に生産しているワインには「自分たちの魂が乗り移っていると思うのです」とジェラール・べコは発言しています。

その真摯な姿勢を反映するように、近年のパーカーポイントでは毎年90点以上と高い評価を受け、またル・クラスマンでは「出来上がった直後から強い樽香で人々を恍惚とさせ」「一般に評価されているレベルをはるかに超えており」とコメントされています。

セカンドはトゥルネル・ド・ボーセジュールで、ほとんどがフランス国内で消費され輸出量が少ないため日本では稀少とされています。

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