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ジャック・セロス

Jacques Selosse

シャンパーニュ界のカリスマ的存在、「アンセルム・セロス」が現当主の「ジャック・セロス」。自社畑での生産にこだわり、全て人の手で造られるシャンパーニュは、ブルゴーニュの高級白ワインのような個性的な味わいを創造し、そのワインは「スパークリング・コルトン・シャルルマーニュ」と言われるほど。シャンパーニュの中でも一際異彩を放っています。

フランスを代表するワインのバイヤーズ・ガイド誌「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス」では、RMとして最初に最高の三ツ星を獲得した生産者でもあります。

テロワールを重視したシャンパン造り


1949年に現当主であるアンセルム・セロスの父親ジャック・セロスが創業。

元々セロス家は、先祖代々シャンパーニュのコート・ド・ブラン地区にあるアヴィズ村で葡萄栽培を行っていましたが、本格的にシャンパーニュの生産を始めたのは、アンセルムの父親ジャックの世代になった1959年からでした。

1976年、ブルゴーニュ地方ボーヌの醸造学校で学んだアンセルムは、シャンパーニュ作りには「テロワール」が重要だと考え、葡萄の収穫量を抑えた有機栽培のシャンパーニュ造りに関心を持ち始めます。

1980年に父親のドメーヌを引き継ぐと、彼は今までのシャンパーニュの慣習とは全く異なるやり方でシャンパーニュの生産を始めました。

樽熟成やビオディナミの導入など、シャンパーニュの常識を変えてきたジャック・セロス


まず、葡萄の収穫を最適化する為に、平均樹齢38年の古い樹々を剪定していきました。畑の土壌には一切の化学薬品を使用せず、収穫は出来るだけ遅くさせて、手摘みで一つずつ収穫していきます。

そして、1986年頃からオーク樽で醸造を始め、1993年には全ての収穫した葡萄を228Lのオーク樽で醸造するようになりました。

これはブルゴーニュの醸造方法と同じように、一次発酵をオーク樽で行い、更にこれを6か月間樽熟成させていく醸造方法です。毎週、オーク樽の中の滓をバトナージュ(攪拌)することで、オーク樽の香りと酸化したようなニュアンスがワインに浸透していきます。

当時、ブルゴーニュのようなオーク樽での醸造方法は一般的ではなく、アンセルムの考え方や醸造方法は前衛的すぎるという声が上がり、周りの醸造家たちは理解に苦しみました。

しかし、出来上がったシャンパーニュは周りの声に反して素晴らしいものとなり、アンセルムは革新的な醸造家として高く評価されていきます。

さらに1996年からはシャンパーニュ地方では珍しい、ビオディナミ(有機自然農法)に着手し、余計な農薬や化学肥料を使わず、自然のままの土壌で畑の個性を活かした葡萄生産を行い、ビオディナミを世界的に広める先駆者となりました。

2002年には福岡正信が提唱した自然農法も取り入れるなど、畑に最も良い方法を常に考えて、現在も素晴らしいシャンパーニュ造りを行っています。

最高品質のグラン・クリュで造られるシャンパーニュ


ジャック・セロスは、レコルタン・マニュピュランと呼ばれる、葡萄栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでを全て自社で行う生産者です。

所有している畑は全てグラン・クリュで、シャンパーニュのコート・ド・ブラン地区アヴィズ村にあり、アヴィズ村以外の村にもいくつか自社畑を所有しています。

コート・デ・ブランの4地区アヴィズ、クラマン、オジェ、メニル・シュール・オジェでは、合計6.15haの畑を所有していて、生産しているのは全てシャルドネ種です。

ビオディナミ(自然有機農法)を取り入れた畑は、明るい黄緑色で、海のようなヨードの香りが漂い、フカフカした感触の土壌です。白亜質の石灰岩土壌が特徴で、シャルドネ種の栽培にピッタリな環境が整っています。

そしてアンボネイに0.35haの畑を持ち、グラン・クリュの高級ピノ・ノワール種を実験的に少量生産しています。

醸造家のこだわりから生まれた奥深い味わい


ジャック・セロスは一部のワインで、シェリー酒で使われていたソレラシステムを採用しています。

ソレラシステムとは、ピラミッド状に3段に積み上げられた樽の最上段からワインを継ぎ足していき、一番下の樽からワインを抽出していく製法で、これによりワインの生産年による味わいのムラを無くし、安定して高い品質のワインを造り出すことに成功しています。

また、通常シャンパーニュは、発酵が終わった後にリキュールや砂糖を混ぜるドザージュ(加糖)を行いますが、ジャック・セロスは一切行いません。よって余計な甘さのない辛口のシャンパーニュが生まれます。

デゴルジュマン(滓抜き)も手作業で、しかも瓶の口を凍らせない伝統的な手法を守っています。

このようにこだわりを持って丁寧に造られたジャック・セロスは、重厚で優雅な味わいのシャンパーニュとなり、他の造り手では決して味わえないシャンパーニュとなっていきます。

酸化と熟成のバランスが調和しているからこそ出せる、素晴らしく繊細な泡と熟成感のある香りが多くのファンを虜にしていて、スパークリング界のコルトン・シャルルマーニュと表現されています。軽いスッキリとしたシャンパーニュを想像して飲むと、味わいの複雑さに驚くことでしょう。

当主のアンセルスは、「良いシャンパーニュは良いワインからしか生まれない。また良いワインは土地と気候と優れた栽培家に恵まれた葡萄でしか造れない」と語り、レコルタン・マニュピュランで、全て人の手のみで少量生産を続けています。

年間の生産量は約58,000本と少なく品薄で、それに加えて人気がある為、入手困難のシャンパーニュです。