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クエルチャベッラ

Querciabella

鉄鋼業界のミラノ人がキャンティに開業したワイナリー


ワイナリー「クエルチャベッラ」は、非常に特異な歴史を持っています。

鉄鋼業界で活躍していたミラノ出身のジュゼッペ・コッシア・カスティリオーニが、キャンティ地方の古いブドウ畑と家屋を購入したのは1972年のこと。

当時のブドウ畑は、わずか1ヘクタールしかありませんでした。美しいオークの木(イタリア語でクエルチャ)が、ブドウ畑の主のように泰然とそびえていたために命名されていたクリュ名が、のちにワイナリーの名にもなったのです。

ブドウ畑を購入して2年後、ジュゼッペ・コッシア・カスティリオーニは初めて収穫したブドウからワインを醸造しました。

当初は、家族と友人たちと楽しむだけの余暇として始まったワイン醸造でした。しかしその後、クエルチャベッラは、トスカーナでも抜きんでた質の高いワインを生産するワイナリーとして盛名を馳せるようになります。

現在のワイナリーの運営者はジュゼッペの息子のセバスティアーノです。ワイナリーは、キャンティ地方でも特に歴史のあるグレーヴェ地区ルーフォリの丘付近にあります。

父ジュゼッペからワイン製造への情熱を受け継いだセバスティアーノ・コッシア・カスティリオーニは、1988年からはブドウの有機栽培を開始、2000年からはバイオダイナミック農法を展開、環境への配慮も怠っていません。

妥協を許さない堅固な精神は、初代ジュゼッペの時代からワイナリーの核を成しており、今ではバイオダイナミックを実施するワイナリーの筆頭に「クエルチャベッラ」の名前が挙がるようになりました。

運営者セバスティアーノの右腕と左腕


クエルチャベッラを支える右腕と左腕と呼ばれているのが、イタリアで最も才能ある醸造専門家と呼ばれるグイド・デ・サンティと、スーパータスカンを語らせたら右に出るものがいないといわれるコンサルタント、ジャコモ・タキスでした。

「スーパータスカンの父」と呼ばれたジャコモ・タキスは、残念ながら2016年に亡くなりましたが、その薫陶を受けたワイナリーのスタッフによって、クエルチャベッラはより未来を見据えた企業として成長しています。

若いワイナリーだからできる時代を見据えたワイン醸造


クエルチャベッラが所有しているブドウ畑は、キャンティ地方に74ヘクタール、マレンマに32ヘクタール。

キャンティのブドウ畑は、非常に良質なブドウを産することで有名なグレーヴェ、パンツァーノ、ラッダ、ガイオーレに広がっています。栽培しているのは、サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、そしてシラーです。

クエルチャベッラは、イタリアで最大級の規模を誇るバイオダイナミック農法を実施しているワイナリーでもあります。化学物質、殺虫剤などを一切使用していないため、ワイナリー内は動物や昆虫たちの王国にもなっています。また、有機栽培を推進するために、硫黄などの使用も放棄、2010年にはついに植物だけをベースにした栽培と醸造を完成させました。

このプロジェクトにより、クエルチャベッラが生産するワインは「ヴィーガン」の人々にも楽しめる保証を獲得しました。まさに、時代に即し未来を見つめるワイナリーなのです。

世界中のワイン批評家から90点台を獲得するクエルチャベッラのワイン


現在、45カ国以上に輸出されているクエルチャベッラのワインは、若いワイナリーとしては異例なことに、あらゆる批評家から常に90点台を獲得しています。

まず、クエルチャベッラのワインとして名前が挙がるのが、ジャコモ・タキスが手をかけた「カマルティーナ」です。数あるスーパータスカンの中でも決定的な一点と呼ばれています。

また、セバスティアーノ・コッシア・カスティリオーネのブルゴーニュ白ワインへの愛から生まれたのが、「バタール」です。生産され始めた当初は、クリュの土壌を調査しピノ・ビアンコとピノ・グリージョが使用されていました。その後、試行錯誤を経て現在はピノ・グリージョとシャルドネが原料となっています。

バイオダイナミック農法を開始した年に生産が始まったのが、「パラフレーノ」です。まろやかさが特徴のメルローは、まさにキャンティ・クラッシコの代表。ブドウの収穫が条件を満たした年のみに生産されています。

さらに、1999年からはリゼルヴァの生産も開始。2010年には、新たにルーカ・クッラードをプロデューサーに迎え、グレーヴェ、ラッダ、ガイオーレのクリュから生産されるサンジョヴェーゼのみを使用したワインの生産、単独クリュのワインの醸造も始まっています。まさに、とどまるところを知らない怒濤の勢いで未来に進むワイナリー、それがクエルチャベッラなのです。

クアルチャベッラのワイン


カマルティーナ

ジェームス・サックリングから94点を獲得したトスカーナ・ロッソ「カマルティーナ」。スーパータスカンの父ジャコモ・タキスが手がけたワイナリーのシンボル的ワインです。

カベルネ・ソーヴィニヨン70%、サンジョヴェーゼ30%を使用し、それぞれを20日、12日間浸漬。1年間は別々に熟成し、その後に2つのブドウを混合しカマルティーナは完成します。キャンティの王と呼ばれるサンジョヴェーゼに、カベルネ・ソーヴィニヨンが力強い感性と洗練を与えて完成したワインは、比類なきスーパータスカンと言って間違いありません。

深く濃い赤色が特徴です。スパイス、プラム、スミノミザクラの芳香にタバコやバニラ、シナモンの香りが絡み合います。特別の機会に栓を抜きたいエレガンスと洗練を併せ持つワインです。

ローストや炭火焼きの肉、そして付け合わせにはポルチーニ茸でおいしく召し上がってみてください。

トスカーナ・メルロー・パラフレーノ

キャンティ地方でも最も良質なブドウを産するグレーヴェ。そのブドウを使用し2000年に生産が始まった「パラフレーノ」は、収穫したブドウが条件をクリアした年のみ生産されます。その名は、中世に貴顕たちが愛した馬の種にちなむのだとか。フランス製のバリックで18ヶ月熟成され、完成します。

熟成とともに深まる赤色が特徴。アロマ、フルーツ、スパイス、バルサミコが複雑に絡み合う香りを楽しめます。口に含めば、ビロードのような重厚感と豊かさが口腔内を満たします。熱いミネラルの味わいも男性的です。

パラフレーノは、どっしりとした肉料理とは相性が抜群です。また熟成チーズ、茸の料理、トスカーナの郷土料理である豆の煮込みなどとも是非どうぞ。