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バローネ・リカーゾリ
Biondi Santi
世界で4番目に長く続くファミリー・ビジネス企業
家族経営企業に関するアメリカの専門誌「ファミリー・ビジネス」によれば、「バローネ・リカーゾリ」は世界で4番目に長く続くファミリー・ビジネス企業であり、ワイン醸造業部門では第2位となっています。イタリアのワイナリーとしては、最も古いものの一つであることはいうまでもありません。
「伝統」「歴史「威信」。この三つの言葉が、「バローネ・リカーゾリ」の長い歴史を語る上でのキーワードです。
リカーゾリ家がワイン醸造業と関連を持ち始めたのは、なんと1141年。リカーゾリ家が、キャンティのガイオーレにあるブローリオ城の城主となった年からです。綿々と伝えられてきたそのワインは、1600年代後半にはオランダやイギリスへの輸出が古文書で認められる他、1900年代初頭には中国、サウジアラビア、南アフリカ、グアテマラ、コスタリカなどに輸出されるようになり、文字通り世界中で愛飲されるワインとなっていったのです。
世界で最も名前が知られたイタリアワイン「キャンティ」生みの親
その長い一族の歴史の中で、突出した知名度を誇る人物が19世紀初頭に登場します。ベッティーノ・リカーゾリ男爵は、世界に冠たる「キャンティ・ワイン」の生みの親となりました。
1830年頃、男爵は当時のフランスのワインに拮抗できるイタリアのワインの実験を始めました。「鉄の侯爵」という別称を持つベッティーノは、不屈の意志を持って国際競争力を持つ自国のワインを生み出す研究を重ねます。
そして約30年後、サンジョヴェーゼ種の特徴を引き出すために黒ブドウのカナイオーロや、白ブドウのマルヴァジアを配合した「キャンティ」が誕生したのでした。男爵はその比率を、サンジョベーゼ70%、カナイオーロ20%、マルヴァジア10%とする事を提唱。このブレンド比率は「リカーゾリ男爵の公式」とも言われています。
男爵はまた、イタリアの首相を務めたほどの有能な政治家であり、当時ヨーロッパに普及し始めた鉄道や道路網を駆使して新たに誕生した「キャンティ」の輸出にも熱心でした。男爵が完成させた「キャンティ」は、1867年に行われたパリ万博で金賞を受賞しています。
リカーゾリ家の現当主はベッティーノ男爵のひ孫にあたるフランチェスコ・リカーゾリです。彼は、1200ヘクタールに及ぶキャンティ・ワインのワイナリーの中でも最大規模のブドウ園を有し、毎年200万本のワインを生産するワイナリーを管轄しています。
ブドウ園の主役はもちろんサンジョヴェーゼですが、カベルネ・ソーヴィニヨン、プチ・ヴェルド、カベルネ・フラン、メルローなども栽培されています。イタリアワインの品質と伝統をさらに向上させるべく、リカーゾリ家の挑戦はこれからも続きます。
1000年近い歴史に裏付けられた未来へ向けてのプロジェクト
現当主フランチェスコ・リカーゾリは、フィレンツェ大学とアレッツォ醸造研究所と協力し、1995年から古いサンジョヴェーゼの木をタイプ別に分け、未来に最良種を残すプロジェクトを発進させました。2005年、リカーゾリ家が所有するブドウ園のサンジョヴェーゼは12種に選別され、遺伝学的にも品質的にもとくに優れたサンジョヴェーゼを未来に残すべく一部はブドウ園に新たに植樹され、一部は研究室で研究が続けられています。
また、土壌についてもイタリアで権威のある地質学研究所と協力し、それぞれのブドウ園の高度、気候、温度など詳細なデータを収集しました。そのブドウ園の土壌と条件に最も見合う種を選び、最も適した農業的措置を行えるよう、科学的分野からの研究も未来に向けて滞りなく継続しているのです。
こうした努力は、「バローネ・リカーゾリ」特有の価値あるワインを生み出す要因となっています。
バローネ・リカーゾリの主なワイン
キャンティ・クラッシコ・ブローリオ
サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー種は12~16日浸軟、ステンレス製の樽で24度から27度で発酵するプロセスを経て、木製の樽で9ヶ月寝かされます。
「ブローリオ」は、バローネ・リカーゾリで生産されるワインの中でも、その長い歴史を象徴する味を継承していると言われています。濃厚なルビー色が特徴で、さまざまな花の香りのあとにバルサミコといくつかのスパイスの芳香が漂います。口当たりは柔らかく繊細ながら、強さも充分に感じられるバランス感が魅力です。
トマトソースをベースとしたパスタ、肉類とはとくに相性が良く、ワイン通のあいだでは肉とポルチーニ茸の料理とは思わずため息が出るおいしさとのこと。
ボルゲリ・ロッソ・スーペリオーレ・アストゥート
フランス製のオーク樽で18ヶ月熟成したあと瓶詰めされ、さらに寝かされること10ヶ月。万人受けする味は、友人知人が集まる夕食の機会に持ってこいと言われています。
濃いルビー色が特徴。鼻腔に飛び込んでくるのは、まずクロスグリやクロイチゴといった森のベリー類の香りです。スパイスの香りに続き、ヴァニラの芳香が漂います。口当たりは暖かく、それでいて風格を感じさせる強さもあります。肉料理全般と相性がよく、とくにジビエの鶏料理との相性は定評があります。