アンリ・ジロー

HENRI GIRAUD

｢アンリ・ジロー｣のシャンパーニュ造りの歴史は大変古く、17世紀初頭に遡ります。時はルイ13世が統治していた時代、1625年に創業者フランソワ・エマールが手に入れた畑がシャンパーニュ地方のアイ村にあり、そのアイ村はシャンパーニュ屈指の良質のブドウの産地でした。

石灰層の土地であるシャンパーニュ地方はピノ・ノワールやシャルドネなどブドウの良質な産地として10世紀以前より知られたいましたが、このアイ村はピノ・ノワールの評価が大変高く、シャンパーニュ造りの始まった17世紀には多くのメゾンがアイ村産のピノ・ノワールを欲しがったという逸話が残ったいます。それが現在の｢アンリ・ジロー｣の高い評価を裏付ける一因となっています。ちなみに｢アンリ・ジロー｣はアイ村に８haの自社畑を所有しており、それらすべてが｢グラン・クリュ｣に認定されています。

ヨーロッパ上流階級に愛飲されていた｢幻のシャンパーニュ｣

アイ村は16世紀初頭からワインの原産地呼称(AOC)として認定されており、シャンパーニュ地方の323のクリュのうち17のクリュが｢グラン・クリュ｣に認定されています。アイ村は全てのクリュが｢グラン・クリュ｣に認定されています。このアイ村で収穫されるブドウは高級シャンパーニュ造りに欠かせないものとなっているのです。

｢アンリ・ジロー｣の造り出す芳醇にしてエレガントな味わいのシャンパーニュは古くからヨーロッパ社交界の宴を華やかに彩ってきました。現在でも各国のセレブに大人気で(女性ファンが多い)ハイエンドの商品は入手自体が大変困難な状況です。

最先端技術で苦境からの脱出。平坦ではない道のり

そんな｢アンリ・ジロー｣も20世紀初めにはフィロセキラ(ブドウネアブラムシ)によりブドウ畑が壊滅的な状態になるという危機に瀕してしまいました。時の10代当主レオン・ジローは当時としては最先端の技術(アメリカ産の苗木を接ぎ木したとのこと)で乗り切り、その後も情熱と愛情で現在のような高い評価を得るまでに成長させました。現在の12代当主クロード・ジローも彼の精神を受け継ぎ｢アンリ・ジロー｣のシャンパーニュを更なる高みに導こうとしています。

伝統と革新。最高峰のシャンパーニュ造り

繊細で芳醇、奥深く複雑な香りと味わい。｢アンリ・ジロー｣のシャンパーニュは良質なブドウを最大限に引き出すことを最大のテーマにしています。

栽培されているブドウはピノ・ノワールが70％、シャルドネが30％。すべて手摘みで収穫し、酸化しないよう素早く醸造所に運ばれ、不純物を取り除き圧搾されます。

そしてここからが｢アンリ・ジロー｣が1990年に導入した革新のオリジナル｢低温浸透法｣。ゆっくりと温度を下げ、雑味成分とブドウ・ジュースを完全に分離させます。その後、グレープフルーツやココナッツ、バニラといった複雑なアロマを生み出す｢アルゴンヌの森産の樫樽で時間をかけて醗酵させるのです。

数多くのラインを持つ｢アンリ・ジロー｣ですが、その中でも哲学が最も反映されているのがフラッグシップ｢フェ・ド・シェーヌ｣。1年間の樫樽熟成、７〜8年の瓶内熟成を経て澱引きも丹念になされた、まさに至高のシャンパーニュと言える逸品に仕上がっています。

年間生産量は25万本。数字だけ見ると大きい数字に見えますが、｢テタンジェ｣は400万本、｢モエ・エ・シャンドン｣は2000万本生産していますので、大変小さなシャンパンハウス(家族と従業員合わせて10名程)です。それ故に細部にまでこだわるシャンパーニュ造りが可能なのでしょう。

ロバート・パーカー氏を唸らせる至高の逸品

｢このドメーヌは最高のシャンパン・ハウスである。このハウスのNV(ノンヴィンテージ)シャンパンはNVシャンパンの中でも最高峰の一つだろう。｣かの世界的ワイン評論家ロバート・パーカー氏が、フラッグシップの｢フェ・ド・シェーヌ｣に宛てた言葉です。このリッチで繊細さも併せ持つエレガントな味わいの極上のシャンパーニュは現在、入手すること自体が大変困難となっています。

価格的にもリーズナブルな｢エスプリ・ナチュール｣は、｢アンリ・ジロー｣の精神を十分に体現したお手頃価格で楽しめる1本です。透明感のある黄金色、フレッシュな香り、熟成香も十分です。意外と数多くのラインを持つドメーヌですが、いずれも世界屈指の良質なブドウの産地地元｢アイ村｣のテロワール(その土地でしか出せない個性)にこだわり、豊かな果実味を持ちながら繊細な酸味も併せ持っているのが特徴です。380年の長い歴史を持つ｢アンリ・ジロー｣。その長い歴史の中で今、最も円熟期を迎えたメゾンと言えるのかもしれません。