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シャトー・グラン・ピュイ・デュカス

Chateau Grand Puy Ducasse

ボルドー・ポイヤックにあるシャトー・グラン・ピュイ・デュカスは、メドック格付け5級のシャトーです。1970年以降に品質が劇的に向上したことから、近年評価が高まっています。

シャトー・グラン・ピュイ・デュカスの歴史


グランピュイとは昔から伝わる畑の名前で、デュカスは所有者の名前に由来します。15世紀頃にはギュイロー家が保有していました。17世紀になってアルノー・デュカス氏が4haを購入したことから、シャトーの歴史は本格的に始まります。以後2004年になるまで、長年に渡りシャトーはデュカス家がオーナーを務め続けました。

1750年にデュカス家のピエール・デュカス氏は、1797年に死去するまで土地の拡張を進めました。彼の息子が2/3の畑を相続し、デュカス・グラン・ピュイ・アティーグ・アルノーと呼ばれるようになりました。

1820年には、ジロンド川のほとりに醸造所であるシャトーが建てられ、ワイン生産が本格的に進められます。1855年に制定されたメドック格付けでは当初、デュカス・グラン・ピュイ・アティーグ・アルノーで登録されていました。

1932年には一族の争いを解決するための目的でグラン・ピュイ・デュカス社が創設されます。1970年以降に抜本的な改革を実施し、ワインの品質向上に成功しました。2004年に新たな所有者に渡ってからも、常にワインの改善・品質向上に努めています。

シャトー・グラン・ピュイ・デュカスのワイン造り


現在、シャトー・グラン・ピュイ・デュカスは3区画・56haの畑であり、北部はムートン・ロートシルト、ラフィット・ロートシルトに隣接しています。作付面積は、カベルネ・ソーヴィニョンが6割、メルローが4割となっており、アッサンブラージュもほぼこの割合で行われます。

シャトーと言えば畑の中にあることが多いですが、グラン・ピュイ・デュカスの現在のシャトーはポイヤックの町中にあります。市街地にあるシャトーというのはボルドーではかなり珍しい存在です。

ブドウは人の手で摘まれ・選果され、さらに除梗・破砕を経て、スチールタンクで発酵させます。3区画のブドウはそれぞれ個別に発酵作業が行われ、品質に関する厳しいチェックの上で、最高と認められるものが、グラン・ピュイ・デュカスのワインに使用されることになります。新樽比率30%〜40%のオーク樽で18〜24ヶ月熟成させて完成です。

シャトー・グラン・ピュイ・デュカスのワインの特徴


シャトー・グラン・ピュイ・デュカスの香り・味わいで印象的なのは、しなやかさ・柔らかさです。香りはベリー系の果実のフルーティーなアロマが印象的で、フレッシュさ・豊かさを感じられます。飲み心地も滑らかでタンニンが悪目立ちすることはありません。

全体としてバランスが良く、優しくエレガントなニュアンスです。若いうちはタンニンが硬い印象があるポイヤックの中で、グラン・ピュイ・デュカスは柔らかめであり、早熟なので若いヴィンテージでも十分に味わいを楽しめます。長期間寝かせるなら10年〜15年ほどが目安となります。

シャトー・グラン・ピュイ・デュカスの評価


シャトー・グラン・ピュイ・デュカスはメドック格付け5級でありながら、これまでそれほど大きな話題になることはないワインでした。目立った特徴がなく、格付けワインの中では凡庸なイメージがあったためです。

しかし1970年以降にシャトーは大改革を実施。ブドウの樹の植え替えに始まり、新樽比率の変更、セラーの大改修など、これまでとは抜本的に異なるシャトーへと生まれ変わりました。1980年代には、コンピューター制御機能ができるタンクを備えた新しい醸造所も誕生し、ワイン造りに対する科学的なアプローチも本格化します。1991年には、ブドウの収穫機を廃止し、手作業での収穫へ完全に移行しました。その結果、安定して高レベルのワインが生産されるようになり、近年ではワイン評論家の評価も向上しています。

もともと畑自体は恵まれていて、一部はムートン・ロートシルト、ラフィット・ロートシルトに隣接しています。ブドウ畑の場所としてポテンシャルがあったため、生産設備を一新したことで、評価が上がるのも当然と言えるかもしれません。また、長期熟成させずに早いうちから飲めることも、現在のワインのニーズに合っています。

ポイヤックに所属するメドック5級格付けワインは注目を浴びてこなかったため、価格が安めな銘柄が多いですが、グラン・ピュイ・デュカスもその例に漏れずお手頃な価格です。さらに、大改革によって品質が劇的に向上したことを踏まえれば、お値打ちのワインと言えます。コストパフォーマンスに優れ、ヴィンテージが若いうちから楽しめるため、ボルドーの格付けワインを手軽に楽しみたい時に向いているワインです。