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シャトーヌフ・デュ・パプ Chateauneuf-du-Pape



ローヌ地方南部には多くのアペラシオンがありますが、その多くがリーズナブルに入手できる銘柄。コート・デュ・ローヌを筆頭として、飲み応えがありつつも低価格なワインが消費者に好評を得て、日本でも多くの銘柄が流通しています。

周囲がそのような中で、ひときわ異彩を放っているのがAOCシャトーヌフ・デュ・パプ。安くても数千円、場合によっては数万円もの価格をつける高級ワインで、数々の専門誌に絶賛され、高名なワイン評論家を唸らせてきた存在感は、まさに南ローヌの王者に相応しい貫禄。アルコール度数が全般的に高めなのも特徴で長期熟成させる事もできますが、多くの銘柄では若いうちに飲んでも、その凝縮した果実味と濃厚さで存分に楽しむ事ができる銘柄です。

シャトーヌフ・デュ・パプの環境とブドウ品種





北部と全く異なり、ローヌ南部は地中海の影響を強く受ける地域。温暖で乾燥している上に、ミストラルという季節風が強く吹きつける事で、病害を予防しブドウが健全に育つ事のできる気候に恵まています。

シャトーヌフ・デュ・パプを象徴するのが、ガレと呼ばれる小石がごろごろ転がった畑。景観の面だけでなく、ブドウの栽培にも重要な役割を果たしており、この石が昼間に太陽の熱を集めて保温効果を高める事で、ブドウが完熟するのを促進する作用があります。シャトーヌフ・デュ・パプと言えばこういった畑を連想しますが、実はこのアペラシオンの地質は多種多様に入り乱れており、ガレがほとんど無いところもあって、区画による土壌の個性が豊かな地域でもあります。

赤ワインではグルナッシュが主体となる事が多いですが、認められている使用品種の種類がかなり多いのもこのアペラシオンの面白いところ。全てをブレンドする必要はありませんが、合計13種類にも及ぶ以下のような品種が用いられています。

黒ブドウ:ムールヴェードル、テレ・ノワール、ヴァカレーズ、サンソー、ミュスカルダン、クノワーズ、シラー

白ブドウ:ピカルダン、クレレット、ルーサンヌ、ブールブーラン

複数の色を持つブドウ:グルナッシュ(グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ)、ピクプール(ピクプール・ノワール、ピクプール・ブラン、ピクプール・グリ)

シャトーヌフ・デュ・パプの歴史




紀元前からワイン生産の歴史があるローヌ地方ですが、現在まで続くシャトーヌフ・デュ・パプが誕生したのは14世紀の事でした。当時ローマの法王庁が、アヴィニョンに移転されるという歴史的な事件が発生、それまで片田舎に過ぎなかったシャトーヌフ・デュ・パプ周辺は、ワイン産地として大いに賑わいを見せ始めたのです。そもそもシャトーヌフ・デュ・パプは「法王の新城」という意味であり、アヴィニヨンのすぐ北にあるこの地に、法王の別荘が建てられたのが名前の由来でした。現在もシャトーヌフ・デュ・パプのワインボトルには伝統として、法王の紋章が浮き彫りで刻印されているのを多く見つける事ができます。

その後時代が下ると、他の産地と同様にフィロキセラがやってきて大きな被害をもたらし、シャトーヌフ・デュ・パプもまた品質の低下を免れない状況に立たされます。当時は原料の不足から、レーズンや圧搾後のブドウに砂糖や水を加えただけ、といったようなひどい偽造ワインも流通量を増しており、業界で深刻な問題となっていました。この惨状を改善すべく立ち上がったのが、シャトー・フォルティアのオーナーであったピエール・ル・ロワという人物。彼はシャトーヌフ・デュ・パプで組合を結成すると、産地や醸造などについて定めたルールを立案、やがてフランス全土でも広く受け入れられるようになる画期的な制度を生み出しました。これは現在の原産地呼称制度の基礎ともなっており、シャトーヌフ・デュ・パプはそのきっかけとなった歴史的な産地でもあったのです。

多彩なワインを産み出すシャトーヌフ・デュ・パプ





土壌とブドウのバラエティ豊かなシャトーヌフ・デュ・パプでは、生産者によってそのスタイルが多様に変化します。多くの赤ワインは力強く濃厚なスタイルで、その味わいには南仏らしい暖かみが感じられるワインとなる一方、驚くほどエレガントに造られたものもあり面白いところです。少量ながら生産されている白ワインの品質も高く、芳醇なアロマと飲み応えがあり、ある程度の熟成にも耐える力強さを備えたワインとなります。

この地を代表する生産者として、近年で最も注目を集めたのはドメーヌ・ペゴーでしょう。そのトップキュヴェにして、良年のみしか生産されない「キュヴェ・ダ・カーポ」は、ヴィンテージによっては10万円以上の値をつけるという、シャトーヌフ・デュ・パプの中でも異質な超高級銘柄。その評価も凄まじいもので、シャトーヌフ・デュ・パプにおける偉大な傑作として愛好家垂涎の的となりました。ちなみにこのワインは、人気ワイン漫画「神の雫」においても「第三の使徒」として登場し、遠き日の記憶にある家族との団欒を思い起こさせる、暖かな優しさに満ち溢れているワインとして描かれています。

また伝説的な造り手として知られる、ジャック・レイノーによって運営されていたシャトー・ラヤスも、シャトーヌフ・デュ・パプにおける偉大なワイナリーの一つ。1997年に亡くなってしまったジャック・レイノーですが、その跡は甥のエマニュエル・レイノーによって受け継がれ、今もこのアペラシオンでトップクラスのワインを生産しています。シャトー・ラヤスで特徴的なのが、これだけブドウな品種が使える中で、グルナッシュ100%の単一品種で造るという事に徹底してこだわっている点。またその畑は珍しく北向きで、シャトーヌフ・デュ・パプを象徴するガレが取り除かれており、ほとんど見られない事でも知られています。

同じくアンリ・ボノーも、また伝説的な造り手の一人。元々老舗のワイナリーですが、所有面積はわずか5haのみで、そのうえ徹底的な収量制限を行っている事から、生産量は非常に少なく入手困難。日本ではほとんどお目にかかる事ができず、シャトーヌフ・デュ・パプの中でもとりわけ貴重なワインという事でも知られています。さらにアンリ・ボノーが所有する「ル・クロー」は、シャトーヌフ・デュ・パプで最高の区画と言われるほどの優良畑。そんなアンリ・ボノーも、2016年に惜しまれつつこの世を去ってしまいました。ただでさえ幻のワインだったアンリ・ボノー、今後はより一層希少性の高まる事も予想されます。

ポール・アヴリルの運営する、クロ・デ・パプも優れた品質で知られているワイナリー。クロ・デ・パプは「法王の畑」を意味しており、シャトーヌフ・デュ・パプの黎明期から、法王が所有していたという由緒ある区画でしたが、17世紀には既にアヴリル家の先祖が所有していました。あえて力強くなりすぎないように意識して造られている事もあり、濃厚でありながらエレガントなバランス感の秀逸な造りが評判で、熟成させても美しい表情を見せてくれます。ワインスペクテーター誌の主催する、「年間TOP100ランキング」という名物企画では、世界中のワインの中から堂々の1位を獲得しており、その実力は疑いようのないものです。

その他シャトー・ド・ボーカステルも由緒あるワイナリーで、ペラン・ファミリーによりこの地でいち早く有機栽培を取り入れました。一方で老舗のサボン・ファミリーによって設立されたドメーヌ・ド・ラ・ジャナスは、テロワールがよく表現された完成度の高いワインが評判となり、各メディアで絶賛されている注目の生産者です。ブルゴーニュで有名なネゴシアンのオーナーが設立したロテム&ムニール・サウマや、驚くほどリーズナブルな価格ながら高い品質を誇るドメーヌ・ド・フェランなども、シャトーヌフ・デュ・パプを選ぶ上で候補に入れておきたい造り手の一人です。

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