ガヴィ

Gavi

ピエモンテのワイン「ガヴィ」は、「コルテーゼ」と呼ばれるブドウの品種から生産される白ワインです。ピエモンテ州のワインといわれていますが、実際にはリグーリア州とロンバルディア州の一部も含んでいます。海岸線から、30キロから40キロ内陸部にある11の市町村で生産されるワインに、「ガヴィ」の名称が与えられます。

ガヴィのワイン生産地

現在、「ガヴィ」のワインを生産しているのは、ピエモンテ州のアレッサンドリア県周辺ボージオ、カプリアータ・ドルバ、カッロージオ、フランカヴィッラ・ビージオ、ノーヴィ・リーグレ、パローディ・リーグレ、パストゥラーナ、サン・クリストフォロ、セッラヴァッレ・スクリーヴィア、タッサローロの地域です。

国境を挟んださまざまな地方にまたがっているガヴィの生産は、そのためにさまざまな伝統や文化が融合したワインといえます。そして、それこそが赤ワインで有名なピエモンテにおいて、「ガヴィ」が白ワインの名産地となったゆえんなのです。

ガヴィの歴史

強大な海軍を誇ったジェノヴァ共和国は、長年に渡ってガヴィの地を支配下に置いてきました。ジェノヴァの有力な貴族、富裕な商人たちは、こぞってガヴィの地に別荘を建てたのです。ジェノヴァの高名な貴族ドーリア家の一人も、「別荘の敷地にコルテーゼを植えた」と記した手紙を残しています。ジェノヴァの人々にとくにガヴィのワインが愛されたのは、この白ワインがジェノヴァの郷土料理である魚介を使ったレシピやあっさりとした野菜や鶏肉の料理と非常に相性が良かったという理由にも依ります。

また、「ガヴィ」にはとてもロマンチックな伝説が伝わっています。6世紀のフランクの王クロドメールの娘ガヴィアは、父親に許されない恋をし、恋人と逃避行します。長い逃亡の末、恋人たちを受入れローマ法王に仲介の労を執った人々が住むんでいた地に、王女の名を取って「ガヴィ」と名づけられたというものです。

そしてブドウの品種名「コルテーゼ」とは、中世の宮廷精神を表現することばであることからも、この美しき王女と「ガヴィ」の関係は伝説以上のものであるかもしれません。

ガヴィのブドウ品種、コルテーゼ

1870年に、コルテーゼ種は初めて科学的な調査の対象になりました。そのときにも、「アレッサンドリア周辺でもっとも栽培されている品種」として紹介されました。当時から、コルテーゼ種の強靱さと豊穣さ、それと相反するような味わいの繊細さとエレガンスは有名であったようです。

1876年には、ジェノヴァの貴族カンビアーソ伯爵が、専門的な分野から本格的にコルテーゼ種の栽培に着手、「ガヴィ」の近代はこのときから始まったと言われています。 その後、ヨーロッパのブドウを破壊させたといわれる「ブドウネアブラムシ」の被害がガヴィにも及びます。しかし、その復興のために接ぎ木で命をつないだコルテーゼ種は、良い意味での刺激を得て味わいはさらに深くなりました。

現在も、醸造学専門の大学教授の指揮の下、コルテーゼ種の研究は続いています。

ガヴィの立地、土壌

ガヴィのワイン生産のためのブドウ畑の総面積は、1480ヘクタール、年間生産量は約1200万本です。そのうちの70％は、海外に輸出されていく世界でも人気のワインです。ガヴィを生産するワイナリーで仕事に従事している人は、およそ5000人。

「ガヴィ」は「D.O.O.G」と呼ばれる原産地呼称を名乗ることができ、原産地と品質を国から保証されています。種類は5タイプ、フェルモ（一般的なワイン）、フリッツァンテ、スプマンテ、リゼルヴァ、リゼルヴァ・スプマンテ・メートド・クラッシコ。

「ガヴィ」のワインの最大の特徴は、非常に限定されたその地理的条件にあります。つまり、アペニン山脈からの雪解け水と、リグーリアの海からの風が遭遇するという条件が作り出す風味なのです。ガヴィのワインは、実は糖度があまり高くありません。しかし、ほどよい酸性土が特徴であり、この微妙なバランスは限られた土地でしか作り出せないといわれているのです。

土壌は、石灰質の白い土と粘土質の赤い土の2種が存在しています。いずれも、非常に力強さを感じる土壌です。

こうしたすべての条件と、ブドウ栽培とワイン醸造に従事する人々の不断の努力、営々と築いてきた伝統によって生まれるのが、エレガントで熟成にも絶えうる「ガヴィ」なのです。「熟成」は、ガヴィのワインを語る上では重要な要素です。ここ数年、ガヴィのワインの熟成についてワイナリー間で研究が進みました。ブドウ畑と醸造所での作業が適切であれば、白ワインのガヴィも熟成が可能であることが証明されたのです。

ガヴィの味わい、料理とのマリアージュ

現在、ガヴィのワインはイタリア国内にとどまらず、世界中のレストランで味わうことができます。市場においては、もっと購買力がある中堅層に根強い人気があることでも知られています。

ガヴィのワインは、アペルティフとしてであれば6度から8度でおいしく召し上がれます。食中のワインとしては、12度が適温です。

すこし値の張る魚介類の料理とは非常に相性が良く、パスタや魚のグリルをレストランで注文するとガヴィを薦められることが多いでしょう。また、最近では世界中でブームとなっている寿司ともおいしくいただけます。

ガヴィの生産地で有名なマリアージュは、郷土料理「タリィアリン・アル・タルトゥーフォ」。フレッシュ・パスタとバター、トリュフをからめた北イタリアらしいこの料理は、ガヴィとの最高のマリアージュとしてよく知られているのです。