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マルセル・リショー

DOMAINE MARCEL RICHAUD


1974年に創業、南フランスのローヌ地方南部の最上の造り手の一人であり「自然派ワイン」の代表的存在でもある「マルセル・リショー」。当初から協同組合に参加せず独自のスタイルでワイン造りを続けていました。彼の畑はACコート・デュ・ローヌ、ヴィラージュの最上クリュとして知られるラストーに近いケランヌにあります。そして、彼のワインの特徴は「自然派」という言葉の通り「できる限り酸化防止剤(SO2)を使用しない」ことにつきます。グルナッシュ種を中心としたワインはコストパフォーマンスにも優れ、近年は畑のあるケランヌがクリュのアペンラシオンに認められるなど栽培される葡萄自体の評価も高くなっていることが分かります。

ラストー村の古老から学んだ醸造学


マルセル・リショーがワイン造りを始めたのは1974年。当初、お金がなく設備もそろわず苦労の連続だったようです。そんな中、彼のワイン造りの才能を見抜いたのがラストー村の古老モーリス。モーリスは自身が保有する醸造所をマルセル・リショーに使わせてくれたのでした。その後、農薬や化学肥料を一切使用しない有機栽培による葡萄造りと酸化防止剤(SO2)を極力排除したワイン造り(当然無濾過)がスタートし、ここから「マルセル・リショー」の伝説がスタートしたのです。

ローヌ地方らしい粘土質、急斜面の畑から生まれ落ちるテロワール


ローヌ地方南部の葡萄畑といえば地中海性の気候で山の上から吹く風が害虫などを寄せ付けにくい特性があります。ワインもブレンドが中心で北部ローヌと比べると親しみやすい価格で色や芳香が濃い健康的な赤ワインが多く造られています。「マルセル・リショー」の保有するケランヌの55haの畑は多くが標高の高い急斜面にあり、樹齢も非常に高いのが特徴です。そのため収穫量が低く、ヴィンテージにかかわらず優れたワインが生まれやすい傾向があります。

特に看板ワイン「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ キュヴェ・レブレスカード」を生み出すラストー村との境、北東部にある丘陵地帯の畑は素晴らしい品質の樹齢60年のグルナッシュ種と樹齢15年のムールヴェードル種を栽培しています。この畑は土壌も粘土質と石灰岩なのにも関わらず、小型のトラクターしか入れないため耕す自体大変な労力を必要としています。当然、収穫も手積みであり、その際の苦労も大変なものになります。しかし、この畑で採れるグルナッシュ種の潜在アルコール度数が17度に達することもあったほど高品質な糖度の高い葡萄を生み出します。そして、驚くことに2001年からは、この大変手間のかかる畑にもかかわらず除草剤を全く使用していません。

テロワールを活かす絶妙なブレンド


畑では畝ごとに小さな単位に分けて収穫し、醸造の際も畝単位に分けて醸造させます(基本はステンレスタンクとセメントタンク)。そして最終的にそれぞれの畝のテロワール(土地の特性)組み合わせ、最上の味になるようにブレンドして行きます。この気の遠くなるような作業が南ローヌのワインらしい芳醇な味わいにも関わらず軽やかでエレガントな味わいの「マルセル・リショー」のワインを生み出しています。

そして醸造過程において酸化防止剤を一切使用していません。また当然のことながらコラージュ(卵白による清澄)も濾過もしません。平均生産量は15万本と数が少なく大変希少なワインとなっています。

「自然派」というスタイルへ


そして、2003年からは醸造過程の「酸化防止剤非使用」だけでなく、瓶詰めの過程でも酸化防止剤を使用しないキュベを造りました。近年は醸造過程での酸化防止剤不使用は多く聞きますが、瓶詰め時の不使用はあまり耳にしません。事実、瓶詰め業者に断られ、自分たちで瓶詰めを行ったそうです。彼の造り上げる「自然派ワイン」は「自然派」にありがちな「BIO臭」が全くないのも特徴で、ローヌらしいスパイシーさがありながら上品な果実味が味わえ、ローヌ南部のワインとは思えないほどのエレガントさを楽しめるワインです。

パーカー氏が4つ星評価、子供達に伝えさらなる未来へ


ヴァド・フランスの特集で「過去10年の偉大な生産者20人の内の1人」の中の一人に選ばれ、あのロバート・パーカー氏も自著「ローヌワイン」の中で4つ星評価を与えるなど、その評価を不動のものとした「マルセル・リショー」。過小評価され続けてきた、畑のあるケランヌもクリュのアペンラシオンとして認定されるなど長年の功績が認められつつあります。

妻のマリーさんとともにワインを作り続けてきた彼ですが、現在、娘のクレールが中心になり醸造を行い、マルセルがフォローしているとのこと。彼の知識と経験を子供達に伝えているようです。